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「意地悪じゃねえよ。……身体は正直だって言ってるんだ」
「ひ……ッ!?」
 ――繊細なひだの陰で、そっと頭をもたげた花芯が音を立てて吸われ、輝夜の四肢が大きくひくつく。疲れ果てた心に、快楽に抗う力は残されていない。もうだめ、とわけもなく思ったとき、未開の花園をもてあそぶ愛撫が、ふいに止められた。

 理性を押し流す高波にさらわれずに済んで、ほっとするのと同時に、なぜか半端に放り出された気もしてしまう。
 身の内くすぶるものが「物足りなさ」だとは認めたくなくて、輝夜は力の入らない自分の身体を抱きしめた。……信じられない。わたしの身体が、こんなに――
(こんなに簡単に、どろどろになってしまうなんて)

「――輝夜」
 無力感と甘い疼きにさいなまれていると、不意に低く名を呼ばれた。
 濡れた口元を手の甲で無造作にぬぐいながら、男がのそりと身を起こした気配に、はっとする。大きく開かされていた脚を慌てて閉じあわせる輝夜を、リオンが抱きすくめた。ふれるだけのキスで彼女の頬の涙をぬぐいながら、問いかけてくる。
「今度はちゃんとがんばったな、いい子だ」 「…………」 「ここが濡れてるの――自分でわかるか?」
 輝夜はかなりためらった後で、こくんとうなずいた。
 本当は、そんなことないと否定したかったが、無理だった。リオンが手を軽くそえているそこは、自分の奥から湧き出したもので濡れている。内部から熱いものがとろりと流れ落ちる微妙な感覚を、そこに口づけられているときに何度も味わった……。

「……ごめんなさい」
「? 何を謝ってんだ」
「だって……あなたを汚してしまって……」
 輝夜はまつげを伏せた。処女は面倒くさい、男の肉体が穢れるとはこういう意味だったのかと痛感し、申し訳ない気分になっていた。苦痛しか与えられない陵辱だったらそうは思わないはずだが、リオンのふるまいが恋人にするように丁重なだけにいたたまれない。

「……自分が悪いみたいな言い方はよせ。俺がおまえを穢してるんだから」
 意外な言葉に、輝夜が涙のたまった瞳を上げると、至近距離に、リオンのほろ苦い微笑みがあった。凶悪さの消えた穏やかな表情に、不覚にもどきりとさせられてしまう。
「それに、俺はおまえが濡れてくれるのはうれしいぞ。おまえが俺の手で気持ちよくなってるんだなって思えるし」
「! わ、わたしは気持ちよくなってなんか――」
「気持ち悪いのか?」
「……そういうわけでは……ないですけど」
 意地を張りたいのに、根が正直なせいで、まっすぐ見つめてくる瞳に嘘がつけない。

 そう。なぜか気持ち悪くはない。好きでもない男に陵辱されているはずなのに、リオンを憎み切れないのだ。彼が与える、望まないはずの感覚すべてが身体を蕩かせる。
 ままならない自分の心と身体を持て余し、輝夜はもう途方に暮れるしかなかった。
「それじゃ……もう少しだけ目を閉じて、俺のことだけ考えててくれよ」
 輝夜に口づけながらささやき、リオンは彼女の秘部にそえていた手を動かしはじめた。
 ひそやかに疼く場所への新たな、そして強い刺激に、輝夜はびくりと震える。

「も――もう少しって……?」
「もう少しおまえが気持ちよく、やわらかくなるまでっていう意味だ」
(やわらかく……?)
 リオンの指が踊りはじめたそこの肉は、もともとやわらかいように思えるのに。
 輝夜の当惑をよそに、巧みな指先は、淫蜜にまみれた秘裂やその周辺を痛めないようにくすぐっていく。濡れた指はふっくりとした花びらの上を何度もすべり、くちゅくちゅと卑猥な水音を生みだした。今まで意識したことのない場所が、他人の手でこんなにも敏感に震えてしまうことが信じられない。まるで悪夢のようだ。

「ん……ぁ、いや……ッ」
「こら、力むなって」
 舌でなぶられるよりは恥ずかしくないかと最初は思ったが、浅ましい表情を余さずリオンに観察されてしまうのは、別の意味で耐え難かった。けれど彼に抱きしめられていては逃げ場はなく、輝夜は男の胸板に額をこすりつけることで、なんとか顔を隠す。
(ああ……男の人の身体、だ)
 しなやかな筋肉の張りの向こうからリオンの鼓動が聞こえてきたのに、はたと瞬く。
 思ったよりもずっと早い鼓動に驚く。愛撫が残酷なほど巧みだから、リオンは経験豊富で余裕があるのだろうと憎らしく思っていたのに、心臓がこんなにも――輝夜と同じか、それ以上に熱く脈打っているなんて意外で、不思議だった。

 熱い疼きを増す秘所への愛撫に陶然としながら、輝夜はいつしか誘われたようにリオンの胸元に手を這わせていた。うっすらと汗ばんだ、弾力のある肌の感触。はだけたシャツの隙間から手をすべりこませてみれば、細い指先が、彼の胸の突起に引っかかる。
 リオンが息を詰める気配に、顔を上げると、色違いの瞳が熱く濡れているのが見えた。
 ほんのり紅潮した、何かに耐えるような表情は色っぽく、輝夜は思わず頬を熱くする。

「ったく……何も知らないくせに煽るなよ」
「煽るって――わたしがあなたを、ですか?」
「……自覚なしか。そこが可愛いんだが……時には痛い目を見るかもしれないぞ」
 挑発的な微笑みと、凄絶な色香で輝夜を圧倒しながら、リオンの顔が近づいてくる。
 深い口づけと前後して、潤った花びらをかき分けながら、蜜壷の口を焦らすように何度も撫でられる。本能的に身をすくめた輝夜を、リオンは空いている腕できつく抱き、
「――ひぅッ……!?」
 つぷりと、花びらの奥に指をもぐりこませた。まだ第一関節までだったが、輝夜は身体の中心を襲った初めての異物感に喉を引きつらせる。ぬめる内壁をくちくちと撫でられれば、なんともいえぬ刺激が頭まで突き抜けた。我知らず、つま先がピンとそり返る。



2010.09.01 up.

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