電車に揺られること10分。
 中央桜ヶ丘センター駅で降りた俺達は、そのまま「桜ヶ丘メルヘンワールド」へとやってきた。
 好天に恵まれ、また、休日ということもあり、早くも長蛇の列ができている。
「やっと着いたね」
「そうだな……」
 嬉しそうにはしゃぐ恵理子だが、俺は早くもげんなり状態だ。
 開園までまだ30分以上もあり、人の流れが停滞している。
 この様子だと最低でも1時間待ちを覚悟しなければならず、それを考えただけで気が重い。
「はぁ……これからずっと待たなくちゃいけないのか……」
「大丈夫だよ。すぐに入れるから」
「そうだといいんだけどなぁ……」
「……………………」
 途端に恵理子は黙りこくって、表情が暗く沈んだものになる。
 そして呟くように、俺に尋ねてきた。
「ねぇ……先輩……」
「なんだ?」
「あたしと一緒じゃ……つまらない?」
「はぁ?」
「だって……先輩、すっごくつまらなそうなんだもん……」
「あ、いや、その……つまらなくはないんだが、こーゆーのに並ぶのは苦手で……」
「はい、減点1」
 すぐさま恵理子チェックが入る。
 そして恵理子は不機嫌そうに頬を膨らませた。
「ダメじゃない先輩!そーゆー時は、気の利いた言葉を言わなくちゃ。先輩ってば、全然女心がわかってないんだから」
「いやぁ、そう言われても……」
「口答え厳禁!それじゃあ、やりなおし!!」
 恵理子は再び黙りこくって、表情が暗く沈んだものになる。
 そしておずおずと口を開いた。
「ねぇ……先輩……あたしと一緒じゃつまらない?先輩ってば、なんだかとってもつまらなそう……」
「…………」
 同じことを答えれば、延々と同じことを繰り返しさせられるんだろうなぁ……
 それはそれで、コロコロ変わる恵理子の表情を見ることができて面白いかもしれないが。
 とりあえず、ここは恵理子に合わせることにするか。
「バカだなぁ」
 俺は恵理子の頭にポンと手を置く。
「えっ?」
 恵理子は驚いたように俺を見た。
「いいか?つまらないんだったら、お前を誘ったりしないよ」
「……ホントに?」
「本当だって」
 俺は恵理子の頭を優しくなでる。
「…………」
「うー……先輩、あたしのこと子供扱いしてるでしょ?」
「してないしてない」
「嘘だもん……絶対に……」
 恵理子はそのまましおらしい態度をとり続ける。
 やがて俺が撫でるのをやめると、上目遣いに俺を見ながら、おずおずと口を開いた。
「え、えっと……今のはポイント高かったかな?あ、でもあたしのこと子供扱いしたから、減点5ってことで」
「なんだよそれ!?」
「あ、でもでも、やっぱり、好感度ちょっとだけアップ、かな?」
 恵理子はえへへと笑う。
 やっぱり、いつもの恵理子と違う気がする。
 なんか調子狂うなぁ……
 そんなこんなで、俺は恵理子と、開園まで話し続ける羽目になった。


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