「だ……め、そんなの――できません……ッ」
身体の深奥が刺激を求めて疼き、切なげに欲情を訴えてくるのを、弱々しくわななきながら押し殺す輝夜のうなじに、リオンが荒んだ吐息を吹きかけてきた。
「この頑固者」
「! いやぁッ……んは、ぁ、あああ……!」
おもむろに腰を引き寄せられたかと思ったら、輝夜の雫で濡れたリオンの楔の先端が、軽く開いた花びらの奥にぬるりと埋没した。背後から貫かれる感覚が、輝夜を襲う。
処女の穢れを払われたときほどの苦痛はないが、胎内をゆっくりと押し開いていく熱量と圧迫感には、どうしても息が詰まった。輝夜は声にならない悲鳴で喉を震わせながら、卑猥な音を連れて侵入してくれるものを受け容れる。
うなじに、男の切迫した吐息がぶつかった。リオンの抑えたあえぎが聞こえる。
(……わたし……また、この人に)
腕の中に閉じこめられ、貫かれ、支配される。おなかの奥が彼でいっぱいになる。
最初の夜、もうリオンに蹂躙されなかった部分はないと思うほどめちゃくちゃにされたのに、今また彼に開かれてしまう。
ひどく屈辱的なはずなのに、一人ではどうしようもない疼きを満たされた心地に酔う自分もいて、悦楽と背徳感で頭の中がぐちゃぐちゃだ。
「あ、リオン船長……ッ」
「きついか?」
「え……? いえ、そうではない……です、けど」
背後から聞こえたリオンの声は、純粋に心配そうで、思わず素で答えてしまう。
直後、やめてと言う機会を逸した輝夜の胎内に、リオンの熱量が一気に沈められた。
「ッ、あぁあああ……ッ!!」
もっとも深いところを男の熱に灼かれ、輝夜は額を乱れた敷布にこすりつけてあえぐ。
男を教えられたばかりの身体をまた開かれる苦しさ。
だが、じっくりとなじませるように抜き差しを始められれば、その苦しさは次第に違う感覚にすり変えられていく。
獣の交わりそっくりの体勢に、恥じらいや屈辱を感じる暇すら与えられぬまま、輝夜は初めてのときよりもさらに甘美なしびれに犯された。リオンの指による愛撫でも届かない奥深くを何度も小突かれれば、抗いようもない濃密な悦楽が身体中に押し寄せてきて。
最初にリオンを受け入れたときは身が裂かれるように痛かったはずなのに、もう思い出せもしない。記憶が強引に上塗りされる。
「んんッ……あ、ぅん……そん、な……」
愛でるように輝夜の肢体に絡みついてきたリオンの手が、律動に合わせて寂しげに揺れていた乳房をつかみ、押しつぶすように揉みしだく。乱れた黒髪がはりつく背中には、彼の唇が熱い吐息とともに降ってきた。
飢えたように何度も口づけられると、リオンに本当に愛されている気がしてしまい、輝夜は激しく動揺しながら敷布をきゅっと握る。
これは本当なら夫となる男性とするべき行為で、だからリオンとの交わりはただの取引なのに……罪悪感の歯止めが壊れて、溺れてしまいそう。
「……ッ!」
リオンに全身で与えられる甘美な悦びに陶然としかかったとき、ふとももを糖蜜に似た雫が伝い落ちる感覚が、やけに生々しく意識に突き刺さった。抜き差しのせいで胎内からかき出されたそれは、輝夜がリオンをただ歓喜だけで迎えている証拠。
藍色の瞳が、恥辱と背徳感でゆがむ。
……陵辱されているのに、わたしは、こんなに。
「だめ……こんなの……やっぱり、だ、め……」
胎内をかき回されるだけでもたまらないのに、耳朶を甘噛みされ、素肌をねっとり撫ぜられ、乳房をもまれる刺激のせいで、理性を取り戻す間もなくどんどん快楽の中に落ちていってしまう。熱く蕩けた蜜壷が男の欲望を歓迎してわななけば、リオンのそれはさらに質量を増して、輝夜をいっそう追い詰めた。
「……輝夜。こっち向け」
傲慢なようで切実そうな命令に、もうろうとしていた輝夜は反射的に従ってしまう。
半身をひねるようにして後ろを振り返った輝夜の顎をつかむと、リオンは彼女の唇に自分のそれを押しつけてきた。
処女地を蹂躙される痛みがない分、周囲を見るくらいの余裕はあった輝夜は、間近に来たリオンの表情に目を奪われる。
(……どうしてそんな目で、わたしを見るの?)
