♯24アフター 『愁霖』 (4) 

 男の意図に沿うように、とまりはそろそろと右手を股間に伸ばした。へその脇から下腹 へ、そして恥毛の生えそろう辺りまで手をすすめていく。そろえた指で恥丘あたりを押さ えて、手が止まってしまう。 ――うぅ……、こんなの、いや……はずか、し……  見えない目が、羞恥を膨れ上がらせる。  その先へ手を伸ばす決心が、未だつかない。じりじりとした時間が過ぎる。  それは、申し訳程度の薄い恥毛を手で隠して、性器のみを見せつけられているようにも見える。卑猥な光景が、男の目の前にあった。  少女の股間は、肉厚の大陰唇がふっくらと盛り上がり、それが閉じて一つの筋をつくっ ているだけだった。手で隠された部分以外に、恥毛は生えていないようだ。閉じた秘肉は 白く、柔らかく張っていて、尻の肉がそのまま続いているように見える。そこには小陰唇 の先すら、控え目にも覗いていなかった。クリトリスを隠しこんでいる肉鞘も、ほとんど がその柔肉の割れ目に埋没していて、恥丘のはずれからピンクがかったその身を少しさら しているだけだった。 「…どこを押さえているんだ?」  とまりは答えない。止まった手は、薄い恥毛を押さえているままだ。 「どこを擦りなさいと言われた?答えなさい」 ――…だって、だって、そんな……待っ…… 「…どこを、だ?言ってごらん?」  微妙な格好のまま、胸の整理もつかない内に詰問され、とまりは混乱する。 「……言えないのか?」  男の声に怖いものが混じる。闇の中で肩をつかまれたような怯えが走る。 「お…、ま、…………」  答えようとする。卑語を口にする禁忌に、舌が震えた。 「…聞こえないよ。聞こえるように言えるね?……さあ」  男は声色を柔らかく戻し、とまりの決心を促がす。 「……おま、…ん………こ、…………で、す」  生まれてこの方、声に出したことのない言葉だった。自分の発声が耳に届いても、まる で異国のもののように響き、意味不明に感じている。ただ、卑猥なことを口にさせられた 恥ずかしさが、本能のようにとまりの性を疼かせた。   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   「分かっていれば、いい」  とまりに女性器の名称を言わせた事で、男は満足気だった。  男は自身の経験にはなかったが、成人女性の中には性毛が極端に薄かったり、全く生え ない人がいることは知っていた。今、彼に身を委ねている少女もそうした女性の一人なの だろうか。  性器も、それだけ取れば、まるで年端もいかない女性のもののように見える。目の前で、 それが小刻みに震えていた。この子は胸が小さい事を気に病んでいたようだったが、性毛 の薄さもコンプレックスなのかも知れない、と男は思った。それを単純に可愛らしいと感 じたが、震えながらうつむくその様子はひどく被虐感を纏っていて、男の理性を焦すもの だった。  彼女の眉をひそめさせ、恥辱をこらえる唇を歪ませたい。そんな気持ちになっていく。 「止まってないで、はやく指をすすめて…!」  強い口調で命じられ、縛を解かれたかのようにとまりの手は動いた。  指を歩ませ、恥丘を過ごして、大陰唇のふくらみを隠すように手を伸ばす。人差指と中 指をそろえて肉の割れ目にあてた。 「そう、…そこだよ」  自身の性器をいじる少女を見て、その卑猥でそそる姿に男は満足する。 「今から、セックスで使う場所だよ…分かっているね?……返事は?」  わざと、聞かなくても分かりきった事をとまりに確認する。 「………は、い」  セックス、という言葉がとまり胸に響いた。 「そこに、僕のおちんちんを入れるんだよ。