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The Star Festival

『under the moon』の葛城宗と木下柚月の場合
- おまけ -


宿のある駅に着いた時は既に夜の9時をまわっていた。
雨こそ降ってはいないものの月も星も雲に隠れており
所々にぽつんと見える遠くの民家の灯りが、余計に暗さを際立たせている。
いつもの無人駅で電車を降りた後、何となく無言で辺りを見回しながら
歩いていた僕は、シュウさんが黙って伸ばして来た温かい手を
そっと握り返した。
普通であれば男同士が手を繋いで歩く事など出来ないけれど
ここは普段から人の少ない田舎であり、ましてやこの時間に
誰かが出歩く事も無い。
だから僕達は堂々と手を繋ぐ事が出来る。
何となく嬉しくてシュウさんの顔を見上げると、シュウさんも僕の方を見て
フッと微笑み、繋いでいる手を持ち上げて僕の手の甲に軽くキスをする。
なんだか照れ臭くて、少し赤くなりながら思わず下を向いてしまうけれど
それでもこんな時間が僕はとても好きだった。


シュウさんは宿の管理をしてくれている人に連絡を入れていたらしく、
僕がいつも過ごす離れにはちゃんと布団も敷いてくれているし
露天風呂にもお湯を張ってくれていた。
敷かれていた布団が、何故かダブルサイズになっていた事には
取り合えず気がつかないふりをしておこう……


まずは部屋に用意されていた短冊に願い事を書く事にした。
シュウさんはどんな願い事をするんだろう?
そんな事を思いながら隣に座っているシュウさんの手元を黙って見ていると、
シュウさんらしい綺麗な文字で

『木下柚月さんと一緒に暮らせますように  葛城宗』

と書いてから持っていたサインペンを置き、ポケットから何かを取り出す。
1番目の鍵を『これはこの離れの鍵』、
2番目の鍵を『これは本館の鍵』、
3番目のカードキーを『これが東京の私のマンションの鍵』と言いながら
短冊の上に置いた。
そして、呆気に取られて目を見開いたままの僕に向かって尋ねる。

「私の願い事は叶えられますか?」

と。
僕は今小野さんの家に居候をしている。
でもあまり迷惑をかけるのも嫌だったし、自分の稼いだお金で
自立出来る様になった事もあって、そろそろそこを出て
家を探そうと思っていた。
でもシュウさんには心配をかけたくないのでその事は黙っていたし
小野さんにもまだ言っていなかった。
シュウさんのマンションに何度か遊びに行った事はあって、いつか一緒に
暮らせたらいいな、と思った事は何度かある。
だけど忙しいシュウさんを束縛してしまう様な感じがして、それを考える事すら
図々しいようで気が引けていたんだ。
なのに……

するとシュウさんが手を伸ばしてきて、僕の頬を両手で拭ってくれる。
そのせいで初めて自分が泣いていた事に気がついた。

「ユヅキさん、私の願いは叶えられたと思ってもいいですか?」

シュウさんがすぐ目の前まで顔を近付けて聞いて来たので
僕は、うん、と頷きながら少し首をのばし、自分からその唇にキスをした。


****************


一緒にお風呂に入った後、シュウさんはいつもの作務衣に戻り
僕も備え付けの浴衣を着る。
そして枕元の和風スタンドだけをつけて、敷布団の上に
シュウさんに座ってもらった。
僕はその後ろに膝立ちになって、目を閉じて気持ち良さそうにしている
シュウさんの髪をドライヤーで乾かす。

短い茶色のカツラももちろん似合っているのだけど、やっぱり僕は
黒くて長いこの髪が好き。
水を含んでしっとりとしている手触りから、乾かしているうちに
さらっとした手触りに変わってきて、この髪が僕の体を掠める所を想像して
心臓がドキドキし始める。
シュウさんは何も言わず目を閉じたまま。
なんだかすごくこの髪が愛しくなって、ほとんど乾かし終わった毛先を
少しだけ掬い上げてキスをした。

するとシュウさんはゆっくり目を開いて振り向くと、僕の手からドライヤーを
受け取ってテーブルの上に置く。
そして布団の横で正座をしていた僕の正面に胡坐をかくと、右手の人差し指で
僕の唇をなぞり始め、そのまま唇の間に指を差し入れてくる。
その間、その目は僕の目を見つめたまま。
恥ずかしくて目を逸らそうと思うのに、捕らえられてしまったように
その視線から逃れられず、僕も視線を返したまま少し口を開いた。
長い指はそのまま中に入ってきて、僕の舌に触れる。
その指の動きが、深いキスをしている時のシュウさんの舌の動きととても似ていて
自然と下半身に血が集まってきてしまった。
本当のキスをしているわけでも、他の部分が触れられているわけでもなく、
ただシュウさんの指を銜えているだけなのに、
何故こんなに淫靡な感じがしてしまうのだろう……

