――そうして、いつしかランプの灯りは切れ、視界の頼りは月光のみと化す。
夕暮れからこちら寝台から離れることもない海賊の男と異国の少女は、時間の経過など忘れた様子で、いつ果てるとも知れぬ情熱的な交わりを続けていた。ねばつく水音と身体がぶつかる音、そして荒んだ息遣いだけがここにある。
「……ッぁ、はぁ、あぁん――!」
ひときわ甘ったるく高い声が、また、ねっとりと湿る夜闇をかき乱した。
リオンの身体の下で、彼の律動を受けとめていた少女が、力の入らない下肢をがくがくと震わせながら極みに達したのだ。昂ぶりきった楔に今まで以上のきつい締めつけを与えられたリオンもまた、下肢から全身に広がる快感のうねりにさらわれて絶頂を味わう。
「ん……ッ!」
未熟な子宮を突き上げた楔が大きく脈打ち、二度三度と輝夜の胎内に精をそそいだ。
リオンの手で女としての快楽を覚えさせた輝夜のそこは、彼の精を最後の一滴までもしぼりとろうとするかのように、頂点を迎えた後も楔に絡みついてくる。その淫らな熱と感覚を味わい尽くしたくて、リオンは彼女と身体をぴたりと密着させた。
まぶたの裏に火花さえ飛ぶ、男にとっては極上の悦楽だったが――
――もう、何度目だろう?
主導権を握っているリオンでさえ、霧がかかったように記憶がおぼつかなかった。
リオンが何度も極みに追い堕とした少女は、もはや体力の限界に達しているようだ。
そっと愛撫してやれば、従順な肢体はびくびくと震えて悦楽に酔うし、無意識にか彼にしがみついてもくるけれど、藍色の瞳に宿る光はひどく弱々しい。
リオンは今さらの罪悪感にかられ、輝夜を解放してやるために腰を引きかけたが、途中で動きが止まってしまった。蜜壷の複雑な重なりのひだに、先端が引っかかったのではと思うほど強く絡みつかれて。淫らな誘いに、喉が鳴る。
「あ、――だめ……ッ」
完全に抜け落ちる寸前で、リオンはまた彼女の中に押し入っていた。たまらない熱さの内壁で数度しごかれれば、いったん力を失った楔はみるまに熱量を取り戻してしまう。
「許して、も……だめに、なる……」
「……なればいいだろ」
卑猥にただれた秘所を再び押し開かれてうろたえる輝夜に、宥めるように口づける。
男の目には毒なほど赤く色づいた乳房の先端にも吸いつくと、アレクの楔は熱い手のひらで握りこまれたように締めつけられた。歓喜をあらわにした反応がうれしい。
――離せない。
リオンだけを受け容れる身体がもたらす悦楽が惜しいからではなく、ただひたすらに、輝夜を離したくなかった。彼女の狭い胎内はすでに彼の精で埋め尽くされていて、あふれたものが結合部をひどい有様にしているのに、まだ。
彼女が完全にリオンだけのものになっている時間が終わるのが、いやだった。
――離したくない。
激しく爛れた恋情。尽きぬ情欲。こんなにも歯止めのきかない気持ちにさせられる女は本当に初めてだったから、リオン自身、快楽に溺れながらも内心は戸惑っている。
どうにも力をゆるめることのできない彼の腕の中では、淫靡な空間に閉じこめられた少女ははらはらと涙をあふれさせていた。
「おねがい……も、おわりに、して……」
ひっきりなしの快楽の波に翻弄されている輝夜は、呂律があやしいどころか、呼吸さえままならないように見えた。ときどき無意識に、母国語とおぼしき音でリオンの知らない内容を口にすることもあり、それがまた彼を妙な気持ちにさせる。
濃密な交わりを続けたせいで柘榴色に乱れた花を穿つ動きをいったん中断し、リオンは至近距離から輝夜の瞳をのぞきこんだ。
「……つらいか?」
蕩けた瞳で、輝夜はリオンを見上げる。
「つらいと言うか……も、本当に、身体が動かないから……」