………返事は?」  男のペニスに、性器を、初めてを貫かれるのだ。 「………は…ぃ……」  これから男の性器を受け入れねばならないのだと言い聞かされると、とまり不安と恥ず かしさで涙が溢れそうになった。 「じゃあ、今からその準備をしなきゃいけないのも分かるよね…?」  性器を濡らして、ペニスの挿入をスムーズにさせる必要があった。 「……はい」 「なら、始めて…?」  とまりはもう答えなかった。男の指示に従うのだ。言われたとおりに準備を済ませて、 男のペニスで処女を散らすのだ。苦痛に満ちた時間は、短い方がよいと思った。  そんな風に思うと、どうしてか胸が切なく燃えるように感じてくる。  指を滑らせて、陰唇をなぞった。 「ん…、んん………」  シャッター音を浴びながら、自分の秘肉をゆるゆると撫でていく。緊張とは裏腹に、柔 い快感が生まれてくるのを感じる。呼気が上がりそうになり、とまりは自分の淫性への不 安がよぎった。  その時、男が体重を掛けたのか、ベッドがギシリと傾いだ。 「ひ…、ぁ……!?」  そのまま覆い被さってこられるのかと思い、とまりは驚愕で胸が潰れそうになる。  だが、そんなことも無く、男はとまりの顔や胸の辺りの写真を撮ってはポジションを移 していく。ふと、耳元まで顔を寄せてきて、男が囁いた。 「…いちいち止まらないで。いやらしい君を、撮って欲しいんだろう…?」   耳朶に息が響き、ぞくりと震えが背筋をくだる。その感覚がとまり胸を昂ぶらせた。ど きどきしながら、命じられた行為を続行する。 ――うぅ…、い、や……い…や……ぁは、……はず、ぅ……  ゆるゆると指を動かし、自身の性器をいらいながら、とまりは最後にはずむを思い浮か べて行なったオナニーを思い出してしまっていた。うっとりと上気したはずむの顔が、優 しい声でエッチな睦み事を呟きながら、恥じらい嫌がるとまりの秘部にいやらしく指を這 わしていく…といったものだった。少し暗くした部屋で目を瞑ってて、どうしてか、そん なオナニーをしてしまった。その時、昂ぶって自分の敏感すぎる部分に触れてしまい、そ の感覚に驚いてしまって以来、性器に触っていなかった。 「ん、ぁぅぅ………」  おびえを含んだ指が会陰部までたどり着く。なでるように大陰唇が合わさった溝を何度 か往復させる。はずむの顔が、閉じた目蓋の裏に浮かび上がっていた。なぜかその顔は紅 潮し、切なげにゆがんでいた。 『あぁ、とまりちゃん…』  はずむの幻が喘ぐ。  たまらなくなったとまりの指は恥丘の根を強く刺激していた。クリトリスに届いた刺激 が鋭利な快感に変わって背筋を走り、脳髄を貫いた。うなじの髪がぞわりと逆立っていく。 「んあ、あぁっ……ぁぁ……!」  とまりは自分の艶声に驚き、あえぎを噛み殺した。性器を弄う手を止める。 「いい声だね……続けていいんだよ」  そろりと、男の手がとまりの髪を撫でて言った。  目を隠したとまりにとって、初めて触れる外界からの感覚だった。そしてそれは男を感 じた最初の肉の感触であり、体温だった。男女の行為が始まってからは冷たく尖ったよう にとまりを追いやっているのに、この手は大きくて暖かだった。とまりの小さな頭は、柔 らかくその手のひらで包まれ、鬢の髪と耳がそっと撫で下ろされていく。そうして、男は とまりの髪を何度も愛撫していく。それだけの行為なのに、淡い快感がとまりを覆ってい く。止まっていた指が、お預けされた快感の続きを求めるように動き出してしまう。  ふと、はずむの事を思いながら他の男の前で性器を晒し嬲っている自分を思った。  黒い情動が胸を締め付ける。しかしその黒さがとまりの淫らな性感を煽っている。