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The Star Festival

『under the moon』の葛城宗と木下柚月の場合
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僕が思っていた事はただの勘違いだってわかって、とてもホッとした。
だってシュウさんは本当に格好イイし、シュウさんにその気が
なかったとしても、女性の方からシュウさんに迫る事もありうると思うから。
だけど、本当にエレベーターに乗っているだけの短時間で
あんなにニオイが移るものだろうか。
僕がそう言うと、じゃあ試してみましょうか、といつもつけているコロンを
自分につけなおして、ニヤッと笑う。
その顔を見た瞬間、何かまずい事を言ってしまったかも……と
背中に冷たい汗が一筋流れた。

シュウさんの後について、エスカレーターでレストラン街がある
一番上の12階に上った。
そして真っ直ぐにエレベーター乗り場に来て
今はエレベーターの到着を待っている。
スーツの上着は荷物と一緒に駅のコインロッカーに置いてきたと
言うシュウさんは、半袖の白いドレスシャツを着てチャコールグレーの
ノータックのパンツを穿いている。
ブラウン系のネクタイは、社長業の時の特徴である茶色い髪のカツラと
よく合っており、宿にいる時はかけない銀縁眼鏡の奥にある茶色い
カラーコンタクトを入れた瞳は何故か嬉しそうに輝いていた。
なんだか鼻歌でも歌い出しそうな位ご機嫌なシュウさんを見ながら
小さく溜息を吐いて、この後何事も起こらないようにと密かに願った。

エレベーターに乗り込む時には既に僕達の周りには沢山の人がいた。
そしてシュウさんは僕の肩を引き寄せて、僕が他の人達に押されないように
気をつけてくれながら、乗っていた人達とすれ違うようにして
一番奥まで入っていく。
僕達の後にもどんどん人が乗り込んで、あっという間にエレベーターは
満員になった。
エレベーターの右奥に連れて行かれた僕は、目の前に立つシュウさんに
囲い込まれている。
何だか急に気まずくなって下を向いてしまうと、クスッという笑い声が聞こえ
『私の匂いがユヅキに移るかどうか楽しみですね』と僕の耳元で囁いた。

呼び捨てで呼ばれる事に弱いとわかっていて
わざとこういう時に意地悪するんだから……

癪に思いながらも、すぐに耳まで赤くなってしまう自分が嫌になる。


エレベーターが動き始めた。
僕に触れるか触れないかの距離にあるシュウさんの胸にちょっと
ドキドキしながらも、ふんわりと香るいつものシュウさんの匂いに包まれる。
さわやかな中にも甘さやセクシーさを兼ね備えたそれは、とてもシュウさんに
合った香りだと思う。
そして決して過度ではなく、通りすがった時にふわっと香る程度の
上品なつけ方だ。
僕は香水など全くつけないので、こうやって洗練された大人のお洒落が出来る
シュウさんを、いつも羨ましいと思う。

僕もそんなお洒落を学ばなきゃ、と思っていると、僕の腰に
シュウさんの左手が回された。
驚いてシュウさんの顔を見上げると、まるで何事も無いかのように
涼しい顔をしてエレベーターの扉の方を見ている。

……え?でも勘違いじゃないよね?

そう思った瞬間、僕の両腕を後ろに回して左手で押さえ
右手で僕のスーツの前ボタンをはずし始めた。

「ちょっ……!」

びっくりして思わず声をあげると、シュウさんの右側に立っている
年配の女性に睨まれた。
慌てて口を噤んだものの、赤くなりながらシュウさんを睨みつけると
『声を出したらバレちゃいますよ?』と僕の耳に唇を押し当てながら囁く。
バレたら困るような事をしなきゃいいのに!とは静まり返ったエレベーター内で
声に出す事は出来ず、せめて腕をほどいてもらおうと必死に身動きするが
僕の力でシュウさんにかなう筈はない。
その間もシュウさんの右手は止まる事無く、今度は僕のYシャツの裾を
捲くって中に手を入れてきた。

