一度欲望を放ったせいなのか、アルベルトの瞳のぎらつきは多少なりをひそめ、代わりにマリアの痴態を吟味する色が浮かんでいた。蜜と吐精でぬるぬるになった狭隘から楔をゆっくりと抜き差しされ、涙に沈んでいたマリアの瞳に新しく熱い雫が生まれる。
いったん力を失った楔が、中でじわりと芯を取り戻すのに気づき、マリアはうろたえた。
まだ続ける気なのか。たった一度で、自分はこんなに身も心も打ち砕かれたのに。
「や、やだ……もう……」
「何が嫌なんだ?」
アルベルトはわざとらしくとぼけ、揺れるマリアの乳房を揉みしだく。
マリアは必死で男の肩を押しのけようとしたが、アルベルトに逆に手をつかまれ、指を絡めさせられた。そうして顔を寄せられ、彼の舌がマリアの唇を傷口にそうするように舐めた。
ゆったりとした律動は胎奥で澱んでいたものをかき出し、結合部をさらに穢していく。
その微妙な感覚と卑猥な水音をごまかすように、甘く唇をついばまれつづけた。
「ひぁ……ゃ……!」
執拗な蹂躙に蜜壷がひくりと震え、先ほどの快楽を思い出したがるように楔に吸いつく。
自分がアルベルトが硬さを取り戻す手伝いをしているという事実に追い詰められ、マリアは反抗すらできなくなって蹂躙された。
重ねた身体の間で火照る乳房が押し潰され、先端が彼の胸板であいまいに刺激される。
たっぷりとそそがれた吐精を、楔でどろどろとすりこむ淫猥な動き。
熱いものが内壁にしみこむ感覚のせいで、さっきよりも敏感になっていく気がする。
緊張を蕩かせるような穏やかな快楽に、力尽きたマリアの意識はずるずると引きずりこまれていく。蜜壷は新たな雫をあふれさせながら楔に媚びるように絡みついて、彼女を犯すアルベルトの笑みを艶めいたものにさせた。
「さっきよりも俺に馴染んできてるな」
「……薬の、せいよ」
これ以上めちゃくちゃにされたくないという意思とは裏腹に、自分を犯すものを欲深いざわめきで歓迎する身体を抑える努力はあきらめたが、屈服の言葉だけは口にしたくない。
儚い意地を張る少女に、アルベルトは愉しげに目を細め、彼女を再び貪りはじめた。
……いつしか、雨はやんでいた。
けれど豪奢な寝台のきしむ音と、淫靡な水音は未だにやまない。
無論マリアが望んでいるわけではなく、彼女を辱める男が解放を与えてくれないだけだ。
理性が麻痺し、一糸まとわぬ姿で延々と悦楽に酔わされ――
マリアはときどき、自分が淫夢の世界に迷いこんでしまったかのような錯覚に囚われる。
「はぅ……ッあ、あぁん――」
けものの交わりの体勢で犯されながら、マリアは言葉にならぬあえぎのみを繰り返した。
乳房を揉んでいた男の手がおとがいへと移り、後ろを向くよう促される。虚ろな目でマリアが従えば、予想どおり唇が重ねられた。舌を絡められても、もう拒みはしなかった。
終わりの見えない悪夢を耐えるには、アルベルトに逆らわないのが一番楽なのだ。
男のもう片方の手は、マリアの豊かな乳房を鷲づかみにし、そのやわらかさを飽くことなく堪能している。珊瑚色の先端をつままれた瞬間、マリアの腰はひくりと揺れ、胎内を限界までこじ開ける剛直をきゅっと締めつけた。
「……いい子だ」
「ん……ふぁ……ッ」
息を奪うキスから解放された途端、腕から力が抜け、マリアはシーツに突っ伏してしまう。
それでも腰を高く上げた屈辱的な体勢が保たれているのは、アルベルトの手の支えのせいである。彼に腰を捧げているも同然の恥知らずな体勢なのはわかっているが、上体を起こす気力はマリアにはもうない。
「どうした。限界か……?」
低く深みのある声とともに、後方からマリアを貫くものが急に角度を変えた。
「あぅん! や、そこ……は、あ……」
ここが弱いだろうとからかうように、今宵目覚めさせられた蜜壷のことさら感じるところを楔のくびれで嬲られ、マリアは切れ切れの悲鳴を上げた。