恋し い人を身体が裏切っていく背徳感が、昏く淫靡な悦びを目覚めさせていく。胸に詰まるよ うな息苦しさは、性の快感がもたらす苦しさに似ているように思えた。そんな混沌とした 感情を塗りつぶすように、肉体へ性感を与えようと指が性器を嬲っていく。 「そう…いい感じにエッチになってきたね……?」  男はそう言って、股間だけでなく、色々な角度からとまりの姿態をカメラに収めていく。 「なかなか、いやらしい格好だよ…」  シャッター音を浴びながら、とまりは閉ざした闇の中で、自身の姿を想像してしまい、 手が止まった。バスローブをはだけて、小さな乳房を剥き出しにしてベッドに横たわり、 開ききったふとももの奥に伸ばした手のひらが、性器を微妙に包み隠している。猥雑な グラビアのような構図が、ファインダーには現れているのだろうか。  胎内が羞恥で火照り、白い肉を内から炙っている。いつのまにか握りこんだ左手のシー ツが脂汗で湿気ていた。  猥雑な構図を拾いながら、男は指で感じるよう命じる。とまりはそれに従った。   汗ばんだ指で、性器の割れ目をそろりとさする。下からなぞり上げていくと、少しだけ 覗いている秘肉に指先がかかり、性感らしき痺れが背中を走り抜けた。思いだにしない快 感が、頭の奥底を瞬時に焦がした。返す指が、クリトリスを被う包皮の上をこすりつけ、 新たな快感はとまりの腰から首筋を震わせていく。ぷっくりと盛り上った大陰唇のふくら みを、その割れ目に沿ってさする。怯えを含んだ指は、かえって微妙なタッチで性感部を 捕らえた。その度に肉の奥から沸き立つ快感が、はっきり膨れ上がっていく。もう、意識 を逸らす事が出来なかった。 「っああ………!」  思わず漏れた声だった。何故か、唇を噛み締めて、それを防ごうとしなかった。  自分の肉体に生み出される快感を求めて、指が動く。恥ずかしいという思いは霧散しつ つある。なぞる指先が徐々に割れ目の深みを探っているのに、とまりは気づいていなかっ た。  知らず、大陰唇をかき分け、ぴっちりとはさみ込み隠していた自身の秘部へと指先を潜 り込ませていた。小陰唇の襞を探りあて、身体は一層の快感に歓喜していく。 「は、ぅ………」  性器の奥が、じっとりと熱い。そこからのものだろうか、湧き出てくるものを感じて、 とまりは性器をひくつかせた。軽く曲げた中指で、えぐるように小陰唇をなぞりあげる。 ぷりっとした感触の肉襞が、ぬめりを帯びていた。ぞくりと性の電流が流れ出す。 「あ、…ぃゃ…ぁぁ」  繰り返すたびに、ぬるぬるとした粘液が指先に絡んでいく。中指がかき出したそれは、 指腹で延ばされ、割れ目全体を艶やかに濡らしだす。ぬるりと滑る指先が小陰唇をふるふ ると弄び、クリトリスの包皮がはじかれる度に、とまりは秘められた感覚が揺り醒まされ ていくのを知った。 「あ、はぁ…ぁぁ……あぅぅっ……」  自身のあえぎが、トーンを高く変えていくのに気づいたが、止められなかった。逆に、 恥骨の奥から腰の奥底へ流れ出す快感の波が、沸き立ち、躍った。  頭が痺れていく。何も考えられない。はずむのことも自分のことも、何をしたかったの かも、濃霧に紛れて消えていた。 「あぅ、ぁはぁ…、んぁっ、ぁぁ……」  幾度かの経験では無かった感覚に、とまりは思考を支配されつつあった。  性の炎に心を炙られて、淫らな女肉へと変わっていく自分に疑問を持たなかった。  もっと疼かせて欲しくて、とまりは顔の見えない手に、指に、その肉の全てを委ねよう としていた。   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *  ふくよかな大陰唇に指先が割り込んでいくのを、男はファインダー越しに見ていた。