やがてシュウさんの指は僕の唾液を絡ませたままもう一度唇をなぞり、
そしてそのままゆっくり首筋を伝って降りていく。
その感触に、僕の欲望がどんどん湧き上がってくる。
それなのにじれったいその指は、浴衣の胸元まで一旦降りた後また首筋を通って
唇まで戻り、また唇をスッと撫でてからいきなり離れていった。
そしてシュウさんはそのまま僕に背を向け、枕に頭を乗せて
横になってしまった。

当然このまま先に進むと思っていた僕は、急に放り出された状態になって
どうしたらいいのかわからない。
呆然としたままシュウさんの大きい背中をしばらく見詰めていると
突然くるっと振り返って肘枕をしながら

「……宿に戻ったら私を疑った罰を受けてもらうと言いましたよね?
 今日はユヅキさんの方から求めてくれるまで、私からは何もしない事に
 したんですよ。」

と言ってニヤッと笑った……


****************


……シュウさんは本当に意地悪だ。
最初からそう言ってくれたなら、じゃあ今日は何もしません、って言えば
済んだのに、散々焦らす様に煽っておいて、僕がもう引き返せなくなったのを
見計らって放り出すんだから……

でも、ホントにどうしよう。
僕だって男だし、こんなになってしまったら自分でも止められない。
それに目の前には大好きなシュウさんがいるんだから、やっぱり好きな人には
触れたいし、触れて欲しいと思う。
だから自分から触れればいいとはわかってるのだけど……やっぱり恥ずかしい……

僕が涙目になっていると、シュウさんはそのままの姿勢で軽く溜息を吐いて微笑む。

「……全く……
 私がユヅキさんの泣き顔に弱い事はわかっているでしょう?
 でも、たまには私だってユヅキさんから求めて欲しいんですよ?
 なんだかいつも自分の欲望を勝手に押し付けているだけのような気がして
 不安になってしまうんです。」

シュウさんが本当に不安そうな目をする。
でも、まさかそんな事を不安に思っていたなんて考えもしなかったので
僕は申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまった。
シュウさんにこんな不安そうな顔をさせたら駄目だ。
だから……僕もちゃんと自分の気持ちを表さなきゃ……

「……ぼ、僕だって、シュ、シュウさんに、
 あの……だ、抱かれたいと思ってます……」

カァ〜っと耳まで血が上るのを自分で感じながら、下を向いて
やっとそれだけを言う。

「……それは本当ですか?」

「は、はい……」

下を向いたまま返事をする。

「……ユヅキさんも私を求めてくれている、と?」

「は…い……」

「じゃあ問題ありませんね。今の言葉を態度で表してください。」

その台詞にはじかれた様に顔を上げる。
すると、またしてもニヤッと笑ったシュウさんが、『ね?ユヅキ?』と言った。

……は、はめられた……


****************


僕は小さく溜息を吐きながらシュウさんを見た。
でも、こうやって冗談みたいにしているけど、不安だと言った時の
シュウさんの目に嘘は無かったと思う。
だからやっぱりたまには僕から求めるべきなのかもしれない……

そう覚悟を決めた僕は、膝立ちになって少しずつシュウさんの方ににじり寄り
枕元に座ると、そっと右手の人差し指を伸ばしてシュウさんの唇に触れる。
いざ自分から触れるといってもどうしたらよいのかわからなかったので、
さっきのシュウさんの行為を真似てみる事にした。
心臓はバクバクいっているし、ジッとシュウさんに見詰められているから
顔も真っ赤になっているだろうけど、一度覚悟を決めたのだから、と
自分に言い聞かせる。

シュウさんは肘枕をやめて枕に頭を乗せた。
枕元の和風スタンドがシュウさんの顔をほの暗く照らしており、
改めてみる整った顔にやっぱり見惚れてしまう。

僕はシュウさんと見詰め合ったままゆっくりと唇をなぞった。
するとシュウさんは口を少しだけあけて、僕の指を舌先でつっと舐める。
その感触にピクッとしながらも、そのまま口中に指を差し入れると
今度は指に舌を絡ませてきた。
シュウさんの瞳にどんどん欲望が溢れてくるのが目に見えてわかる。
そして僕もその瞳と指を舐める少しざらついた舌の感触に、どうにもならない位の
欲望を掻き立てられて、震えながら息を吐き出した。

