6月30日

 外では雨が降っていた。
 こういう日は憂鬱な気分になってイヤだ。
 早く夕鈴ちゃんの顔が見たい。
 少しでも夕鈴ちゃんの傍を離れると、寂しい気持ちになる。
 幸い、夕鈴ちゃんは今ぐっすり眠っている。
 ボクもちゃんとご飯を食べないと生きてけないから。
「ねえ、最近二階が騒がしいようだけど……どうしたの?」
 母さんが台所から心配そうにボクを見た。
「うっせーぞババァ!!ちょっとテレビの音量を高くしちまっただけだ!!」
「そ、そう……あんまり近所迷惑になるようなことしちゃ駄目よ……」
「わかってるよ!さっさと仕事行けよ!!」
 ボクが怒鳴ると、母さんの声は聞えなくなった。
 幸いにも夕鈴ちゃんの存在は気付かれなかったようだ。
 まったく……役立たずは早くこの家でてよ。
 やり場の無い怒りが込み上げてくる。
 ちなみに父さんはいない。
 4年前に他界してしまった。
 だから今はこの家に母さんと二人暮らしだ。
 母さんのせいで、なんだかご飯がおいしくなくなってしまった。
「ごちそうさま!」
 ボクは箸をテーブルのうえにおくと夕鈴ちゃんの様子を見に自分の部屋へと戻っていった。
「ごめんよ……君を一人ぼっちにさせてしまって」
 安らかな寝息を立てている夕鈴ちゃんの寝顔を見ながら、ボクの心はだんだん癒されていった。


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