「怪盗黒薔薇……また性懲りもなく予告状を送って来るなんて……ふっふっふっ……」
三森は悔しそうにそう呟きながらも、顔は笑っていた。
待ちに待ったリベンジのチャンス。
あの時舐めさせられた辛酸の味を、彼女は決して忘れることはなかった。
「赤羽さん……大丈夫?」
横では心配になった通が三森を気遣う。
「ちょっと。人を変人みたいに言わないでくれる?失礼しちゃうわね」
「ご、ゴメン……」
三森に一喝された通は萎縮してしまった。
「まぁ、いいわ。まさか、わざわざ向こうから飛びこんできてくれるとはね。今度こそシャッターチャンスは物にして見せるわ!!」
「でも、なんでこんな昼間になんかきたの?今日は土曜日だからいいものを……」
「甘いわねぇ通君」
三森はため息をつきながら通を見た。
「いい?予告状が送られてきたってことは、必ず盗みに入るのよ?その現場をよく調べておかないでどうするのよ」
「そ、それはそうだけど……でも、見たところ普通のビルのようだけど?」
「普通っていうのが1番恐いものなのよ。何も特徴がないから」
「そう言うものなのかなぁ?」
「そういうものなのよ」
三森と通はその予告状が送られた「山羊村食品」の所有している山羊村ビルへと向かった。
予告状が送られたというのに警察の警備がない。
聞いたところによると山羊村食品の方で警備は断わったと言うことであった。
つまり、何らかのやましいところがある。
三森はそう感じ取ったが、山羊村食品を餌に怪盗黒薔薇を捕まえ正体を暴いて、ついでに山羊村食品の悪事もすっぱ抜き悪を一網打尽にするという、漁夫の利作戦を練っていた。
しかし……
やはりと言うべきか、三森と通はビルに入ろうとしたものの、守衛に制止され門前払いをくらってしまったのである。
そのため二人は入口で作戦を練っていた。
「私はやっぱり中に入って調べて見る必要があると思うの」
「でも、さっきお願いしたけど駄目だったじゃないか」
「そうなのよねぇ……通君、何かいい案ない?」
「きゅ、急に言われても困るよ」
二人が入口付近でそんなことを話していると、オレンジ色の髪をツインテールにまとめ、サングラスをかけた女性がやってきた。どうやらどこかの雑誌記者らしく、その女性は守衛と二言三言かわすと、すんなりと中へ通された。
「いいなぁ……こーゆーときって、職業記者は羨ましいわ」
三森はその様子を恨めしく眺めていた。