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その後僕とオウウンで用意した夜ご飯を4人で食べた。
最近ではオウウンもシコウに言われて一緒に食べる事が多くなり、
オウウンが味がわかるようになったおかげで、味付けなんかも
二人で相談しながら出来るようになった。

「おいしかったね〜。
 こうやってみると、食べるという習慣は結構楽しい物だな。
 これはミツキが作ったのかい?」

食べ物を初めて食べたというキハクが、思ったよりも喜んで
くれているようで安心した。

「う〜ん、僕と言うよりはほとんどがオウウンだよ。
 僕はお手伝いをしてるだけ。」

と笑って答えると、キハクは驚いたようにオウウンを見た。

「……オウウンが?」

尋ねるキハクに、相変わらずオウウンはそちらを見ようともせず、
下を向きながら小さく、はい、と答える。
するとキハクは小さく溜息をついて、そうか、と言いながら
一瞬その瞳を切なげに揺らした。


ご飯を食べ終わった後はまたみんなで僕が淹れたお茶を飲み、
キハクは楽しげに僕がいなくなった後のシコウの様子などを
教えてくれた。

「シコウはよっぽどの事がない限り他の領に行ったりしないんだよ。
 私達は文字通り飛んで行き来しなければならないから、
 飛ぶのがめんどくさいって言ってね。
 なのに突然私の所に現れて『ミツキはどうした?』って聞いたんだ。
 私にわかるわけないだろ?って言ったんだけど、
 『隠してたらただじゃおかないぞ』って。
 あの時の剣幕をミツキに見せてあげたかったね。
 うちの領の鬼達は、もう二度とシコウの顔を拝みたくないと
 言っているよ。
 私達にしてみれば『ミツキって誰?』って感じだったのにね。」

そう言ってキハクはおかしそうに笑った。
僕も苦笑しながらシコウを見ると、シコウは少し耳を赤くしながら
すっかりそっぽを向いている。
そう言えばオウウンも、あんなシコウ様は見た事がありません、って
言ってたっけ。
僕はそれを思い出しながら、本当にシコウの傍に戻ってこられて
良かったと改めて思った。

「その後ミツキが自分の世界に帰ってしまった事がわかって、
 シコウは私に全部話をしてくれたんだ。
 だから君が戻って来たと聞いた時は本当に私まで
 嬉しくなったんだよ。
 常に冷静沈着だったシコウを、そこまで変えたミツキという存在に
 私も会ってみたくて今回は来たんだ。
 ミツキに会えて良かったよ。
 ちょっとそそっかしいけど、とても可愛いし、シコウが
 振り回されるのもわかる。」

そう言って笑った。

……ふ、振り回してなんて、そんなつもりないんだけど……

僕は何も言えず、ちょっと赤くなってしまった。


そしてキハクはそんな僕を見てもう一度微笑み

「私はシコウを親友だと思っている。
 だから親友には幸せでいてほしいんだ。」

と言った後、真っ直ぐに僕を見た。

「ミツキ、シコウを幸せにしてやってくれ。
 シコウと何でも良く話をして、沢山沢山触れ合って、
 一緒に過ごせる時間を大切にするんだよ。」

その真剣な表情と視線に、僕も真剣に、うん、と頷いた。
するとキハクは僕から視線を逸らし、私には叶わない夢だけど、と
小さく呟く。


……その視線の先にはオウウンがいた。

僕達より数歩後ろに下がった所で、僕達の話が耳に届いて
いるのかいないのか、鬼火に照らされた庭をその桜色の目で
静かに眺めている。
チラッとシコウを見ると、シコウは少し複雑な顔をして、
黙ったままキハクを見ていた。


……キハクはオウウンの事が好きなのだろうか……?

でもそれならば何故叶わないと言うのだろう?
思いを伝えるだけならいつでも出来るし、こんなに近くに居れば
触れる事も出来るだろうに。
もしオウウンが触れられるのを嫌がったとしても、話ぐらいは
出来るんだし、それじゃあダメなのかな?

何だかよくわからなくて、僕は黙ってキハクとオウウンを交互に
見ていた。