ギュウギュウ詰めの中でピッタリとくっついて立っているから
周りの人からは多分見えないとは思うけど、
それでも僕は気まずさと恥ずかしさで心臓が破裂しそうになっている。
早く降りる予定の地下2階に着いてくれればいいのに、と思うのに
こんな時に限って各階止まり。
各階に止まっては降りた人の数だけ新たな人が乗ってきて
満載状態は変わらなかった。

シュウさんの右手が脇腹を撫でたりしながら徐々に上にあがって来る。
次にシュウさんの手がどこに来るのか何となく想像がついて
それだけで顔から火が出そうだった。

「……っ!」

予想通りの行動に、僕は声を出さないよう下唇を噛み締めておでこを
シュウさんの胸に押し当てる。
長くしなやかな指で胸の飾りを摘んだりはじいたりされているうちに
どんどん足の力が抜けていく。
シュウさんはすっかり抵抗する気力を無くしている僕の腕を放し
今度は左手で柔々とお尻を揉みだした。
そして時々お尻の間を指でスッとなぞってくる。
そこを指が掠める度に僕の心臓がドキンと跳ね上がってしまう事に
気が付いているだろうに、相変わらずシュウさんの手は動きを止める事はない。

散々弄られて硬く赤くなっているだろう胸の部分を指で押し潰されたりする度に、
脳に電流が走ったかのようにビリビリという快感が体を支配する。
僕はゆっくりと両手を持ち上げて、シュウさんのYシャツにしがみつき
震える息を静かに吐き出した。
そうでもしないと立ってもいられなくなりそうだったから。
するとシュウさんは硬く膨れていたそれを爪で軽くカリッと引っ掻いた後
僕のYシャツから右手を抜いて手早く服を直してくれる。
それにビクンと反応しながら、女の子でもないのにそんな風に触られて
感じる自分が恥ずかしくて真っ赤になっている僕の耳に
『貴方だけを愛していますよ、ユヅキ……』と囁いた。
それと同時に、チーン、という音がして、やっと僕達が降りる地下2階に着いた。


****************


「もう〜〜〜〜〜っっ!!!シュウさんなんか知りませんっっ!!!」

エレベーターを降りた後、足が震えてまともに歩けなかった僕の腰を抱えた
シュウさんは、食品売り場の奥にあるベンチに僕を座らせた。

……ホントに信じられないっ!公衆の面前であんな事するなんてっ!

涙目になりながらすっかりふくれてそっぽを向く僕に、すいません、と
言いながらもずっとクスクス笑っている。
そしてあろう事か僕に顔を近付けると小声で囁いた。

「……でもユヅキさんも感じたでしょう?可愛かったですよ?」

その台詞に思わず真っ赤になりながら深い溜息を吐いた。
エレベーターに乗る前から感じていた嫌な予感は、これ以上ない位に
的中してしまった。
シュウさんは普段僕なんかが一緒にいていいのかな?とか思う位
すごく大人で洗練されてる人なのに、
突然今みたいに悪戯っ子のようになってしまったりする。
……まぁそれでもそんな所も好きで好きで堪らないんだけど……

ようやく落ち着いた僕は、もう一度溜息を吐いた後に立ち上がった。
シュウさんも同時に立ち上がって、僕の頭を軽くぽんと叩き

「宿に戻ったら笹が用意してあります。
 一緒に短冊のお願い事でも書きましょうか?」

と微笑んだ。
その笑顔を見ながら、まぁ今回位は許してあげようか、と
微笑み返してしまう自分は本当に甘いよなと思う。
でも、それだけ好きなんだからしょうがないよね?

……なんて思った僕がバカだった。
先に歩き出した僕のお尻をサラッと撫でて僕を追い越した後

『私を疑った罰は、宿に戻ってからきっちり受けてもらいますからね?』

とニヤッと笑って振り返る。
僕はその台詞に真っ赤になってプルプル震えながら、がっくりと肩を落とす。

……せめて短冊には『シュウさんの悪戯がもう少し減りますように』と書いておこう……

心の中で固く決意しながら、シュウさんの後を追って電車のホームに向かった。
シュウさんの移り香に包まれた自分を少し恥ずかしく、少し嬉しく思いながら……

− 完 −



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