やがてそっと指を抜くと、そのまま首筋を通って胸元まで降りていく。
さっきシュウさんはこの後また唇まで指を戻したけど
それじゃあ先には進めないし、この後どうしよう……

するとシュウさんが手を伸ばして僕の浴衣の帯を解き始めた。
なのでそれに合わせるように僕もシュウさんの作務衣の紐を解く。
そっと前を肌蹴ると逞しい胸板が現れ、それを見ただけで僕の心臓は
跳ね上がってしまい、指が震えてそれ以上出来なくなってしまった。
そんな僕を見てシュウさんは微笑む。
そして上半身を起こして僕の浴衣を肩から滑り落とし、自分は着ていたものを
全て脱ぎ捨てて隣の枕をポンポンと叩いた。
促されるまま隣に横になると、僕の下着を取り去った後ゆっくりと覆い被さってくる。

「……これから先は私にどうして欲しいのか、言葉で表して下さい。
 私はユヅキさんの言う通りに動きましょう……」

……また意地悪だ……だけどせっかくここまで頑張ったんだから……

勇気を出してシュウさんの顔を両手で挟み、キスをしようとする。
けれど唇が触れる寸前でシュウさんは止まってしまう。

「ユヅキはどうしたいの?言葉で言わなければわからない」

そう言うシュウさんの息が唇にかかる。
恥ずかしいしドキドキするけど、それと同時に
早くその唇に触れたくて堪らなくなった。

「……キ、キス……したい……」

「軽く?それとも……?」

「……ちゃ、ちゃんとした……の……」

僕がそう言い終わるか終わらないかのうちに、シュウさんの唇が重ねられる。

「ん…んん……」

散々焦らされた上にやっと与えられたキスだったので、僕は思わず積極的に
求めてしまう。
唇を割って入って来た舌に、自分のそれも絡ませて吸い付く。
まるで追いかけっこをする様に、するっと逃げてしまうシュウさんの舌を
懸命に追いかけては絡ませ、そしてまた逃げるのを追い求めて絡ませる。
そんな事をしている間にすっかり僕のモノは勃ち上がり、同時に
シュウさんが自分の反応しているモノを僕の太腿に擦り付けてきた。
ドキンと心臓が音を立て、一気に顔に血が上る。
するとシュウさんは唇を離し、掠れた声で囁く。

「ユヅキ……次は?次は……どうしたい……?」


****************


欲望で溢れているシュウさんの瞳を見て、一緒に感じ合えているとわかり
ホッとしたような嬉しいような恥ずかしいような、
すごく不思議な気持ちだった。

「…もっと沢山……キス……して……」

「唇に?」

「…………全部…………」

「……キスだけ?」

あ〜、もう。
どうしてシュウさんはこうやって僕を追い詰めるんだろう。
自分の心臓の音はうるさいし、顔から火が出そうだし、
体はいつになく凄く熱いし……

でもさすがにそれ以上口にする事が出来なくて、シュウさんの頬を挟んでいた
両手を離し、思い切って僕に覆い被さっている逞しい胸に手を這わせながら
首筋にキスをした。
一瞬シュウさんが息を飲む。
そして次の瞬間、さっきまでのキスと比べ物にならないぐらい
激しいキスをしてきた。
そのまま首筋、胸とどんどん下に下りていって、僕のモノに舌を這わせる。

「あ…っ!」

思わず逃げようとしてしまう僕の腰を引き寄せて、舌で何度も舐めあげては手で扱き
僕のモノからトロトロと零れ続ける透明な液を吸い上げる。
そして僕の両膝を立たせると、その液と唾液を絡ませながら後ろの蕾に舌を這わせ、
指を挿し入れた。

「……んっ…やっ……」

指を2本に増やし、3本に増やしながら僕のモノも口に含み、更に僕を追い詰めた後
急に口と手を離してまた僕に覆い被さる。
そして硬くなったシュウさんのモノを僕の蕾に擦り付け

