深夜に夕鈴ちゃんが目を覚ました。
そしてボクの顔を見るなり悲鳴を上げた。
「ひ、人殺し!!誰か助けてっ!!」
「だ、ダメだよ。今は夜なんだから、騒いだら近所迷惑だよっ」
「だ、誰か助けて!!」
「うるさい!!」
バシッ!!
夕鈴ちゃんがあまりにもさわいだのでボクは思わず彼女の頬を叩いてしまった。
赤くはれた頬に手をあてながら潤んだ瞳でボクを見つめている。
「まったく……深夜なんだから、近所迷惑になるようなことしちゃダメだよ。それにこの部屋は防音対策をきちんと施してあるから、いくら騒いでも無駄だよ」
「わ、私を……」
「ん?」
「私を……どうするつもりですか……?」
夕鈴ちゃんはひどくおびえた目でボクを見た。
ボクは苦笑いをしながら夕鈴ちゃんに優しく言った。
「別にどうもしないよ。ただボクは夕鈴ちゃんを守ってあげたいだけなんだ」
「ど、どうして私の名前を!?」
「そりゃ生徒手帳を見たからね。夕鈴ちゃんなんて君にぴったりの名前じゃないか」
「…………」
「どうしたの?」
「…………」
夕鈴ちゃんは無言のまま俯いてしまった。
ボク……何か悪いことしたかな?
結局夕鈴ちゃんはこの後、一言も口を開いてくれなかった。