「ねぇ、さっきの話、どう思う?」
コロッケを口に運びながら、ニーナがこうきりだしてきた。
「そうですね……その話が本当なら、許すわけにはいきませんけど……」
スパゲティを食べている百合が、静かに頷く。
楽しい夕食のはずが、少し重い雰囲気に包まれている。
「だよねぇ……でもなんだかショックだわ。魔法だと思っていたのが実は手品で、しかもそれが悪用されてるなんて……とんだ『神の手』だわ。あーあ、幻滅」
「落ちこむのはわかりますけど……元気だしてください」
「やっぱり……成敗するしかないわね」
ニーナは箸を置くと、静かにそう言った。
「成敗って……まだ確定したわけじゃないんですよ?」
「そうだけど……あの男の言ってた事、あたしには嘘言ってるようには思えなかったんだよね」
「それは私も同じですけど……」
「それに、次の被害者は百合ちゃんや通になるかもしれないのよ?最悪のデートにしたくないでしょ?」
「で、でも……」
「百合ちゃんが消失マジックにかけられて拉致されて、あの男にあんなことやこんなことされることを想像しただけであたし……」
「そ、そんなこと想像しないでください!!」
百合もたまらずタンとテーブルを叩いてニーナを睨む。
「だから、やっぱりそうならないためにも成敗しなくっちゃ。と言うわけで予告状を……」
「書かなくて結構です」
「ええ?なんでぇ??」
百合の言葉にニーナは非難の声をあげた。
「怪盗に予告状はつきものなのにぃ!!」
「それだけ警備が厳重になったり、三森ちゃんや通君が目を光らせたりして、私が大変ですから、絶対に出さないでください。もう予告状はコリゴリです」
「それはあたしがなんとかするからさぁ……」
「それでもだしたいと言うのでしたら、ニーナさんのご飯はネギ尽くしにしますけど、それでもいいですか?」
「ええっ!?そ、それは勘弁して!!あたしネギは大っ嫌いなんだから!!」
ニーナは両手で大きくバッテンを作った。
「わかったわよ。百合ちゃんがそこまでいうなら、もう予告状は出さないから」
ニーナは渋々そう言いながら再び箸を持ってコロッケを食べ始めた。
「でも、予告状の変わりに、今回はあたしにも手伝わせて貰うわよ」
「ニーナさんが??」
「もっちろん!!あたしだって元、怪盗だからね」
ニーナはまかせろと言わんばかりにドンと自分の胸を叩いた。