全てが同じ、そして、全ては新しい。

「作られた物だってことに、すっごいカナシさを抱いてたのに、俺の為に、か? …お前がまた、俺の前に現われてくれたのは」

仲間たちのもとに、皆が散っていった。誰もがその、彼らの思い出の中にある、切ない名前を抱いて、帰っていった。会いたいと願う気持ちが子供たちの胸の奥に在ったから、全てはまるで、最初からそうだったかのように。ジタンは膝の上に乗せ、柔らかい髪に指を通しながら、訊ねた。二人の交わす

言葉をブランクは、俯きながら聞いていた。

「……うん。……どうしても、ジタンとはなればなれになるのが、こわかった。……止まってしまうこと自体に、恐怖感は無くなってたんだ、自分が生きてきた事が嘘じゃない、ジタンやみんなが、ボクの事を憶えててくれれば、僕は在るって思ったから」

でもね、ビビは自分の身体を、離さないと言わんばかりにしっかり抱き締めたその手に触れた。

「そう思えば思うほど、僕の事を憶えていてくれるジタンに会いたくなった」

クジャが、その想いを汲んだ。

「……俺は、お前の事を、何て呼べばいいんだろうな?」

痛い沈黙の後に、気弱な子供は言った。

「…………ビ、ビ」

身体は同じ、記憶も同じ。この子供は、自分と暮したあの最後の日々、せつないよろこびを、流した涙を、共に舐めたアイスクリームの味さえも、憶えている。この子供はビビだ、形ばかりではなくビビだ。彼が愛した少年だ。

しかし、そう思い込むのは容易なことではなかった。

俺の想いはどうなる? ビビに当てた俺の思いを、この子にぶつけてやればいいのか? 幸せと同量の、居心地悪さを、当然のことのように受け容れて、それでも「ビビ、大好きだよ」と、笑顔を見せればいいんだろうか。

幸せか。

「……ジタン、忘れないで?」

少年は、あかるい声で言った。

「僕は、ジタンの知っている『ビビ=オルニティア』じゃないかも知れない、クジャが作った、気持ちを持たない機械かもしれない。だけど、僕のこころの中には、ジタンの事を愛する気持ちが、一杯詰まってる。ジタンが――僕の記憶の中のジタンが、ボクをたくさん幸せにした記憶が、僕を、ジタンにあいたいって気持ちにさせたんだ」

都合よく作られた、機械かもしれない。しかしその機械だって、また新しい記憶を作り出す、ジタンは最初にそれを、認めたのだ。

――あなたのことが好きだという単純明快な事実を作り出すのに、千の夜を、朝を、そして無限の言葉を笑顔を涙を痛みを、感じてきたように、これからさき、共に歩めば、いくらだって。

「……そう、だな」

ジタンの声が、無理に笑った。

「……愛し、てるよ、……ビビ……」

大好きで、大好きで、仕方がない、仕方がなかった。俺は、ビビを、愛してた、愛してる。過去形で語ってしまえば、ビビはもう、いない。

ブランクは俯いたまま。

ジタンは、ビビを強く強く抱き締めて、声を殺した。

おんなじ身体、おんなじこころなのに。この子はビビなのに。

この子を愛するということ、新しくたくさんの記憶を共有していくことが、ビビの望んだことであるはずなのに。

涙が止まらない。


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