| ふと目が覚めて、瞼を閉じていても感じる明るさに、
僕どうしたんだっけ?と考える。 
……そうだ。昨夜の祭祀中に鬼界に戻ってきて、シコウと色々話をした。
 そしてシコウと結ばれて、散々喘がされた挙句気を失うように
寝てしまったんだ……
 
少し手を動かそうとしてみるが、全然体に力が入らない。 すると枕元でボソボソと話す声が聞こえ、
布団の上にうつ伏せに寝ていた僕はそのままゆっくりと目を開けた。
 
「……シコウ様、もう少し手加減というものを……」 
「……そんなもの出来る訳が無い……」 
目を開けた先に見えたのは、
いつもの着物を着て不貞腐れたように胡坐をかいているシコウと、その横でシコウを諌めているオウウンだった。
 
あれが3代後のばあちゃんの時代まで噂されるほど、
恐ろしい鬼神……? 
何だか今のシコウの様子とその噂のギャップがおかしくて、
思わずクスクスと笑ってしまう。 「あ、ミツキ様お気が付かれましたか?」
 
慌てて近寄ってくるオウウンに、大丈夫だよ、と微笑んで見せる。 
「おはよ、オウウン。昨日は挨拶出来なくてごめんね。元気だった?」 
ちょっと失礼だとは思いつつ、
体が動かないのでそのままの姿勢でオウウンに話しかける。それに起き上がった所で僕は裸だし……
 
「ありがとうございます。私は元気でしたよ。ミツキ様は少しお痩せになられたようですが……」
 
心配そうに僕を見るオウウンに、
そう言えばこの人はおじいちゃんなんだっけ、と思う。そう言われれば、確かに雰囲気がよく似ている。
 シコウはもちろんだけど、その安心させてくれる雰囲気が大好きで、
僕はオウウンにもとってもとっても会いたかったんだ。
 
「ん〜、確かに少し痩せちゃったけど、又ここに戻って来れたから大丈夫だよ。」
 
と笑って言う僕に、全くシコウ様は限度を知らないんだから、
とかブツブツ言いながら僕を起きあがらせようとしてくれる。 「……オウウン、お前は出て行け。
 ミツキに服を着せるのは私がやる。」
 
さっきまで僕達の様子を黙って見ていたシコウが、
いきなり掛け布団毎僕を抱き上げてその膝の上に座らせる。驚いてジタバタしようとするが、全く体に力が入らなくて、
結局シコウのなすがままだった。
 
「わかりました。それではお願い致します。準備が出来たらお呼び下さい。」
 
そう言って僕達に頭を下げてオウウンが出て行った。 「……体はどうだ?」
 
シコウが僕の顔を覗き込む。まだ少し不貞腐れているけど、
その目は本当に僕を心配してくれている事がわかる。
 
「さすがに体が動かないよ〜。でもきっともう少し経てば平気。」 
苦笑しながらそう言うと、少し視線を逸らしてしまった。 
「……だから止められぬと言っただろう。我に返った時にはお前の意識がなくて焦ったぞ。」
 
きっとすごく心配してくれたんだろう。本当にこの鬼神が自分のモノになったのだと実感して
体中に幸福感が満ち溢れてくる。
 力が入らず震える両手を必死で持ち上げ、
シコウの顔を挟むともう一度僕に視線を向けさせた。
 
「僕は壊れなかったでしょ?そんなに柔じゃないよ。だってあのばあちゃんの孫なんだから。」
 
そのままシコウの顔を引き寄せて、ゆっくりとキスをした。 
 
 
 
       
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