カ メラをズームアップさせ、少女の指が、奥に閉ざしていた自身の敏感な肉をこすり上げて いく様を見る。白く柔らかな媚肉を、少女自身の細くしなやかな指先がえぐっていく。  ぴちゃり…、くちゅりと淫らな瑞音が鳴った。 「ぁっ、ぁっ、ふぁっ…、ぁぅっ、ぁあぁっ、ん…」  間欠的に洩らされた少女の小さな媚声は、男の耳にも届いていた。顔を覆ったヘアバン ドと乱れた前髪の向こうの表情は、女のそれになりつつあった。上半身を微かによじらせ て、切なげな吐息を唇の間からこぼしている。生まれつつある快感を逃すまいとするのか、 指の動きが増すにつれて、男に晒した性器に被さるように、内腿が徐々にすり寄せてくる。 男がそれを咎めると、びくりと膝頭が跳ね、もがくように揺れた。 「あ…、んぁッ、んん……ぁぁ……!」  男から背け、シーツに埋めていた横顔も、いつしか快感の波に合わせて振り動かしてい た。鬢のほつれ髪が、汗ばんだ頬に張り付いている。シャッター音にビクついていた当初 のおびえは、もう少女から消えていた。自慰に没頭し、写真に撮られている事さえ忘れて いるのかも知れなかった。  シーツを握っている少女の手に、手のひらを重ねる。視界を閉ざしている彼女は、ふい に触れられて体を強張らせる。自分に気を許していないのは分かっていた。手の内にいる、 なつかぬ迷い猫のようだった。 「胸が、空いているよ……?」  男の問いかけが、少女には分かりかねたようだった。 「え、ぁ……?」  つぶやいたまま、動きを止める。息は荒く深い。自慰で、思考が白くなりつつあるのだ ろう。呆けた口元に、かすかに涎がこぼれた跡が見えた。 「力を抜いて……ね?」  ゆっくり優しく囁くと、男の手を振り解かんばかりに力んでいた腕の力を、少女は弛め た。少しの間、重ねた手のひらが男と女の体温を伝え合わせた。  少女の手を、彼女の乳房に誘導する。 「続けなさい」  男の意図を悟り、少女はイヤイヤと首を振った。唇を結んで、眉を歪めている。 「もう、僕に触って欲しいの……?そんな、いやらしい子なの……?」  耳元に口を寄せて尋ねると、少女は小さくあえいで首を振った。なんとなく面白くなく 感じ、じゃあ自分で揉むんだと突き放した口調で命じると、少女は洟をすすり上げながら も自分の乳房に左手を当てた。その様子がいじらしくも哀れだった。  男の脳裏には、雨の中の彼女がいた。  何があったのかは聞かなかった。もう子供ではない年頃なのだ。辛く、どうしようもな い事があって、感情や想いを燃やし尽くしていたのだろうと感じた。ただ、捨て置けない 空気を感じて、連れてきてしまった。特に下心を持っていた訳ではないと、男は思う。  ただ、少女の望むまま、それに応じている。彼女に目隠しをさせ、恥態晒すように命じ、 それに従う姿をカメラに収めている。泣きそうになっても少女は男の言葉に従う。  今も、男に言われるまま、愛らしい乳房を自らその手で揉みしだいている。  華奢な指がねっとりと乳肉を揉み潰すと、その指の間から白い肉が覗く。小振りな乳房 をすくうように手のひらが蠢く。少女が熱い息を洩らした。あえて乳首に触れないように して、時折の接触を愉しんでいるようにも見える。その右手は性器をまさぐっていた。 「あぁ…、あっ、はぁぁ……んん……」   先程までは堪えていたあえぎ声も、出すにためらいを失くしたようにトーンを上げてい る。少女は、その姿を淫らなものに変えつつあった。乳首の際まで胸を揉みしだき、性器 に伸ばした指は愛液をねっとりと光らせて、陰唇を嬲っている。