In memoria aeterna erit iustus: ab auditione mala non timebit.

「云い伝え...?」
そうなの、とリナリーは云った。黒の教団に伝わる伝説の話。

ラビから黒の教団へ入団しないかと誘われた後、リナリーがエクソシストについて、教団の歴史も交えて丁寧に説明してくれていた時に出た話題だった。
「本部に、ヘブラスカっていうエクソシストが居るんだけどね、」 その人から聞いた話なんだけど、と彼女は前置きした。

およそ100年前に、ヴァチカンの教皇様の処に、ひとりの御遣いが現れたんだって。彼は新月の夜に教皇様の寝所に降り立って、こう預言したらしいの。

後生いの者達へ___禍が迫っている。先人たちが遺した聖遺物をもって、これを避けよ___って。

教皇様は質問したの、禍とは? 聖遺物とは? って。
そうしたらその方は、禍とは___時を冠する者。其は既に来たれり。下々に広く耳を傾け目を開け。無知なるは其れゆえに大罪である。遺物は相応しい者を選び、その手中に落つるだろう。それすなわち神の慈悲なり。神の祝福なり。幸いなるかな、真実が解かれた時、汝らは神を拾い給う。


そう云って闇霧と共に去って行ったんだって...

黒の教団はそうしてできたの。お告げどおりに...ヘブラスカが聖遺物キューブを持って現れたから。伯爵とアクマの存在も確認されて。石箱キューブの預言どおりにわたしたちはイノセンス―――神様を拾ったの。

それでね、その御遣いは...髪の色も目の色も月を溶かしたような銀灰色で、漆黒の衣装に身を包んでいたんだって。


だからエクソシストの団服は黒なの。
 その御遣いの加護と恩恵イノセンスがわたしたちに勝利をもたらしてくれますように って。

 

 

 

 

(正しき人は永久に記憶され、その人は悪評に恐れることはない。)