今日は週に一度のアルバイトの日です。
わたしにとっては数少ない貴重な収入源なので、しっかり働かなければなりません。
昨日病院に行ってきたおかげでとっても元気になりました。やっぱりお注射ってとってもきくんですね。でも、なるべく病気にならないように心がけないと。治療費もバカになりませんしね。
アルバイトの内容はと言うと、簡単なことで、半日メイドをすればいいんです。
わたしのおつかえしているお屋敷は高千穂(たかちほ)家。なんと、要ちゃんのお家だったりします。
やっぱり持つべきものは友達ですよね。こんなステキなお仕事紹介してくださった要ちゃんに、感謝感激です。
……っと、そろそろお料理のお皿を下げる時間ですね。
どこも変なところはないかチェックして……っと。
「なにやってるの?玲奈」
「えっ!?あ、要ちゃん」
「あっ、じゃないわよ。まったく、鏡見てボーっとしてるなんて……」
そ、そんな溜息つかなくってもいいじゃないですか。ご主人様の前にみっともない格好で出るわけにはいきませんし。
あれ?そういえば要ちゃん、わたしと同じメイド服を着ています。どうしたんでしょう?
「あの、要ちゃん?その格好は……」
「ああ、この格好?玲奈とお揃いよ。どう?似合うかしら?」
「はい、とってもお似合いです」
やっぱり要ちゃんは美人です。わたしなんかと違って何を着てもとってもよく似合います。
「ありがと。そう言う玲奈もとってもよく似合ってるわよ」
「ホ、ホントですか?なんだか恥ずかしいです」
「恥ずかしがるコトないじゃない。玲奈は少し、謙虚すぎるのよ」
「わたしが、ですか?そそそそ、そんなことないです!!」
「もー……もっと自分に自信を持ちなさい」
「は、はい……」
「クスッ。ほら、はやく行かないと怒られちゃうわよ?」
「あ、そ、そうでした!それじゃあ要ちゃん、また後で」
「はいはい。行ってらっしゃい」
いけないいけない。もう少しで自分のお仕事を忘れるところでした。
アルバイトの身なんですから、しっかりと働かないといけませんよね。
コンコン
「失礼しまーす」
ご主人様は……っと。
よかった。どうやら。丁度お食事を終えられたところのようです。
あっ、ご主人様って言うのは要ちゃんのお父さんのことです。
とってもステキでダンディなおじさまで、優しいんです。
でも、要ちゃんの本当のお父さんじゃないらしいんですが。要ちゃんのお父さんは、要ちゃんがまだ小さかったころに交通事故でお亡くなりになったそうです。
時々、要ちゃんが寂しそうな表情を見せることがありますが、ひょっとしたら昔お父さんと遊んだことを思い出してるのかもしれませんね。
お父さん……お母さんと天国で仲良くしてるといいんですが……
わたしは元気にやってますから、天国からずっと見守り続けてくださいね。
「君か。お皿を片付けにきたのかね?」
「あっ、は、はい。もうそろそろお食事を終えられてるかと思いまして」
「うん……」
「あの、どうかしましたか?何かお気に召さなかった点でも?」
「いや、そんなことはないんだが、今日はもう一品、デザートを食べたい気分なんだ……」
「で、デザート、ですか!?」
どどど、どうしましょう!!デザートなんて作ってませんでした!!
う〜……困りましたです。
「あの、今から作るとなると、ちょっとお時間がかかるのですが……」
「ああ、その心配ならいらないよ」
「え?」
心配いらないって……どーゆーことでしょうか?
あれ?ご主人様、わたしの肩に手をのせたりして……どうしたんでしょう?
「あの……ご主人様?」
「心配はいらないよ。私が食べたいのは……玲奈、君だから」
ビリビリビリ!
突然ご主人様はわたしの服を破きます。
「きゃー!!」
わたしは慌ててご主人様を突き飛ばし、胸元を手で必死に隠します。
「どうしたんだ?君はメイドだろ?メイドだったら、素直に主人の言うことを聞き給え」
「そ、そんなことおっしゃられても……!」
どどど、どうしましょう!
大変なことになってしまいました。
「どうしたの?」
「あ、要ちゃん!!」
「お義父様、それに玲奈……一体どうしたの!?」
「なんでもない!!」
ご主人様は要ちゃんの姿を見るなり、不機嫌に部屋を出ていってしまいました。
な、なんとか助かったみたいです……
「玲奈……」
「うわ〜〜〜ん!!要ちゃ〜〜〜〜ん!!」
思わずわたしは要ちゃんに抱き着いて泣き出してしまいます。
「玲奈……とりあえず、わたしの部屋に行きましょ?ね?」
「ぐすっ……うん……」
コクン
わたしは力なく頷きます。
突然ご主人様があんなことしてくるなんて……
お気に入りのお洋服がビリビリです。
せっかく要ちゃんとのお揃いだったのに……
とってもショックです。
凄くいい人だって信じてたのに、あんなことなさるなんて……