「あの、このベッドに横になればいいのでしょうか?」
「そうそう。聞き分けのいい娘だね」
「あ、あの……」
「なんだい?」
「ホントに、その……注射、するんですか?」
「もちろんだよ。さっ、はやく」
「は、はい……」
 一度は覚悟は決めたんです。
 おとなしく観念するしかありません。
 ……とは思っても、やっぱり恐いものは恐いです。
 う〜……
 注射、したくありません……
 ……って、駄々をこねてもしかたありませんね。
 はぁ……
 おとなしくスカートとショーツ、それにソックスを脱ぐことにいたしましょう。
 まさかこの部屋に入ったと同時に「それじゃあ、下に身につけてるもの全部脱いじゃってね」なんて言われるとは、思ってもみませんでした。
 もちろん「えっ!?ぬ、脱ぐんですか?」って尋ねましたよ。
 そうしたら先生、「注射できないから」なんていうんですもの。
 わたしも迂闊でした。てっきり腕にすると思ってたら、まさかお尻にする注射だったなんて……
 想像しただけでも、とっても痛そうです。
 どうやら相当覚悟をしなければならないようです。
 はぁ……憂鬱です……
 ……っと。早く脱いじゃいましょう。
 ぬぎぬぎ。
 畳んで籠の中に入れて……っと。
「せ、先生、これでよろしいでしょうか?」
「うん。それじゃあ、仰向けになってベッドに寝て」
「え?仰向け、ですか?」
「うん。それがなにか?」
「い、いえ、別に……」
 これは一体どういうことでしょう?お尻に注射をするのであればうつぶせになるはずですよね?
 とりあえず先生の言われた通り仰向けに寝て……
 ちらっ。
 先生、わたしの体をじっとみています。
 どこかおかしな所でもあるのでしょうか?
 それにしても……こんな恥ずかしい格好、絶対に人前じゃ出来ないです。
 下に何も身につけてないなんていう、とってもはしたない格好……
 ここが病院で助かりました。
「うわっ……これは酷いな……」
「えっ!?何が酷いんですか!?」
「玲奈ちゃんの風邪の感染源がわかったよ」
「ホ、ホントですか!?」
 一目見ただけで感染源がわかるなんて、さすがお医者さんです。
「それで、どこ、なんですか?」
「それはね、ここだよ」
「えっ!?あっ……」
 お医者さんが触ったところ、そこは昨日の居残り補習で先生が触ったところです。
「いやぁ、ココがすっごく汚くなってるから、間違いないよ」
「そ、そんな!わたし、昨日ちゃんとお風呂に入ってキレイに洗いました!!」
「あっ、いや、そういう汚いって言う意味じゃないんだ。ココに雑菌が侵入して少し腫れてるんだ」
「そ、そうなんですか?」
「ああ。ほら、ココをこんな風に触られると、変な気分になるでしょ?」
 ぷにぷに
「あっ……」
 先生の冷たい指先がその場所に触れるだけで変な気分になってきます……
 お願い、そんなところ触らないで……
「どう?」
「は、はい……変な気持ちになります……」
「でしょ?だから、ちゃんと消毒しなくっちゃね」
「よ、よろしくお願いします……」
「うん。それじゃあ、準備するからちょっとまっててね」
 先生はいそいそと準備を始めます。
 それにしても……
 どうして突然あんな気分になったのでしょう……
 あんなことされて気持ちいいはずないのに……
 わたし、少しおかしいのかもしれません。
 後でこのことも先生に相談してみた方がいいのかもしれませんね。
「お待たせ。それじゃあ始めるよ」
「は、はい」
 ペタペタペタ。
 先生は短太の筆のようなもので石鹸をたっぷりとわたしの股に塗っていきます。
 なんだかすごくくすぐったいです。
「それじゃあ、これから患部を剃り落とすから、ちょっとじっとしててね。動くと危ないよ」
「は、はい」
 ジョリジョリジョリ
 カミソリの音が体を伝わって静かに聞えてきます。
「せ、先生……怖いです……」
「怖くっても我慢するんだ。痛い思いをするのは、玲奈ちゃんなんだから」
「は、はい」
 ジョリジョリジョリ
 とっても怖くって、動くに動けません。
「ほーら、だんだんキレイになってく。ダメだよ玲奈ちゃん。もっと健康には気をつけなくっちゃ」
「ご、ごめんなさい……」
 やはり原因はわたしにあるのですね。
 シュン……
「はい、終わったよ」
「ほ、本当ですか?」
「うん、とってもきれいになったし、膿も出てきたみたいだしさ」
「えっ!?」
 先生の指には、確かに白っぽいものが付着しています。
「玲奈ちゃん、感じやすいのかな?もうこんなに濡らしちゃって」
「あ、あの、せんせ……きゃ!!」
 侵入してきた先生の指に、思わず小さな悲鳴を上げてしまいます。
「ダメだよ。悲鳴なんかあげちゃ」
「ご、ごめんなさい……でも……」
「ほら、今度は、患部に溜まった膿を出さないと」
「は、はい……」
 先生の指先は、その答えを待っていたかのように激しく動き出します。
「ああっ……あああっ……」
 なんだか変な気分。
 またおかしくなってしまいそうです。
「凄い凄い。玲奈ちゃん、とってもキツイよ」
「う、膿は、でてこないんですか……?」
「慌てない慌てない。もう少しマッサージしてあげないと」
「は……はぁん……」
「大分緊張がほぐれてきたようだね。そんなに気持ちいいのかい?」
「はぁ……はぁ……はい……とっても気持ち……いい……です……」
「だろうね。ちゃんと顔に書いてあるから」
「そ、そんな……ああっ……」
「ほら、たっぷりと白い膿が出てきたよ」
「あっ……あぁ……ああん……」
 どうしてでしょう。
 先生の指が動く度にどんどん気持ちよくなって……
 まるで天にでも昇ったような、とっても気持ちいい気分です。
「これくらい膿を出しちゃえばいっかな?」
「え……?……あっ……」
 先生はためらうことなく指を抜き取ります。
 うー……もっとやってほしかったのに……
 ちょっとガッカリ。
 ……って、わたしは一体、何を言ってるのでしょうか……
 やっぱりこの頃のわたし、なんだか変です。
 あれ?先生……なにをやってるんでしょうか?
