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 首筋から鎖骨へ、大きく上下する乳房を味わいながら、みぞおちに。
 リオンの顔がゆっくりと下方に移動していくのと前後して、花が咲くように衣裳を剥かれていくが、輝夜は聖玉だけは枕元に大事に置いてくれと願っただけで、もう抵抗はしなかった。
 今日知り合ったばかりの男に、裸身をさらす羞恥よりも――
(……早く終わらせて)
 その気持ちが強かった。
 この混乱ばかり呼ぶ行為さえ終わって、リオンが身体を離してさえくれれば、おかしな迷いも消えるはずだからと。

 しゅるりと腰紐が解かれる音が、耳に突き刺さる。緋袴が脚から抜かれ、とうとう白小袖の前を開かれたときはさすがに硬直したが、ぎゅっと目を閉じて耐えた。

 ――『どうしてもおまえが欲しいんだ』

 脳裡で反響するリオンの言葉を必死に追い払っていると、力強い手で膝が割られた。
 ありえない場所に空気を感じ、ぎょっとして顔を上げると、あられもなく開いた両脚の間にリオンの長身が割りこんでいた。色違いの瞳が、輝夜の脚の付け根を見ている。
 激しい羞恥でうろたえたとき、リオンが彼女の秘められた場所へと顔を近づけた。
 敏感なそこに吐息を感じた刹那、かっと血が昇り、思考回路が一瞬で灼き切れる。
「! や、いやだッ、何して――」

 とっさに膝を振り上げてリオンを蹴り飛ばしてしまう。
 ろくに力が入っていないとはいえ、不意打ちでこめかみを膝蹴りされたリオンがよろめく。輝夜はその隙に夢中で寝台から逃れようとするが、もちろん、すぐに捕まえられてしまった。
 強い腕で腰をつかまれ、押しつけるみたいにして再び敷布の上へと組み敷かれる。
 瞳に宿る光が剣呑だったから、今度こそ怒らせてしまったかと身を縮めたが――
「ばか、怯えるなよ。俺は別に怒っちゃいない」

 リオンはため息をつくと、瞳にみなぎらせていた鋭い光をすぐに消した。
 代わりに、諭すような苦笑いを頬にのせ、怯える輝夜を慎重に説得する。
「いいか輝夜。これから血が流れることは知ってるんだろ? ってことは、するのに、最初は痛みがあるってことも想像できるな?」
 言われてみれば……と輝夜はうなずいた。今まで想像したこともなかったけれど。
「痛くないようにするには、こうするのが一番いいんだ。恥ずかしいのは無理もないが、少し我慢してくれ」
「で――でもそんなところ、綺麗じゃない……」
「俺がしたいからするんだ。いい子だから、おとなしく俺にまかせろ。な?」
 そんな言い方はずるい。
 あやすような口づけを受けた輝夜は、悔しげに唇を噛んだ。
(まるで、わたしが聞き分けのない子供みたいじゃないか)
 こんなこと、わたしがしたいわけじゃないのに。

 リオンの頭が再び下腹部のほうに退いていくのを、輝夜は泣きたい心地で見送る。
 男はまず彼女の膝に口づけると、そこから唇をすべらせて、内股にゆっくりと顔を近づけてゆく。ときおり強く吸われれば、陽光を知らぬ白い肌に薄紅色の痕が残された。
 なぜだろう――その小さな刺激だけでも、身体の奥深い場所がきゅんと疼くのは。
 男のすることを最初は恐れと一抹の好奇心から見守っていたものの、やはり羞恥に耐えきれなくなった輝夜は、目を閉じ、さらに両腕で顔をおおった。
 だがそうすると逆に、肌を這う指や、吐息の熱さを鮮烈に受けとってしまい――
「……ッひ……!」

 何もさえぎるもののない恥部に突然口づけられて、輝夜は腰が抜けそうになった。火をつけられたように羞恥で身体が燃えるが、リオンは今度は彼女を逃がしてくれない。細い腰を指が喰いこむほど強くつかんで、敏感すぎるそこに信じられない悪戯を始める。
「あ! ッやぁ……はッ……!」
 今までの行為で火照りに似た熱を持っていた花弁が、男の指先で丁寧にかき分けられていくのを感じて、輝夜は硬直した。――恥ずかしい。気が狂うほど。リオンの指が輝夜の胎内からしみでた何かで濡れながら、繊細な柔肉を可愛がるようにさわさわとうごめく。
 一番やわらかい部分にねっとりと舌が押しつけられたときには、輝夜の精神は限界を超えて、すすり泣きをもらしていた。

 それなのに指を噛んでも、喉の奥から甘い声がこぼれてしまうのを止められない。
「……ぁん……ふ――あぁッ!」
 ふっくらとした秘裂を丹念になめてほぐされる絶妙な刺激に、割れ目の中で恥らうようにくぼんだ部分から雫があふれる。リオンの舌はその泉への入り口も意地悪くつつき、ゆるゆると円を描くようにしてこじ開けていく。卑猥にすぎる蹂躙に、自分の身体から何かが揺り起こされるのを、輝夜は混乱と眩暈の中で感じた。
 ぴちゃぴちゃと、猫が水をなめるみたいな音が耳を犯す。熱い疼きが下腹部で渦巻き、やわらかに蕩けた秘唇を舌でなぶられるたびにそれは重く深くなる。――未知の陶酔は恐ろしいのに、奇妙に後を引いた。美味しいお菓子を食べたときのように、もっと欲しいと身体が思ってしまう。こんなこと恥ずかしい、はしたないと悲鳴を上げる理性を超えて。
「ッあ……だめ、そんな……の――」

 ――輝夜のあえぎに鼓動を乱しながら、リオンは彼女の処女地をやさしく蹂躙した。キスに応えた彼女の唇を思わせる、まだ男を知らない花が、リオンの熱を帯びた愛撫で、淫蕩な色に染まっていく。濡れながら、女の色と香りをあふれさせる。
 時に幼く、時に妖艶な彼女の痴態を、自分以外の誰も知らないのだと思うとたまらず、リオンは下肢に熱がとぐろを巻いて溜まるのを感じた。愛撫と荒い息の隙間でささやく。
「だめ、じゃないだろ……? もう、かなりぐちゃぐちゃだぜ」
「やッ、だ……意地悪なこと、言わないで……」
 かすれた哀願の声にも欲情を煽られ、リオンの狂暴な笑みが、より闇を濃くする。
 涙ぐみ、身をよじって恥らう輝夜の姿は可愛らしいが、まだだ、とも思った。
 羞恥など頭から吹き飛ぶくらい、情欲という名の海に溺れさせたい。
 はるかに遠い地で生きてきた異国の少女。野獣になっている俺と同じ場所に引きずりこんで、他のどこにも行けないように閉じこめてしまえれば。



2010.09.01 up.

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