** 恋愛自転車操業  **




     #1. カモナマイホーム ホカホカ家族(偽)


      煩雑な繁華街を路地二つばかり離れると、取残されたように古い住宅地が並び、
      その真ん中に緑生い茂る一角があった。


というよりも空き地近いそこは、色褪せた祠を中心にずんぐりした楕円に広がる。 縁には大人二人分くらいの胴中をしたそこそこ古い樹木が心地良い日陰を作り、三つ置かれたベンチには大抵、年寄りか子連れの主婦がボンヤリと腰掛けて、ボンヤリうららかな空を眺める。 

バンは入り口近くの椎の木の横に停められた。 運転してるのは若い男、助手席には若い女。 そして男女が後部席からワラワラ降ろすのは、小さいの大きいの取り混ぜ、姦しい数匹の犬ども。 犬達はそれぞれ長く紐がつけられている。 その紐の先を男女は手繰り寄せ、数本ずつそれぞれの腰のベルトに固定した。 けれど犬らは土の匂い風の香りにシャカリキになり、中でも大きなレトリバーが遣る気満々のダルメシアンを引き連れ猛然とダッシュを掛けた。 

途端に独楽のように、バンの後部席を転がり滑る男。


 「馬ッ鹿じゃな〜い? モタモタしてるからよッ!」

 「か、絡まってます・・・ちょ、・・・助けて下さいッ、」

仰向けに引き摺られる男を女 ―― まだ若い娘は見下ろし舌打ちをする。 

ズルズル土埃に塗れる男の頬を、暢気なチンがメロメロと舐めた。 娘は面倒臭そうにデカイ犬二匹を呼び、緩んだ紐を引いて男を解放する。 へにゃりと笑顔を作った男の礼を、娘は無視して歩き出した。

腹立たしい。 滅茶苦茶腹立たしい。
麗しい快晴、四月の爽やかな朝を何故あたしは、どうしてこの馬鹿とッ!?



昨夜、飲んで来るからと家を出たホクジョウは変なテンションで戻り、 「今日から新しい仲間です!」 と引き摺るように連れてきた男をミルルの前に突き出した。 驚いた事に男は昼間、浮気調査の尾行中、カモフラージュに利用させて貰った通りがかりのオノボリ青年だった。 オノボリ君ははナカバヤシ タクヤと名乗る。  が、そんな事はミルルにとってどうでもいい。


 『コイツにナニが出来るのよッ!』

 『色々〜』

 『なにもオトコ引っ張り込む事ナイじゃないッ!』

 『エー仲間だよ〜ミルルちゃんとおなじ仲間〜』

埒があかないホクジョウに苛つきながら、モジモジする男を不躾に眺めてやると、男は見る見る顔を赤くして もう一度逢えて嬉しいです・・・ と蚊の鳴くような声で言った。 


 「俺、逢えて嬉しいです。 これからも宜しくお願いします・・・・。」

 「あんまりしたかナイけど・・」

お断りだとミルルは思った。

 「ェえ、まーねーアハハ知り合い? 顔見知り? 年近いし、ねーミルルちゃんよか一個上だもんねー若い若い! いやぁ〜家族が増えたねぇ! あはは! 楽しいねぇ!」

空転するホクジョウの笑いだけが、シンとした夜のマンションに響く。 

そして結成間もないエセ家族は サッポロ一番 に卵を落として遅いディナーになった。 ちなみ本日の献立はココでのスタンダードである。 ミルルは掃除も洗濯も得意だが、料理が出来ない。


 「でも、喧嘩得意だしな、」

ホクジョウがズルズル麺を啜り、最強・・・とシミジミと言った。
すると犬のような青年タクヤが、オドオドと言う。


 「あのォ・・・料理なら俺、明日から作りましょうか?」

 「うわぁ! メシ作れるのタクちゃんッ!」

喜色満面のホクジョウを般若のミルルが睨み


 「ソリャ有り難いわねぇ・・・・」

地を這う低音で言った。


 「で、でででも俺、喧嘩出来ないし・・・」

 「だよね〜、はは、コリャ上手い事いってるなァ〜」

 「ですねぇ〜あはは・・・」

不穏な始まりに震え、部屋には虚しい笑いが二つ。 

そして言葉通りにタクヤは今朝、素晴らしい日本の朝ご飯を作り、お昼は親子丼を食べましょうとミルルに微笑み、ハイどうぞとホクジョウには手弁当を渡した。 ナニやら猛烈に負けてる気がした。 激しい焦燥がミルルを襲う。



 「コッチは神経切れそうなのにッ!」

みれば、すっかり仲間扱いされてタクヤは犬たちと転げ回り、日向の老人に目を細められている。 
早くも地域に溶け込んでいる。 すっかり侵略されてる気がした。 

      そうは行くモンですかッ! 