かすれた声で限界を訴える少女の肌には、乱れた黒髪が汗で幾筋も貼りついている。
すまない想いはこみあげるが――淫らな刺激を怖れるように抗い、リオンにがむしゃらに爪を立てる少女と同じくらい、こうして彼に揺さぶられるまま儚げな痴態をさらす姿もいとおしくてたまらない。俺の手の中で、俺が与える悦楽に陥落しきった姿。
「……でも、気持ちいいんだろう?」
やさしくキスしながら問えば、輝夜は小さく、だがはっきりとうなずいた。
乙女の身体をリオンに貪り尽くされて、意地を張るのをあきらめたのか、輝夜は恥じらいを呼ぶ類の問いにも素直に答えるようになっていた。消え入りそうな細い声だが、リオンだけが聞きとれればいいのだから問題はない。
儚げな泣き顔。リオンを一心に見上げる大きな瞳。桜色に上気した白い肌。
少女のひとつひとつがいとおしく、リオンの中の獣性をとめどなく駆り立てる。
「無理させて悪いと思ってるけど……もう一回だけ、な?」
「ッ……あなた、さっきもそう言って、結局やめてくれてな――ッあ、ゃ、ん……!」
腰骨をつかみ、甘えるキスをしながら楔で感じる場所をこすってやれば、リオンの欲を際限なく煽るあえぎが輝夜の唇からこぼれる。
許しを乞う言葉に反して、貪欲なほどに熱く潤んだ彼女の胎内は、やはり灼けるような熱で楔を包み、至福の一体感を与えてくれた。男を狂わせる身体に変貌を遂げつつある少女。自分がそうしたのだと思えば、リオンの胸には熱いものがこみ上げる。
「だって……俺はもちろん気持ちいいけど、おまえもすごく気持ちよさそうだし。そんなんじゃ、止められるわけないだろ……?」
「ぁあ……ッ、き、気持ちよくても……も、壊れる……」
「じゃ、一緒に壊れろよ。……俺はもうとっくに壊れて、止まらなくなってるから」
さながら歯車の壊れた玩具のように腰を叩きつけて、奥を突き上げながら花芯まで刺激してやれば、輝夜は絶え間なくあえぎながら彼にしがみついてくる。ぐちぐちという卑猥な音の中できつく抱き合うと、官能の頂点は瞬く間に訪れた。
ひときわ高い嬌声とともにのけぞった少女の胎内が、蕩けるような熱と快楽でリオンの楔を愛してくれる。強いざわめきで最奥へと誘われるまま、何度も震えて欲望を解き放つたびに、気の遠くなるほどの悦楽と征服感がリオンを陶酔させた。
「ッ……ん、ッ……」
またしてもリオンの劣情を余さず受けとめた輝夜は、彼の腕の中で、脱力しきった身体を無意識にひくつかせる。絶頂の余韻で、彼女の秘所は無秩序な震えを残しながらも楔に密着していて、それがまたひどく気持ちいい。
「中……感じるか?」
震えた息を吐きながら、輝夜がうなずく。力のない瞳のまま、言葉が紡がれた。
「奥に、しみこんで……もう……おかしくなりそう」
「そうか……」
寵愛する少女とぴたりと身体を重ね合わせたまま、リオンは目をすがめた。
「……例の薬、もう効かないかもな。おまえの中、もう俺のでいっぱいだし」
「ッ、や……それは、だめ……」
意地悪く、リオンの子を孕む可能性をほのめかせば、輝夜は弱々しく首を振る。
リオンは輝夜の、汗ばんだ下腹部へと手を這わせた。
一度も他の男の子種を受け容れたことのない輝夜の胎内を、自分の精が白く染め上げている様を想像すれば、独占欲は確かに満たされる。しかしそれは薬のせいで実を結ばないのだと思うと、寂しさもあって。
「……おまえと、このままずっと繋がっていられたらな」
リオンがふと呟いた、およそ現実味のない願いごとは、まだ熾火のようにくすぶる悦楽に心を侵食されきった輝夜にも聞こえただろうか。痛々しいほど必死に呼吸を繰り返す少女を見下ろしながら、リオンは自分のとめどない欲情をもてあましていた。