「……もう一度。ユヅキ…次は?ユヅキは……どうしたい……?」

と、今度は僕の耳を舐めながら聞いてくる。
シュウさんの長い髪が僕の肩に降りかかり、全身に鳥肌が立った。
目尻には勝手に涙が浮かんでくる。

「……や…いじわ…る……」

わかってるクセに。

僕がどうしたいのか、シュウさんにどうして欲しいのか、
全部わかってるクセに……

シュウさんは欲望に燃える瞳で僕をジッと見詰めている。

もう僕は限界だった。

「……ひと……つ…に……シュウさ……ん…と……早く……」

言うと同時に目尻に溜まっていた涙がポロリと零れた。
シュウさんはその涙を舌で拭った後、『よく言えましたね』と微笑んだ。
そして僕の腰の下に枕を置き、肩に両足をかけさせて
一気に僕の中に入って来た。

「……っ!」

焦らされて焦らされて散々待った挙句、急激に与えられた快感に
僕は我慢する事など出来なかった。
貫かれた途端、パタタっと僕の先端から勢いよく飛び出した白い液が
自分のお腹を汚す。

「ユヅキ、そんなに私が待ち遠しかった……?」

小声で言いながら、僕の胸に落ちたそれを指で拭い取って舐める。
涙でぼやけた視界に入る、シュウさんのその淫靡な行為と言葉が
僕をまた興奮させ、思わずキュッと後ろを締め付けてしまう。

「……まだ足りないって言ってますよ……?」

「……やっ…んっ…ぁ……」

言葉と同時に再度勃ち上がりかけていた僕自身を右手で扱き、
激しく抽挿を始めたシュウさんに、僕はひたすら翻弄されるままだった。
唇を噛みながら思わず漏れそうになる声を必死で耐え、
シーツを握り締めながら、ひたすら与えられる快感に酔う。
やがて二度目の限界を迎えそうになり、僕のモノがはちきれんばかりに
膨れ上がってくると、僕の片足を持ち上げて更に深くまで何度も何度も
突き上げてきた。

「……ダ……ダメっ…あっ…あぁッ……!」

シュウさんは僕の足を放すと、背中を仰け反らせてビクビクと震える
僕の体を抱き締める。
そして、ん、と小さく呻いて僕の中に全てを注ぎ込んだ。

……しっとりと汗ばんだシュウさんの肌。僕を包み込む大きな体と長い髪。
荒い息遣いと、ぴったりとくっついている胸から感じられる、少し早い鼓動。
やっぱりそのどれも全てを愛してる……


****************


シュウさんの腕に包まれて、ウトウトと眠りに落ちそうになっていた時だった。

「そう言えばユヅキさんの願い事はなんだったのですか?」

ドキンと心臓が跳ね上がる。

……まさか『シュウさんの悪戯がもう少し減りますように』なんて言えない……

誤魔化そうにもうまい言葉が見付からずに、あの、その、と焦りながら
口篭っていると、額が付きそうな位近くまで顔を寄せてきたシュウさんが
ふ〜ん、と言い

「……何か良からぬ事を企んでいたようですね。」

と言って僕の胸に手を這わせてきた。
その感触にビクッとする。

「まだまだお仕置きが足りないようですから、
 お仕置きが全て終わってから
 もう一度ユヅキさんの願い事を聞きましょうか。」

シュウさんは嬉しそうにニヤッと笑い、楽しみにしてますよ、と言いながら
真っ赤になってジタバタする僕の体を抑え込んだ。
そしてシュウさんの舌で胸の飾りを舐めたり突付いたりされ、その一々に
反応してしまう自分に赤面しながら僕は思う。

今年の七夕は、僕の願い事を書く暇もなく過ぎ去りそうだ、と。

まぁでもシュウさんの願ってくれた事が僕の願い事とも言えるのだし
こんなに愛しているシュウさんと一緒に暮らせるという願いが叶うだけでも
充分過ぎるほど幸せだ。

僕がそう思ってシュウさんの長い髪に指を絡ませた時

「今度はエレベーターじゃなく、満員電車っていうのもいいですね。」

と僕の胸から顔をあげて悪戯っ子の様に笑う。
エレベーターでの出来事を思い出して、またしても耳まで赤くなりながら、
あまりにも癪なのでシュウさんの髪を少しだけ引っ張った。
シュウさんはイタタと言いながらクスッと笑い、再度僕の胸に舌を這わせる。

……来年こそは絶対に絶対に『シュウさんの悪戯が減りますように』と

書く事にしよう……

− 完 −



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お気が向いたらで構いません。お返事はTHANXページで……