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「大丈夫だって。おまえはどこもかしこも綺麗だから。……本当に、俺が今まで見てきたものの中で、おまえが一番綺麗だ。宝石よりも」
「宝石……?」
「そうだ。――誰にも渡さない、俺だけの宝物だな」
 先刻の、またしても思いがけない輝夜の言葉は、リオンの心を大きく揺さぶっていた。
 完全に憎まれているわけではないことへの嬉しさ。自分を陵辱しきった男にもやさしい心を失わない少女への驚きと感嘆――
 どうしてこんな少女が、リオンの前に現れてくれたのだろう。

 出逢えた運命に感謝すれば、彼女への恋情もまた深くなる。早くひとつになりたくて、リオンは輝夜を抱き寄せた。にわかに背後から抱きすくめられたことに慌てたのか、少女の肩がびくりと跳ねる。そんな過敏な反応も、リオンにはいとおしくてたまらない。
「……輝夜」
 彼女には迷惑な話だろうが、リオンはもう、いとしい温もりを腕の中に閉じこめるだけで安心する体質になってしまったようだ。絹にも勝る肌の手ざわりに、楽園を思う。
 逃がさぬようすっぽりと抱きしめ、控えめにくぼんだへそをも淫靡に撫でながら脚の間で息づく秘所を指でまさぐれば、輝夜の身体が再び緊張にこわばった。

(ほんとに小さくて細いな……)
 こんな子供みたいに折れそうなくらい華奢で頼りなげでも、リオンのすべてを受け容れてしまうのだから不思議だ。
 汗ばむ細い肩。白いうなじ。赤く染まった可愛い耳。先端がつんと立った乳房……。
(でも……ちゃんと『女』になってきてる)
 本人は気づかないようだが、リオンに純潔を奪われた夜を経て、輝夜の肌はにじむような艶を匂わせるようになっていた。こうして裸に剥くと、実に目の毒だ。
 輝夜に痛みを与えたくはないから、リオンはことさら慎重に、彼女の大事な場所を指で愛でた。蜜を生む泉のやわい肉をくすぐり、誘うようなひくつきを感じた次の瞬間、指先がぬるりと少女の内部に呑みこまれていく。
「あッ……!」

 少女の身体が強張る。
 最初の夜、痛みに引き攣れながらもリオンを受け入れ、苦しいほどの悦楽を与えてくれたそこは、やはりまだ狭い。指に伝わるのは異物感に複雑に震える内壁の感触と、あふれる雫のぬめりと、たぎるような熱さ。
 欲望を煽られて、今すぐひとつになりたくなる自分を、リオンは必死に宥めた。
 おいしそうな赤さに色づいた乳房の先端をくすぐりながら、そっと秘肉をまさぐる。
「ふッ……あッ、だめ、きゅ――急に、かきまぜないで……ッんぅ」
 清楚といえば聞こえはいいが、いつもは媚や色香とは遠い場所にいる輝夜がこんなにも淫靡な熱を秘めているのかと思うと、たまらない。
 あえぐ少女の耳朶を甘噛みしながら、リオン彼女の反応をたっぷりと楽しんだ。
「でも、おまえのここは、俺の指に悪戯されたがってるみたいだけど?」
「そんなこと、して欲しがってなんて……あぅ! ひぁ、ああんッ」

 卑猥な水音と、低くささやかれた言葉に耳を犯され、輝夜は眩暈がするほど真っ赤になる。
 自分の浅ましい身体に関する感想なんて聞きたくもないのに、リオンは事あるごとに口にしては、輝夜を精神的に追い詰める。
 ひどい男だ。瞳が好きだなんて、言うんじゃなかった。
(だ、め……思い出しちゃう……)
 快楽を少しでも無視したいのに、焦らすように緩慢に抜き差しされるリオンの指が先日の行為を思い出させるせいで実現できない。輝夜の疼く内壁は、圧迫感を与える指を噛みつくように強く締めつけ、煽られるまま熱と潤みを増していった。
 やがて、胎内を探る指が二本、三本と増やされる。
 自分のそこが、決して細くはない男の指をなめらかに呑みこんでしまうことに、輝夜は愕然とした。
 わたしの身体はもう、この人を受け容れるように変えられている……。
「……覚えてるか? この前の夜のこと」
「ッ……!」
 忘れるわけがない。
 身が裂けるような痛みとともに彼を受け容れさせられて……けれど最後には、快楽の極みを味わわされた。彼の精をそそがれた。
「今は痛くないよな? 蜜がこんなにあふれてる」
「そ、そんなこと言わないで……」
 涙ぐむ間にも、リオンの器用な指は淫らな蜜の奏でる音を道連れにして、輝夜の胎内を好き勝手にかき回していく。最初の夜に暴かれた、蜜壷のひときわ感じやすい場所をしつこく責められて、輝夜は甘ったるい息と浅ましい雫をとめどなくこぼした。

(どうしてわたしの身体は……こんなに簡単に……)
 自分が女だということを、これほどまでに呪わしく思った経験はない。けれど。
 ――『おまえが俺の目を宝石みたいだって言ってくれたのは心底うれしかった』
 リオンが、輝夜の身体だけではなく心根も気に入ってくれているようなのには、奇妙にほっとしてしまっていた。強張りが薄らいだ輝夜の身体は、愛撫される場所から広がる快楽の波に指先までぬるく犯される。ひどく気持ちがよくて、それが恥ずかしくて。
 ――『俺はもっとおまえが知りたい。おまえを全部見たい』
 ――『誰にも渡さない、俺の宝物だ』
 なのに、一途で熱烈な言葉を思い出すと、どうにも抵抗の意志がしぼんでしまう。
 このままでは確実におかしくなってしまう気がして、輝夜は怖くなった。
 最初に身体を開かれた夜よりも怖いかもしれない。心に、リオンが入りこんでくる……。

「ゆるして――もう……」
「おねだりの言葉はそうじゃないぞ」
「……え?」
「俺なしじゃいられない、って言ってみな。ちゃんと言えたら合格だ」
 哀願する輝夜の耳のそばで意地悪くささやくと、リオンは不意に指を引き抜いた。
 そして、びくりと震えた彼女を背後からしっかりと抱えると、脚の間に何かをすべりこませてくる。花びらに押しつけられる、指や舌とは比べ物にならない熱を放つそれは、猛り狂う男の楔だ。中にねじこまれるのかと覚悟したが違って、リオンは輝夜の淫らな花に楔をこすりつけるように腰を動かしてきた。
「!? やッ、なに……を――ひぁあ!?」
 交わりを連想させる卑猥な動きで、楔の突端のくびれに秘裂はもちろん花芯まで強くこすられれば、輝夜の蕩けた身体には強烈なしびれが走る。
 ぬちゅぬちゅと音を立てながら熱く硬いものが秘所や双丘の間を何度も前後するのと同時に、乳房を荒々しく揉みしだかれて与えられる疼きは甘く――しかし、じれったい。輝夜の肉体はすでに、今内股に挟まされているもので胎内を貫かれたらどうなるか、その濃密な官能を教えられているからだ。

 ――『俺なしじゃいられない、って言ってみろ』
 今しがたのリオンの言葉が、心を抉る。
 もっと強く深い快楽を期待している自分がいやらしくて、心が苦しい。
 普段はそうではないと信じているけれど、今のわたしはこの人が与える刺激がないとどうしようもなくなっている。恐ろしいことに。




2010.09.08 up.

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