ぴっちりと閉じていた大 陰唇は潤びつつあり、ゆるやかに開いて、中に秘めた桜色の小陰唇を覗かせかけている。 少女の指が性器を大きく割り開く度に、淫猥なシャッターチャンスが訪れる。  秘肉と指とがぬるぬると濡れ光り、可憐な乳房を収めたその手は、ついに自らの乳首を 摘み取り、ひねってしまった。少女は切な気な声を上げ、白い喉を男に見せる。  そうした様をファインダー越しに接写し、引いては全体を写す。その中で、男はペニス が烈しく屹立するのをこらえていた。限界は、遠くなかった。少女に触れ、その肉を感じ たい。それを思う様、屠り味わい尽くしたかった。   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   * 「…君の恥ずかしい場所を、もっと見せて欲しいな」  オナニーに夢中になりつつある中で、男の声が聞こえた。  とまりには、それは少し震えて届いたような気がした。  性に痺れて、初めての気をやりかける寸前だったとまりは、男の手が両膝に掛かったの を知って、性器をまさぐる指を、乳房を揉みほぐす手を止めた。 「ぁうぅぅ………」  快感の中断をこらえるとまりの膝裏に手を回し、男はその脚を抱えるように持ち上げた。  腰から折り曲げられる形になって、ベッドに仰向けにされる。脚の間に男が上半身を割 り込ませていた。  大きく広げられた股間が、男の顔のすぐ前に晒されている。剥き出しの性器に男の息が かかり、消えかけていた羞恥心がとまりを染めた。 「いやっ…!やめて、お願い……!」  ヘアバンドで隠した視界を、顔を両手で覆い、脚を伸ばして股間を閉じようと抵抗する。  しかし、男の手はとまりの膝裏をつかんだまま、強い力でとまりの動きを押さえ込んだ。 有無を言わせない、低い声が耳元で響いた。 「自分で脚を抱えるんだ…」  男は呟くと、とまりの手を引き剥がす。ほら、と仰向けになって膝裏から脚を抱え込ま せようと促がした。目の見えないとまりにとって、男の声色の変化が怖かった。そして、 とまりは男の指示に従うしかないのだ。恐る恐る脚を抱えると、男は手を離してとまりへ 緊縛を解いた。男の上半身は、とまりの抱え開いた脚の中のままである。  とまりのお尻はベッドから浮き、M字に開かれた股間は、そのすべてを男の前にさらけ 出しているはずだった。ふと男の頭が、性器の間近まで動いた。陰唇に息が届いていた。  とまりは恥ずかしさのあまり泣きそうになった。 「……中を、開くからね?」  無慈悲な言葉が聞こえた。無論、とまりの秘部を男の指が割り開くという事だろう。 「……やめて」  涙声で呟いても、とまりは無力だ。男との契約は絶対であった。観念して男の好きにさ れる他はなかった。  男の親指だろう指先が、とまりの性器に触れた。ふたつの指先が、とまり自身が溢れさ せた愛液ですでに濡れている大陰唇にかかる。覚悟していても、見えない怯えがひくりと、 媚肉を蠢かせてしまう。男は指の腹で、ふっくらとやわらかな肉をなぞり、ふにふにとし た感触を愉しんでいる。つっ、とその割れ目をなで上げ、肉に纏った粘液をぬぐうとくいっ と肉厚の大陰唇を開いてしまった。 「あぅっ……!?」  とまりは、女の部分が初めて外気に曝されるのを感じた。  剥かれ、露わになった小陰唇は、つつましやかに濡れ光っている。桜色のそれはほぼ左 右対称で、小振りの合せ貝のようだった。小陰唇自体は指先の刺激でもう開き切っている。 膣前庭は剥き出しになって、しっとりと濡れぼそっていた。とまりが身をよじるたびに淫 猥にひくつく。クリトリスを護る包皮も、ほとびて緩み、中身を外に覗かせてしまってい る。