「せ、先生?あっ……」
 ぬりぬり
 先生はわたしになにかの薬を塗っています。
 そのせいか、だんだんと体が熱くなってきます。
 気分もなんか変……
「はぁ……はぁ……先生、何を塗ってらっしゃるんですか……?」
「ただの化膿止めだよ。それがどうかしたの?」
「な、なんだか体中が熱くなってきたような気がするので……」
「ああ、それは副作用だよ。気にしない」
「は、はい……」
 そうは言ったものの、ますますおかしな気分になっていきます。
 でも副作用なんですから、我慢しないと。
「それじゃあ、注射しよっか」
「は、はい……」
 いよいよです。これでわたしの風邪もよくなるはずです。
 ……あれ?
 先生は突然、ズボンを脱ぎ始めました。
「せ、先生?何をなさってるんですか……」
「何をって……もちろん、注射の準備だよ?」
 先生はそう言うと、すっごく大きくたってる自分のおチンチンを手に取りました。
「ひょっとして、このタイプの注射って初めて?」
「は、はい……」
「なぁんだ。心配しなくっても大丈夫。最初にチクッとするだけだから」
「で、でも……」
「これはちゃんと医学的に証明されてることだから。風邪にはこの注射が一番の特効薬なんだから」
「そう、なんですか?」
「うん。だから安心して」
「わ、わかりました」
 先生がそうおっしゃるのなら信じることにいたしましょう。
 お医者さんのいうことは絶対ですものね。
 でも……あんなにおっきくて太いものをどうやって注射するんでしょうか?
 なんだか怖いです。
「それじゃあ、注射するから四つん這いになって」
「え?どうしてですか?」
「その方が注射しやすいからさ」
「わ。わかりました」
 とりあえず言われたとおりに四つんばいの態勢になって……と。
 うー……
 どんどんドキドキしてきました。
「それじゃあ、注射するよ?」
「は、はい」
 いよいよです。
 少しでも痛みが和らぐように、歯を食いしばって目をギュッと瞑らないと。
「!!」
 ズブブ!
 なにかがわたしの中に勢いよく入ってきました。
 まるで針で突っつかれたように激痛が走ります。
「ひぎぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!」
「ほら、もっと力を抜いて」
「くぅぅぅぅぅぅぅっ!!」
 先生は失敗しているのか、何度も入れたり出したりしています。
 その度に走るあまりの激痛に、思わず涙をながしています。
 ものすごく、痛いです。
「いいよ玲奈ちゃん!とっても凄いよ!!」
「うううううううっ!!」
「ほらっ!我慢我慢!!」
「あぐううううううううっ!!」
 先生の両手はしっかりとわたしの腰を抱きかかえています。
 わたしはシーツをわしづかみにして必死に痛みにたえます。
 悲鳴なんてはずかしくってあげられません。
 これを我慢すれば風邪を治すことができるんです。
 がんばれ、わたし!
 でも、首を左右に振ってみても、痛みは治まるどころか酷くなるばかりです。
 一体いつになったら終わるのでしょう。
 も、もう我慢の限界です!
 そして……
 どぴゅ!!
 何かがわたしのお腹の中に勢いよく注がれました。
 とても温かいものです。
「…………」
 終わった……
 わたしはそう、実感しました。
「ヒック、ヒック……」
 涙が止まりません。
「痛かったかい?」
「…………」
 ヒック、ヒック……
 とても痛かったので、正直にコクンと首を縦にふります。
「ごめんね。でももう大丈夫だよ。ちゃんとたっぷりお薬を注射しといたから」
「……本当、ですか……?」
「本当だとも。よく頑張ったね」
「はい……」
「とりあえず、1週間分のお薬出しておくから。あっ、お風呂は今日からはいっても大丈夫だからね」
「わ、わかりました……」
 よかった……これで元気になれます……
 いっぱいいっぱい痛い思いを我慢した甲斐がありました。
 まだ注射をされたところが痛みますが、風邪が治ることを考えればへっちゃらです。


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