沈黙を破って口を開いたのは、通であった。
「四阿……さん?どうして僕の部屋に……?」
「ええっ!?」
思いがけない言葉に、百合は立ち上がる。
(こここ、ここ、通君の部屋!?)
そして頬を赤らめて、手を口元に当てて自分が座っていたベッドを見た後、通を見る。
「え、え、っと、その、あの……」
必死に弁解しようとするが、言葉がうまく出てこない。
無言になり、モジモジしながら通を見る。
「あーっ!」
そこへ現れたのが、沙絢であった。
(さ、沙絢ちゃん!)
百合は救世主が来たとばかりに、沙絢を見る。
しかし沙絢は、百合の思いはお構いなしに、ニヤニヤしながら通と百合を見て、言葉を発した。
「お兄ちゃんが百合ちゃんを部屋に連れ込んでいけないことしようとしてるー!」
「なっ!!」
「えっ!?」
通と百合は同時に驚きの声を上げる。
「お兄ちゃんも隅に置けませんなぁ?えっ?このこのぉ」
そして沙絢は通を肘で小突く。
「沙絢!さてはお前の仕業だな!?」
通はこの事態の元凶を察し、沙絢を捕まえると、部屋の中へと連行した。
「一体どういうことだ!?何故四阿さんが、僕の部屋にいるんだ!?」
「え、えっとね、それはね……」
沙絢は上目遣いで通を見ると、ゆっくりと口を開いた。
「実は……」
沙絢は今回の事情説明を始める。
百合はそんな通と沙絢のやりとりを、固唾を飲んで見守っていた。