夕鈴ちゃんの様子が少しおかしい。
妙にそわそわしているような、そんな感じがする。
「どうしたの?」
気になったボクは、勇気を出して彼女に聞いてみた。
「別に怖がることないよ。ボクにできることだったら力になってあげるから」
ボクは優しく微笑みながら彼女に言った。
「あ、あの、トイレにいかせてほしいんですけど……」
彼女は恥ずかしそうにしながら、静かに呟いた。
「なぁんだ。そんなことか」
ボクは頷くと、バケツを持ってきて夕鈴ちゃんに渡した。
何故か夕鈴ちゃんの表情が強張る。
「どうしたの?ほら、トイレだよ」
「こんなのトイレじゃありません!ちゃんとした、トイレにいかせてください!」
「ふざけんじゃねー!!」
バシッ!!
ボクは夕鈴ちゃんの頬を力いっぱい叩いた。
「それを口実に逃げようとしてんのはわかってんだよ!!おとなしく、それで我慢しろ!!」
「うっうっ……」
夕鈴ちゃんの口元から低い嗚咽が漏れる。
「ちゃんと付きっきりで見ててあげるから、安心して用をたしていいよ」
「いえ、結構です……」
「なんで?……あっ、そうか。ボクが見てたら恥ずかしいもんね。ちょっと待ってて」
ボクはタンスの中から巻き型のタオルを取り出して夕鈴ちゃんに渡した。
これを使えばスカートのようになって下半身が隠れるから、夕鈴ちゃんも安心して用を足せるはず。
夕鈴ちゃんは泣きながらそのバケツにかがみこんで、用を足した。
ジョーっと言う大きな音とともに独特のアンモニア臭が部屋の中に充満していく。
「少しは楽になった?」
「………………」
ボクの問いかけに夕鈴ちゃんは無言のまま立ちあがると、巻きタオルはずして力いっぱい投げつけた。
「なぁんだ。まだまだ元気なんだね。安心したよ」
ボクはニッコリ笑うとバケツを持って部屋を出た。
もちろん、部屋の鍵をかけるのも忘れなかった。