『迷惑だ』 というシコウの言葉が頭から離れず、
余りのショックに涙も出ないまま、布団の中で一晩中悶々として
過ごした。
翌朝オウウンが、昨日の演奏素敵でしたよ、と言いながら
朝食の支度をしてくれたけど、この世界に来た当初から
食欲旺盛だった僕には珍しく、一切手をつける事が出来なかった。
オウウンが心配そうに僕が手をつけなかったお膳を下げ、
ここに一緒にいましょうか?と聞いてくれたが、
オウウンが忙しいのは良くわかってる。
だから、大丈夫だよ、と笑って見せて、やっとシコウの手伝いに
向かってもらった。
見事なまでに振られてしまった。
確かに応えて貰えないのは辛いけど、
それならそれでシコウを好きでいるだけでもイイと思ってたんだ。
なのに、あんなキスを自分からしたくせに、思ってるだけでも
迷惑だなんて……
僕は屋敷内を歩きながら、ある場所を目指していた。
それは僕がここに来た時立っていた庭の獅紋鏡。
別に帰れるとは思っていないし、今となっては自分が帰りたいのか
帰りたくないのかもわからなくなっている。
でも、せめて今だけは自分の原点に戻って、頭の整理をしたかった。
獅紋鏡の場所に着き、僕はその上に膝を抱えて座り込む。
……ばあちゃん、僕はどうしたらいいのかな?
胸元の指輪を握り締める。
二人で一緒に過ごしている時は、もしかしてシコウも僕の事
気にかけてくれてるのかな?とか思ったりした。
でも、キスをしかけて止めたり、激しいキスを突然してきたり、
散々僕を翻弄しておいて、その上でシコウはあんなひどい台詞を
吐いて僕を突き放す。
シコウが何を考えてるんだか全然わかんないや。
だけど、それよりわかんないのは自分の気持ち。
お前の気持ちは勘違いだとか、そんな気持ちは迷惑だとか
散々言われているにも拘らず、それでも僕を見詰める視線や、
ふとした時に見せる優しさを思い出すだけで胸が熱くなる。
……ねぇばあちゃん、僕がシコウを好きだっていう気持ち、
勘違いじゃないよね?
思ってるだけで迷惑って言われちゃったけど、
それでも止められないこの気持ちはどうしたらいいのかな?
昨夜一睡もしていなかった僕は、
そんな事を思いながら、睡魔に引き摺られていった……
「お〜い、起きろ〜。」
ペチペチと頬を優しく叩かれる感触がし、僕は目を擦りながら
起き上がる。
目を開けて前を見ると、そこに立っていたのは……生徒会長?!
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