翌日、いつもの通り5人の鬼達に琴を教え終わると、バイエンは
シコウの手伝いがあるという事で、他の鬼達と一緒に行ってしまった。
なので、僕はそのまま琴の部屋でボーっとする。
昨日は朝のうちにキハクは自分の領に戻ったし、オウウンは姿を
見せなかった。
キハクは今日も来るって言ってたけど、きっとシコウの仕事が
終わる時間位にはなるだろう。
今日はオウウンは姿を見せてくれるだろうか。
僕にしてあげられる事は何もないのだろうか……
「なに、シケタ顔してるのさ。」
突然真後ろから聞こえたよく聞き覚えのある声に飛び上がって、
驚きながらも振り向くと、いつの間にかばあちゃんが僕の後ろに
座っていた。
ばあちゃんは時々こうやっていきなり出没する。
僕の心配をして来てくれるのは嬉しいんだけど、
もうちょっと出現方法を考えて欲しい。
「もう!脅かさないでっていつも言ってるのに!」
僕がそう言うと、まぁまぁと笑いながら僕の膝を叩いた。
「あんたが悩んでいるのはオウウンの事だろう?」
……ばあちゃんは知ってたんだ……
僕が驚いていると
「私はあんたの様子を見に来る時、オウウンの様子も
見ていたんだよ。
何てったっておじいちゃんの事だからね。
だからオウウンの事もずっと前から知っていたよ。」
と少し寂しそうに微笑む。そして
「オウウンは今夜消えるよ。
そしてそれをオウウンも自分で気付いてる。」
と静かに言った。
その言葉を聞いて、一瞬声が出なかった。
……もう?本当に今夜……?
「ねぇばあちゃん!!何とかならないの?!
ばあちゃんは巫女でしょ?!
シコウ達のような鬼神でも出来ない事を、
ばあちゃんだったら出来るんじゃないのっ?!」
僕は必死でばあちゃんに聞く。
するとばあちゃんは少し困ったように言った。
「さすがにそれは出来ないよ。
もし出来たにしても、そんな事をしたら万物のバランスが
崩れちまう。」
……やっぱりダメか……
一瞬期待してしまっただけに、僕はがっくりと肩を落とした。
「だけどね、ミツキ。
オウウンが消える前に、少しだけなら魔法をかけてやる事が
出来るよ。」
「……魔法?」
「そう。私はおじいちゃんと一緒に生きてきてとても幸せだった。
そして今はシコウの元で幸せに暮らしている。
それは全ておじいちゃんが私を受け入れてくれたおかげだと
感謝しているんだよ。
だからおじいちゃんであるオウウンに、少しでも感謝の気持ちを
表したいと思ってね。
オウウンの神霊化を止める事は出来ないし、1回しか効かない
役立たずの魔法だけどさ。」
と片目を瞑って見せた。