かつて何度か経験した自涜行為では得られなかった深い歓喜を、この夜だけで散々に身体に刻みこまれている。一生消えない男の熱とともに。
底無しかと思う男の欲望に、自分はどこまで壊されてしまうのかと虚ろな目で考える。
(わたし……このままじゃ……)
純潔を奪われてから行為は一段と激しさを増して、気がつけば暖炉の火は消えていた。
それでも夜の寒さを感じないほど身体が熱い。
……自分のも、アルベルトのも。
後方でぐちゃりと音を立てて引き抜かれれば、必要なものを奪われたような切なさがマリアを悲しくさせ、再び狭隘を割り開かれれば、充足感と被虐的な歓喜に、身体がひとりでに悶えてしまう。そこは先ほどから自分でも信じられない量の淫蜜をあふれさせ、アルベルトの陵辱に貪欲にこたえつづけていた。たとえ秘薬のせいでも、受け入れられる現実ではない。
「あッ……も、むり……」
「……そう言うわりには熱く絡みついてきてるぞ」
低く笑って、アルベルトがおおいかぶさってくる。マリアの背に彼の胸板が密着した。
汗ばむうなじに歯を立てられ、びくりとしたところで、さらに結合部のすぐ上で腫れ上がった花芯が指の腹でくすぐられる。
「あぁあん! はぅ、ぁあ……――いや……ッ!?」
虚しく許しを乞おうとしたときだった。ひときわ強く腰を叩きつけられたのは。
胎内の一番深くまで楔を受け入れさせられ、息を詰めたマリアに追い討ちをかけるように、アルベルトの精が勢いよく放たれる。この夜すでに何度もされた兇悪な蹂躙に、マリアの腰は淫らに打ち震え、理性をかき消して楔に吸いついた。
「だ、だめ……なか、は……ッ」
息も絶え絶えに懇願しても、アルベルトが結合をほどいてくれるはずもなく。
またしてもおなかの奥で子種の熱さと楔の脈動を味わわされ、マリアはもう涙も出ない。
吐精を奥で淫らに呑みこみながら痙攣する身体を、止めるすべすら知らないのだ。
瀕死の小鳥のようなマリアの風情に、アルベルトが満足げにつぶやく。
「可愛いな、お姫様」
汗で頬に貼りついた亜麻色の髪が、彼の指でそっと払われた。
甘くやさしげにささやかれる言葉も、マリアにはひどい皮肉にしか聞こえない。
お姫様? こんなにめちゃくちゃに食い荒らされた身体の、どこが……?
「……ッ、あ、ぅん……」
濃密な糸を引きながら、剛直がようやく胎内から楔が引き抜かれた。
犯されつづけて軽く開いたままの蜜口から白濁の雫があふれ、マリアの下肢をさらに汚す。
――汗とさまざまな雫で汚れた肌も嫌だが、疲れ果てたはずなのに身体の芯がまだ疼いている気がするのが、マリアにはつらかった。
それでも解放されたことを救いに、今度こそシーツに倒れこんで呼吸を整えていると。
「マリア」
汗ばむ腰をふいに、アルベルトの硬い手のひらで撫で上げられた。
そのわずかな刺激に震えるマリアの、本当なら隠したい部分に男の視線が突き刺さる。
「疲れたのかと思ってたが……まだ足りないか?」
「ち……違う……」
犯されつづけて麻痺していた羞恥心が一瞬にして燃え上がり、マリアは必死で声を上げた。
敵の男に見られている。まだ淫らな熱を残して疼く秘部を。
静かな拷問に泣く少女の秘肉に、アルベルトがそっと指を這わせ、小さなひだをくすぐる。
「少し前まで生娘だったとは思えんな」
「……!」
この上何をされるのかと怯えるが、アルベルトは残酷な言葉とは裏腹の、やさしい――愛でるようなキスを、マリアの湿った素肌に落としていった。陵辱の最中の甘噛みとは違う、ふれるだけのキスだ。
心を踏みにじる言葉や行為とは対照的なふれ方は、マリアをひどく困惑させた。
何かが怖くなって後戯から逃れようとするが、あっけなく抱き寄せられてしまう。
「俺から離れるな。――風邪を引くぞ」
憎い男の抱擁に閉じこめられるのは屈辱だったが、強烈な眠気がマリアを屈服させた。
これがただの悪夢だったらいいのにと、マリアは薄れゆく意識の中で儚く願った。