Kyrie,
eleison.
Kyrie,
eleison.

街は騒然としていた。
そりゃそうだ。大通りでいきなりドンパチ始まれば、一体何事かと思う方が当然だ。それには依存ない。

レベル1,2のアクマが数体、街の食堂にいたエクソシストを襲ったらしい。下級のアクマはあまり賢い闘い方をしない。
(まあエクソシストを見かけたらとりあえず突っかかって行けって教育してるのは僕だけれども、)

どうやら相手は3人組の男女だったらしく、そこそこの経験をもつエクソシストなのか、それほど時間もかけずに戦闘は終わった。
ウォン・バイ・エクソシスト!
根性のないアクマが一体、戦場から逃げ出したのを僕は見ていた。逃走したアクマは傷が癒えたらあの3人を再び襲うだろう。
そうなる前に僕が処分しに向かうけれど。

食堂の壁の一角が吹き飛ばされて、無残な姿と化している。石畳の通りも所々破壊され、ひび割れて均した地面が顔を覗かせていた。人々は黒の団服に身を包んだ彼らを遠巻きに、好き勝手なことを口にする。
誰かが警察を呼ぶ。誰かが人が殺されたという。誰かが犯人はあいつらだと云う。
人々が口々に エクソシスト を非難する。


まるで見世物小屋の動物だ、と思いながら、僕は騒がしい通りを眼下に、事の行く末を見守っていた。
戦闘に巻き込まれたらしい子どもが、ぐったりとしたその身体を母親に抱かれていた。母親は泣き叫んでいる。ほどなく子どもは死ぬだろう。
アクマの血のウィルスにやられた方が苦しまずに死ねただろうに。母親の慟哭は、伯爵を呼び寄せるまでもなく、今ならこの僕の手によって悪性兵器へと姿を変えることができる。でもあの人はアクマができあがる過程を見るのがお好きだから、わざわざやってくるかもしれない。その前には姿を消してしまいたいな。


母子に近寄ろうとしたエクソシストのひとりが、仲間に肩を掴まれたのと、母親の叫びとに動きを止めた。

人殺し!

まだ十代の半ばであろう少女は、酷く歪んだ表情を見せた。今にも 泣き 出し そうな。
仲間のエクソシストに腕を引かれながら、申し訳なさそうに母子を振り返る。
足早に彼らは狭い路地に入り込んで、人間たちの追跡を逃れるように走り出した...母親の絶叫に背を押されて。

 

 

 

 

(主よ、憐れみたまえ。主よ、憐れみを与えたまえ。)