何かを言いかけて、でも言えなかった。そんな切ない目に、胸がざわめいてしまう。
彼の奥底にひそむ何かを見つける前に、唇が離れ、リオンの手が離れ、輝夜の額は再び敷布に落ちる。
振り返りたくても、腕にこめた力が端から甘いしびれに霧散させられるせいで叶わない。もどかしさに眉をひそめたとき、リオンが律動を再開させた。
「ひぅッ、あ、あ、ぁん……!」
輝夜は悲鳴のように叫んだ。
淫靡な熱に浮かされたように、輝夜の肌を狂おしく撫ぜていたリオンの手が、とうとう恥丘を過ぎて、二人の身体が結び合わされた場所に到達したのだ。
この上なく深く男とつながっている部分を意識させるかのように、リオンが輝夜の濡れた花をいやらしくなぶる。花芯がくにゅりと押しつぶされれば、鮮烈な快感が奥まで突き上げてきて、なすすべもなく甘ったるい嬌声をほとばしらせてしまった。
ますます官能が高まり、突きこまれた楔を無意識に締めつけると、リオンが切迫したあえぎを漏らすのが聞こえた。艶めいたそれに輝夜はぞくりと震える。
(わたしだけじゃなくて……この人も気持ちよくなってる……)
そのことに、なぜか安心してしまって。
胎内を抉る熱が動きを変えて、特に心地よいところを散々に擦り立てるようになると、もうだめだった。何度も抉られる奥がじんじんと甘くしびれて、もう全身で感じるリオンの存在感にしか意識が向かなくなる。リオンしか感じられなくなる。
「あッ……んう、はッ、ああ、ふ……う」
――彼は恨めしいほどに正しい。
浅ましい表情を見られることなく淫らな刺激に酔わせる交わり方は、輝夜をたやすく悦びに陥落させた。
輝夜は何かをあきらめて、リオンに揺さぶられるままになった。
いやいやをするように首を振りながら、しまりをなくした唇から声を夜闇に解き放つ。
彼女とリオンの熱い身体が、ベッドの上の温度をどんどん押し上げていくようだ。
「……ッあ、ふぁ――んッ、や……あぁッ」
――か細いあえぎを聴くだけでぞくぞくとしてしまいながら、リオンは輝夜から与えられる悦楽に酔った。狂おしいまでの一体感。楔全体が複雑なひだの重なりに強くしごかれれば、じっとしているだけで達してしまいそうな甘い刺激がリオンを襲う。
「く……ッ」
濡れはしても最初は堅く、異物を押し返したがってばかりいた輝夜の蜜壷は、彼女の声が甘く溶け落ちるのにつれ、熱くやわらかく、けれど息をつかせる隙を与えぬほど強く、リオンの欲望の象徴を絞り上げるようになっている。
今や、つながった場所から絶え間なく送られるのは、脳髄が灼けるような悦楽だけだ。
不慣れな少女が相手だから、自分を抑えるべきなのはわかっているが――炎にも似た激しい昂奮に、リオンはどうしようもなく身震いしてしまう。自分の動きに合わせて、少女が甘やかに鳴くのがたまらない。一緒に気持ちよくなっているのがうれしい。
「ひ……ッ、ン、あぁ……!」
輝夜のあえぎに陶酔する中で、リオンはやがて、さらにぞくりとくる事実に気づいた。
くたりと寝台に伏せ、下肢だけを高く上げられた、扇情的な格好の少女。そのなよやかな腰がいつしか、リオンの動きにつれて小さく揺れだしたことに。
リオンは輝夜にそんな媚態など教えていない(いずれ教えるつもりがないとは言わないが)。だからきっと、無意識の反応なのだろう。
