コホコホッ。
朝から咳が止まりません。
なんだか体がとってもだるいです。
う〜……
どうやら風邪をひいてしまったようです。
元気なことだけがわたしの取り柄なのに。
はぁ〜……コホコホッ。
う〜……とっても辛いです。
今日もちゃんと学校に行くはずでしたが、我慢できなくって途中で進路を変えて病院にきてしまいました。
ホントは学校が終わってからお医者さんに行こうと思ってたのに……
なんだか情けないです。
なるべく学校は休まないようにしようって心に誓ってたのに……
はぁ……
やはり昨日、先生に言われたとおり風邪に気をつけるべきでした。
早く家に帰ったまではよかったのですが、うっかり手を洗うこととうがいをすることを忘れてしまったのです。
これでは風邪をひいてもしかたありません。
これからは、もっと人のいう事をちゃんと聞くようにしないといけません。
それにしても……
病院って、独特の雰囲気もってますよね。
どこにいっても消毒液のいい匂いがしますし。
わたし、この匂いが大好きです。
「姫宮さん。姫宮玲奈さん。どうぞ中におはいりください」
あっ、どうやらわたしの番がやってきたようです。
診察室に入るのって、なんだかドキドキしますよね。
優しい先生だと嬉しいんですけど……
「あ、あの、よろしくお願いします」
「はい、そこに座って」
眼鏡をかけた優しそうな先生です。
よかったです。ちょっぴり安心しました。
「今日はどうかしましたか?」
「はい。なんだか体がだるくって、頭がボーっとして、咳が止まらないんです」
「ふむ。とりあえず、服まくって」
「は、はい」
ブレザーを脱いで、ブラウスのボタンを外して……
うー……制服ではなく、もっと診察されやすい服を着てくればよかったです。
「はい、それじゃ楽にして」
「は、はい」
ポンポンポン
先生は聴診器をリズムよくわたしの体にあてます。
「それじゃ、今度は後ろ向いて」
「は、はい」
ポンポンポン
体がほてっているせいでしょうか。
聴診器のひんやり感がとても気持ちよく感じられます。
「はい、もういいよ。それじゃあ、今度は口を大きく開けて」
「あーーー」
「はい、もういいよ」
先生は診察を終えると、カルテに何か書き始めます。
診察結果は一体どうだったのでしょうか?
「うーん」
「あ、あの、どうでしょうか?」
「風邪だね。駄目だよ?ちゃんと手洗いうがいしなくっちゃ」
「す、すみません……」
「まぁ、かかっちゃったもんはしかたないから。とりあえず、注射の一本でも打っておくかな?」
「ちゅ、注射、ですか!?」
ガ、ガガーーーーーーーーーーーーン!!
つ、ついに怖れていたことが実現してしまったのです。
わたし、注射だけはキライなんです。
チクッとしてとっても痛いし、気分は悪くなるし、あんなの人間がするものとは思えません。
はぁ……自業自得とはいえ、あまりにも残酷な現実です。
まさか注射を打たなければならないほど酷い病状だったなんて……
少しも気がつきませんでした。
余計に具合が悪くなってきたような気がします……
「どうかしたの?」
「あ、あの、どうしても注射しなければいけないんですか?」
「うん。早く治すためにはこれが一番だよ」
うー……
どうしましょう……
注射だけは絶対にしたくないです……
「心配しなくっても大丈夫だよ。イヤならやらないから。ただその場合、その苦しい症状が長引くかもしれないけど」
「うー……」
困りました。
注射をしないとこの状態がしばらく続くことになりそうです。
それではしばらく学校休むことになってしまいます。
痛いのはイヤですけど、学校休むのはもっとイヤです。
どうやら覚悟を決めるしかないようです。
「……あの、注射、お願いします……」
「いいんだね?ちょっと痛いけど」
「は、はい。早く治すためです」
「……わかった。それじゃ、隣の部屋に移動しよっか」
「え?隣の部屋、ですか?」
「うん。となりの部屋のほうが、色々と設備整ってるから。とりあえず、服着ちゃって」
「は、はい。わかりました」
う〜……
だんだん緊張してきました。
どうか、痛くない注射でありますように。