「ねぇシコウ、やっぱりキハクはオウウンの事が好きなのかな?」
キハクが自分の領に戻ると言って帰って行き、その後オウウンも
おやすみなさい、と言って部屋を後にした。
そして僕は早速シコウに尋ねた。
「……何故そのような事を聞く?」
シコウはオウウンが敷いてくれた布団の上に胡坐をかいて、
傍に座っていた僕の体を抱き寄せながら聞き返した。
こっちに戻ってきてから僕達は毎晩必ず一緒に寝ている。
別に毎日抱かれると言うわけではないのだけど(さすがに僕の身が
持たない)少しでもシコウとくっ付いていたかったから。
そんな僕の我が儘を黙ってシコウはきいてくれたってわけ。
僕は引き寄せられるままシコウの胡坐の中に後ろ向きに座り、
後ろからシコウが抱き締めてくれる、その体温に安心しながら
先程キハクを見て思った疑問をぶつけてみた。
シコウは僕の話を黙って聞き、その後しばらく考えてから
「……あれ達にはあれ達なりの事情があるのだ。
あまり詮索せず、黙って放っておいてやれ。」
と言った。確かに他人が余計なお世話をやく事はないと僕も
わかってる。
でも……
「でもね、今日の二人を見てたら、キハクはオウウンの事を
好きなんだろうってすぐわかったし、オウウンもすごくキハクの事を
意識してるってわかった。
だから、もし両思いだとしたら、やっぱりうまくいって欲しいって
思うよ。
……僕もシコウとの事ですごく悩んだし、もうダメだって何回も
思った。
でも、今はこうして一緒にいられる。
それはばあちゃんのおかげもあると思ってるんだ。
オウウンにはお世話になりっぱなしだし、だからもし僕で
出来る事があるなら何でもしてあげたいと思う。
それに、お互いに好きだっていう気持ちがあれば、
きっとどんな事も乗り越えられると思うんだよ。」
僕は顔だけ振り向いて、シコウの瞳をまっすぐ見つめながら
そう言った。
するとシコウは、いつもはとても乱暴なクセに、珍しく僕の唇に
優しく口付ける。
そして、やはりミツキは子供だな、と言って微笑んだ後
「好きだという気持ちだけではどうにもならない事もある。
あれ達にも結ばれぬ事情があるのだ。
周りが何をしようが本人達がどうしようが、どうにもならない
事がな。」
と少し悔しそうに言った。
その様子を見て思う。
……シコウにとってオウウンは右腕と言ってもいい存在だし、
それにキハクは親友だ。
根が優しいシコウは、きっと僕以上にその事を考えたのだろう。
でも、シコウほどの力を持つ鬼神でも、どうにもならない程の
事情って何だろう……
すっかり考え込んでいると、その話はもう終わりだ、とシコウが言って
いきなり僕のうなじに噛み付いた。
「っ!」
突然の事に驚いて、思わず逃げようとしてしまう僕をシコウの手が
止め、更に首筋を吸い上げられ、歯を立てられる。
「……それにしても随分キハクを気にしているようだが。」
耳元に低い声でそう囁き、右手は服の上から胸の飾りを弄んで
左手は僕の帯を解き始めていた。
いい加減慣らされて来たその手の感触に、下半身が反応するのを
止められない。
「…そ、そんなことない!……僕…はシコウだけが……好…き……」
「その割にはキハクに抱きついたりしていたが……?」
……僕がシコウと間違った事ぐらい百も承知なクセに。
そう言おうとした時、するっと服の裾からシコウの手が忍び込み
既に勃ち上がりかけている僕のモノを直接握り込む。
「あッ……!」
思わず仰け反りながら抗議の言葉を飲み込んだ僕に
「……今夜はお仕置きだとわかっているな……」
と囁いて、あの炎の様なオーラで僕達を包んだ……