彼女が淫らな熱に浮かされるまま、より心地よい場所への刺激を求めているのだと思えば、否応にも欲情を駆り立てられた。
「……気持ちいい?」
「! やだ、ちが――ぁう、あぁ、あ……ひぅ……ッ」
耳朶にやんわり噛みつき、しなる背のラインをつうっと指でなぞれば、そのたびに可愛らしい声を上げて身をよじる少女が、リオンには狂うほどにいとおしい。
腰のくびれを愛でていた手をすべらせ、まるみを帯びた双丘を撫でる。雪のように白いそれは、絶頂が近いことを示すように小さく震えていた。
ますますのめりこみ、円を描くように腰を使ってやれば、輝夜の濡れた狭隘はリオンの猛るものにきゅうきゅうと絡みついてくる。初めての夜より熟したその反応に、自分がこの可憐な娘を女として育てていることを実感し、ひどく昂奮が煽られた。
「輝夜――ッ……!」
背筋から何かを引き抜かれたのでは、と思うほどの強烈な快感に貫かれて、リオンは息を詰めた。極みを得た輝夜の蜜壷が精を誘うように強烈にうねり、リオンの楔は特に根元が、熱い指でぎゅっと握られたように締めつけられる。はじける。
吐精の悦楽と、寵愛する少女にそれを受けとめてもらう満足感。至福の瞬間。
細い身体を抱きしめながら、リオンは腰がしびれるほどの深い悦楽と、彼女を独占する征服感、そして満足感に溺れた。
「――あッ……あ、あぁん、んふぁあああ……!!」
片や輝夜はリオンの腕の中で、恥も何も失って高く鳴いた。鳴きながら極みに達した。
白熱する意識の片隅で、胎内に深々と打ちこまれた楔からどくどくとそそがれる熱い飛沫で胎内の圧迫感が増したことに気づく。狂乱の頂を過ぎたことで、理性のかけらが一瞬戻ってくると、最奥に流れこむ子種の感覚が背徳感を呼んだ。
子を宿すための大事な場所が、自分の意思に反して、夫でもない男の精を美味しそうに呑みこんでいるのがいたたまれない。
が、すぐにそれも、深々とつながった場所から全身に広がる、どろどろに溶けてしまいそうなほどの熱でかき消されてしまう。
(どうして……こんなに気持ちがいいの……?)
混濁した雫が狭い蜜壷からあふれ、桃色に火照った肌を汚す感触に何かを思う余裕さえなく、輝夜は快楽の余韻で小刻みに震えた。四肢はすっかり虚脱していて、猫を追い払う力さえこめられそうにない。
最初の夜以上に激しい混乱と快楽はもうないと思っていたのに、今リオンに与えられたものはその上を行っていた。
溶け合うような感覚も、あのときより深く、鮮烈で。
(……わたしが、受け容れてしまったから?)
自分の痴態を振り返れば、輝夜はどろりとした後悔と羞恥に襲われる。
身体中を暴かれて、快楽の火を灯されて。
散々に煽られた欲を早く癒してほしいと思うあまり、男を誘うみたいに腰をくゆらせていた。堕ちてしまおうという本能のささやきに屈服して、罪を重ねた。
(……あにさま)
脳裡をよぎる面影に、泣きそうになる。
冷たく厳しいなりに働きを認めてはくれた兄はもちろん、隠し巫女として尊重し仕えてくれていた人々にも、逢わせる顔がない。
罪深さに心を削られ、瞳が虚ろになりかけたとき。
「ッ……?」
耳のすぐ後ろに熱い吐息がかかったことで、輝夜ははっとした。