昇降口で靴を履き替え、教室へと向かったニーナは、自分の席へと迷うことなくたどり着くと、鞄を机にかけて腰掛けた。
そして鞄の中から古文の教科書を取り出す。
(テストは好きじゃないけど、百合ちゃんの顔に泥を塗るようなマネはできないからね。)
ニーナは教科書のページをめくった。
(古文好きじゃないんだけどなぁ……まぁ、我慢我慢)
ぺらぺらぺら、と、ページをめくっていく。
そこへ、通がやってきた。
「おはよう、四阿さん」
「おはようございます。通君」
ニーナは手を止めて、通を見て微笑む。
そのかわいらしさに通はドキッとしながら、話を続けた。
「珍しいね。四阿さんがテスト勉強してるなんて」
「そうかな?私だって勉強くらいするよ。それに……」
「それに?」
「今回のテストはちょっと特別だから、とだけ言っておくね」
不思議そうに尋ねる通に、ニーナは意味深な答えを返す。
通はまだ何かを聞きたそうにしていたが、古文教師の武士沢信二(ぶしざわしんじ)が教室に入ってきてしまったため、「それじゃあ、また後で」と言い残すと、自分の席へと戻っていった。
「起立!礼!着席!」
日直が号令をかける。
ニーナには懐かしくも新鮮な感じがした。
「それじゃあ、楽しい小テストを始めるぞー。机の上のものをしまえー」
武士沢はそう言って、テスト用紙をトントンと、教壇の上でそろえる。
ニーナは教科書を机の中にしまった。
(さあて、百合ちゃんのために頑張るかな!)
前から回ってきた小テスト用紙を後ろへと回す。
「全員受け取ったな?それじゃあ、はじめ!」
ニーナはシャープペンを手に取ると、配られた小テストを表にして、ペンを走らせた。