| その後、シコウが僕の濡れた制服を見て服を用意してくれる事に
なった。 
オウウンが持って来てくれたのは、シコウやオウウンが着ているのと
同じ形の、薄緑色をした着物とシースルーの半纏。 
背が160cmちょっとで童顔な僕も、
それを着れば二人みたいに大人っぽくなれるかな。 
そう思ってさっさと目の前で制服を脱ぎ捨てる僕を
シコウが驚いたように口を開けて凝視している。別に男同士(多分)なんだからそんなに驚かなくてもいいのに。
 そんなに見られたら何だか恥ずかしくなるんですけど。
 シコウの視線に少しドギマギしながら
オウウンに手伝ってもらって姿見の前で腕を通してみた。
 ……落語家の座布団運びみたい……
 
オウウンが、良くお似合いです、と頬をひくつかせて言うのを横目で
睨みながら、姿見越しにシコウの顔をチラリと覗き見る。一瞬目が合ったのに、慌てて僕から視線を逸らして誤魔化すように
咳払いした後、自分の眉間を右手で揉み始めた。
 
「も〜〜〜っ!似合わない事位自分でもわかってるもん!もういいよっ!僕はずっと制服で暮らすからっ!」
 
赤くなって怒りながら着物を脱ぎ捨てる僕を、
オウウンがオロオロしながら見ている。 
ふんっ!悪かったね、子供っぽくて! 
トランクス1枚で畳の上に胡坐をかき、すっかり僕は
不貞腐れてしまった。 
すると、いきなりパサッと頭から白い布を被せられる。前が見えないまま腕を強い力で掴まれて立ち上がらされ、
ポフッと頭を布に通されて腕も袖に通された。
 呆然としている僕を尻目に、シコウはどんどんその服のような物を
僕に着せる。
 腰には真っ赤な長い帯のような物が巻かれ、
ある程度巻き終わった所で一度結んだ後、残りを前に垂らした。
 改めて姿見の前に立って、自分の姿を見てみる。
 白い1枚布に、帯の赤さと胸元で赤く点滅する指輪がアクセントに
なっている。
 
「さすがシコウ様!今度こそ本当にミツキ様にお似合いですよ!」 
と喜ぶオウウンを少し睨むと、慌てて口を噤んだ。 
「……これならどうだ?一応女性物だが、こちらの方がお前に良く似合うであろう?」
 
僕のすぐ後ろに立っていたシコウが、姿見越しに僕に尋ねる。女性物という所が少し引っ掛かるけど、
確かにさっきの何倍も自分に似合う気がするし
脱ぎ着が楽なのがなんと言ってもいい。
 まあイメージとしては『卑弥呼』って感じだけど。
 
「うん、ありがと、シコウ。これ、借りるね。」 
姿見越しにジッと見詰めてくるシコウに思わず恥ずかしくなって、
今度は僕の方から視線を逸らした。 
 
 
 
       
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