何度も痙攣して悦楽に堕ちる姿を、愛してもいない男に見られていることが、マリアの心をさらに抉る。望まぬ絶頂に心も身体も蝕まれ、マリアは虚ろな目で荒い呼吸を繰り返した。
アルベルトは痙攣する秘所の感覚を楽しむかのように、しばらく手をくゆらせ――
「これはもう邪魔だな」
やがて、マリアの裸身を守っている最後の一枚に手をかけた。
「!? ……いや! やめて、それだけは……ッ」
マリアはあわてて抵抗するが、アルベルトはたやすく薄布を引き千切ってしまう。
か細い悲鳴が、闇を震わせた。
濃さを増した蜜まみれの秘部を隠そうとするが、アルベルトに両手を難なく抑えこまれてしまい、結局は弱々しく首を振ることしかできなかった。
ぼろぼろに裂かれた下着が取り払われれば、ひやりとした空気が秘めた部分にふれ、そこがアルベルトの前に容赦なくさらけ出されているのだと痛感させられる。
(いや……いや……)
敵の男に一糸まとわぬ姿にされ、マリアの心は粉々に打ち砕かれていく。
「おまえは顔に似合わず性欲が強いようだな。マリア・シュティール?」
今さらのように名を呼ばれた。ひどい言葉とともに。
「――まあ、そのほうが俺には都合がいいが」
頬を敷布に押しつけて過酷な現実に耐えるマリアの、頬や髪に、アルベルトの唇がふれる。
やさしいとさえいえるそれを繰り返されると、身体から勝手に力が抜けてしまうのが嫌だ。
しばらく少女をなだめた後で、アルベルトは低く命じた。
「おとなしくしていろよ」
脱ぎ捨てた上着の隠しから、アルベルトが蜂蜜のような液体が入った小瓶をとりだす。
不吉な予感に凍りつくマリアの淫らな花に、ねとつく液体を絡みつかせたアルベルトの指が再び襲いかかり、何かが丹念に塗りこまれていった。とりわけ蜜口と、指がもぐりこむ蜜壷の浅瀬に。卑猥な水音と、内壁をくすぐられる感覚に、マリアはうっと息を詰める。
男の指と粘液が内壁にもたらす卑猥な刺激で、心臓がバクバクと音を立てた。
「いや……それ、なに――」
「薬だ。さっき飲ませたのとは違う種類だが。……痛いのはいやだろう?」
冷酷な説明で、マリアは次に彼が何をするつもりなのかわかってしまった。
愕然とする彼女の上に、衣服をすべて脱いだアルベルトがのしかかってくる。
「あ……」
男のたくましい身体の熱と重みが恐ろしくて、マリアは魂まで凍りつく。
敵に純潔を穢される絶望で舌を噛もうかとまで思いつめたとき、アルベルトの瞳が見えた。
青い青い瞳。
情の深い異母姉――ラウラを思い出させる色に、マリアの心が大きく揺れる。
永遠の別れを覚悟したつもりだったが、不覚にも生き延びたせいで、もう一度逢いたいという気持ちを抱いてしまう。
このままアルベルトの手に堕ちれば、命だけは助かるというのなら……わたしは……?
「やはり、ラウラ・フレンツェルはおまえの縁者か」
快楽と怯えと迷いの中で、マリアは息をのむ。
心の中で呼んだつもりだ、唇が動いてしまっていたらしい。
――黒髪のラウラ・フレンツェルは、フォーゼ族の当代族長にして《黎明の翼》の主導者。
そしてマリアの異母姉だ。
ラウラは先代族長の正妻が生んだ娘。マリアは妾の子。
いわゆる「なさぬ仲」だが、ラウラは昔からマリアにやさしかった。
誕生日が一日違いだから「わたしたち、本当は双子で生まれるはずだったのかもね?」と笑い、いつも一緒にいてくれた。母を早くに亡くしたマリアにとっては、だれよりも心強い存在で、おとぎ話の王子様のようだとさえ思っていた。
交わした視線、他愛ないやりとり。
春祭りのダンスで、おそろいの仮面をつけて踊った。復活祭のために卵に絵を描いた。男の子たちに混じって騎馬行列の騎士になった。まなざしがぶつかるたびに、無意味に笑って……小さなことまで、一つ一つが思い出される。
今の惨めな状況と比べると、まるで別の世界のおとぎ話のようだけれど。
「――どうせ炎の中で死ぬ覚悟でいたのだろう? だったらその命、俺がもらってやる」
何度も首を振ったせいで乱れたマリアの亜麻色の髪を、アルベルトの手がそっと撫ぜる。
いとおしむみたいに。
「俺のものになれ。――マリア」
その手の感触に気をとられたせいで、降ってきた口づけをかわせなかった。
吐息を奪い、厚みのある舌がマリアの口内をゆっくりと味わう。息苦しさに身をよじれば、男の胸板で押し潰された乳房がこすれて、快楽がいや増した。密着した裸身。マリアの秘所には男の楔が押しつけられ、そこに満ちた雫をかき出すかのように軽く前後しはじめた。
楔の熱さに、絶望でいったん冷めかけた性感がいやがおうにも高まり、マリアの涙を誘う。
「や……ふぅ、ぁ……んッ」
ふくれきった花芯が楔の張り出した先端に引っかかる、鋭い快感。ぐちゅ、ぬちゅ、とひだをかき分けられていくうちに、楔の先端からにじむものと彼女の雫が混ざり合って、濡れた音が大きくなる。深いキスと同時の責めに、マリアの意識はひとりでに虜になっていった。
「ん……ッ! んぅ……」
長い口づけからようやく解放されると、アルベルトは逃げられないように彼女の腰を改めてつかみ、蜜口に楔をあてがった。
びくりと震えるマリアの中に、硬い先端がぬるりともぐりこんでくる。
しかし限界まで張りつめた剛直はきつい狭隘にはばまれ、一気には彼女を貫けない。
「……い、いたい……だめ、ぇ……!」
子をなす器官への入り口をこじ開けられる衝撃が、マリアを激しく動揺させる。
それまで散々教えられた愉悦とは違う重たい異物感と鈍痛が、つながった部分からこみ上げてきている。アルベルトは巧みに腰を揺すっては、抵抗の強いひだを巻きこみながら、マリアの深奥まで彼の形をねじこもうとした。