俺と恵理子がホームについてからほどなく、アナウンスが流れ電車が入ってきた。
駅のホームはほどほどに混雑している。
電車が止まるとドアが開き、乗客の乗降車によって人の波ができた。
俺達は混雑を避けるため、電車の最後尾車両に乗り込んだ。
発車合図の音楽が鳴り渡り、ドアが閉まる。
そして電車はゆっくりゆっくりと動き始めた。
「結構混んでるね。休日だから、なのかな?」
「通勤ラッシュに比べたらまだマシなんじゃねえの?」
俺はそう答えて、車内を見回した。
最後尾車両ということで比較的空いていたが、それでもロングシートの座席は埋まっており、座れそうな場所は見当たらない。
「ま、どうせ10分くらいで着くんだから、少しくらい我慢だな」
「うん、そうだね」
俺の言葉に、恵理子は軽く頷く。
「ところで先輩、ちゃんと今日のデートコース考えといてくれた?」
「えっ?まぁ、一応は……」
「なんだか頼りない答えだなぁ……」
恵理子はため息をつく。
へいへい。どーせ俺は頼りない男ですよ。
「ねぇ、それならリクエストがあるんだけど」
「リクエスト?」
「うん。観覧車を一番最後にしてほしいなぁ……って」
「ああ、それなら最初からそうしよう決めてたから」
「へぇ……そうなんだ」
恵理子は意味深な笑顔を浮かべる。
「好感度ちょっとだけアップ、かな?」
「なんだよそれは……」
「えへへ……ナイショ」
恵理子の言葉に、俺は何かしらの陰謀を感じずにはいられなかった。