小さなあずきほどのクリトリスは、オナニーのせいで少し充血したように赤くふくら みつつあった。愛液にまみれ、どの部分も次なる刺激を求めて紅く上気していた。  男が息を呑んで、そんなとまりの性器を見つめている。視線が、そこに凝縮されている のが分かる。  他人に、異性に自分の性器を広げられ、すべてを観察される恥辱に、とまりは涙腺が熱 くなるのを感じた。じわりと涙が溢れ出し、ヘアバンドを熱く濡らしていく。呼気が嗚咽 に変わっていた。  初めての性行為だった。  初めての時は…と、少女らしい甘やかな夢想を、とまりも抱いていた。  自分で選んで決めたのに、悲しくて涙が止まらなかった。 ――はずむのせいだから……  背を向けた、はずむの姿が浮かんだ。 ――あたしの初めてがこんな風なのは、はずむのせいだから……  初めて会った男に、誰にも見せた事のない女の秘所を晒し、いいように恥ずかしい姿を 見られている。自分が望んだ事であっても、耐えがたい恥辱であった。  そしてこのあとには、処女の喪失という儀式が待っている。  知らない男のペニスに、とまりは純潔を踏みにじられるのだった。  それが現実だった。その現実を生々しく感じ、心が暗闇に落ち込んでいく。それはすで に決められたさだめなのだった。  生まれた時から、はずむに会う前から、はずむの事を好きだと気付くまえから、決まっ ていた事なのだと思うと、涙が溢れてどうしようもなかった。  涙で濡れたヘアバンドは不快だったが、それすらとまりにはどうにもできなかった。  しゃくり上げるとまりを無視するように、男はとまりの充血した秘部を弄い、嬲った。  ちゅっ…ちゅぷっ、と粘液が音を立てる。  小陰唇の襞をふたつの指先でつまみ、こすり上げる。包皮を剥き上げ、クリトリスをタッ プする。指の腹でそれらを円状になぞられ、ぬめる肉襞を指でもてあそばれる度に、望ま ぬ快感がとまりを焦がした。とめどない刺激が腰椎から背筋を灼いていく。性器の奥が熱 い。脳髄が蕩けていく。 「ひっ、うっ……うぇっ……、い……ひぁっ………あぁっ………」   自分が白く消えていくのが悲しくて、とまりは泣いた。  男は、止めない。  片手が肉襞を広げ、空いたもう片方の手指を使い、とまりの性器を解剖している。  他人の指が、敏感な肉を、粘膜をなぶっている。自分の指先より大きいそれが幾本も、 くにくにと縦横を蠢く。ぬるついた左右の小陰唇のそれぞれが、同時に親指と人差指の腹 でこすられ、捻られる。クリトリスは包皮ごと指に挟まれ左右からくにくにと揉みほぐさ れた。露出した小振りな豆を、たっぷりと愛液を絡ませた指先がちろちろと弄い嬲られる。 「い、んあぁ、ひっ!あっあぁっ……」  オナニーでは感じられない感覚だった。男の指は何本あるのだろうか。何本もの指が触 手のように性器を這い、それぞれが違う性感部を強く弱く深く浅く、弄りつくしていく。 とまりは下腹の奥は熱くたぎらされていた。そこは次なる快感を求めてもどかしく、送り 込まれる刺激を受け切れずに腰から爪先への引き攣るような緊張を送り返した。  このまま、性の快感とともに、掻き壊されてしまうのではないかという恐ろしさが生ま れてくる。 「い、やぁ……こわ、い……、ぃやだぁ……こわい、の………」   そんなとまりの媚態を、とまりの淫らに口を開いた性器を、とまりの見えない泣き顔を、 その一部始終を、男は陵辱の手を空けてはデジタルカメラに収めていく。  とまりの喘ぎとすすり泣きが、そして乾いた撮影の音が部屋に響いていた。

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