6月27日

 日付が変わった直後、少女が目を覚ました。
 最初は辺りをキョロキョロしていたけど、目張りされている窓、見慣れぬ殺風景な部屋、そしてボクの顔を見ると途端にひどくおびえた表情に変わった。
 どうしたんだろ?ボクの顔に何かついてるのかな?
「気がついた?ここはボクの部屋だよ」
 ボクは少女に優しく声をかけた。
 でも、彼女は目に涙を浮かべながらこう言った。
「わ、私に何をするつもりですか!?家に帰してください!!」
 ボクはその少女の意外な行動に心が傷ついた。
 君のためを思ってやったことなのに……
 君のことが好きだから守ってあげたかったのに……
 ボクは咄嗟に少女に催眠スプレーを噴射した。
「きゃっ!?」
 少女は小さな悲鳴を上げながら、そのまま深い眠りに落ちていった。
 ボクは少女が眠ったのを確認すると彼女の持ち物を調べた。
 通学カバンの中には教科書、ノートにまじって学生証が入っていた。
 『清蘭学園2年A組沢音夕鈴(さわねゆうすず)』
 そこにはにっこりと微笑んだ少女の写真が貼られていた。
 夕鈴ちゃんっていうのか……カワイイ名前だなぁ……
 ボクは1日中、夕鈴ちゃんの寝顔を見ていた。
 このまま夕鈴ちゃんの寝顔を見ていたかったので、目を覚ますたびにクロロホルムを嗅がせた。


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