ミルルは小声でレトリバーを呼ぶ。 タクヤには聞えないが犬はミルルの声を聞き取りワフッと猛烈にダッシュする。 ドテンと胴中を引かれ、もんどりうつタクヤがギャッと情けない声を上げた。

      ザマヲミロ!


本当ならホクジョウと来る筈だった。 週に二回、犬と戯れホクジョウと過ごすトキメキ満載の二時間だった筈なのだ。 まァソリャ、一緒に居てナニがどうなる訳でもないが、だけどでも、万が一に賭けるのが女として生きる誇りと意地なんじゃないの? と小娘モリサワ ミルル20歳は小さく拳を握る。 ナニがどうなるか、なったら奇跡だけどでも、よりによってあんな伏兵連れてくる事ナイじゃないッ! 

      それッて挑発ッ!?


 「ミルルさぁん・・・犬どのへんに、」

 「ウルサイッ!」

怒鳴られ縮こまる男は、意気地のない駄目系の愛玩犬に似ている。 


 「・・・・コイツがライバルって訳?・・・・・」

 「ハイ?」

おどおど覗き込む目は、構ってくれオーラに満ち満ちる。 そう、この最悪のライバルは選りによって自分に惚れてるのだと、娘はその事実にすらキィ一ッ!となる。 

     おまえなんかッ! おまえなんかッ! おまえなんかッ!


                                  **


ミルルのまだ浅い人生を振り返れば、一言で底辺。 主観抜きで判断しても、結構最悪だよねとミルルにも断言出来た。 家出娘の母親と、チンピラ上がりの父親。 勢いでデキちゃったミルルの毎日とは、ワイドショーの再現フィルム並みにデンジャラスでリスキー。 しかし不思議なもので底辺の生活がある場所、大抵周囲もソレナリの御仲間が生息し、ミルルは自分の家がトクベツ碌でもないと思った事が物心つくまで無かった。 なにせ溢れていたから。 仲良しのチカちゃんのお父さんがシャブでパクられただとか、ピンサロ勤務のケンちゃんのママが客に腹を刺されただとか、言って見れば向かうところ味方ナシの危険地域で育ったミルルにとって、最大の敵は両親。 

とにかく何もしない母親だった、良く育ったよなとミルル自身それを奇跡だと思う。 いわば育児放棄されてたミルルに優しくしてくれたのは、意外にも当の母親ではなく母親の不倫相手、日替わり愛人等だった。 彼等の暮れる御小遣いや食料、プレゼントでミルルは幼い命を繋ぐ。 そしてたまに帰ってくる父親は母親を殴るか呑んだくれて眠るかだったが、そのどちらでもない時は気でも触れんばかりにミルルを溺愛した。

 ―― あぁミルルちゃん、パパはおまえがその内、くだらないスカタンどもに狙われるのが耐えられない、だってこんなに可愛いんだから!―― 

そう繰返す父親は、小さなミルルに護身術と称し格闘技諸々を習わせた。 僅かのスキンシップにも飢えていたミルルは、敢えて逆らう事もせず、それらをスポンジのように吸収し見る見ると腕を上げる。 その成果はミルル小学三年生、凶暴な五年男子をハイキックで倒した事に現れる。

 ――イイぞッ、ミルル! 不届きな男どもはガシッと息の根止めてやれッ!―― 

大喜びだった父親だが皮肉にも、数年後ミルルにノックアウトされる最初の不届きモノとなったのは、他でもないその父親自身であった。 


アバズレの母が近所の若い工員と駆け落ちしたその晩、泥酔した父親はミルルを引き摺り倒し圧し掛かった。 しかしその瞬間、腹部に強烈なニーキックを受け、半ケツでそっくり返る父親。 ヨロヨロ立ち上がる隙も与えず、間髪入れず顎を蹴り上げ、駄目押しとばかりに右足首を潰す容赦のないミルルの攻撃。 

だってパパは言ったのだから、

 ―― ミルル、大事なのはトドメを射す事だ。 
     半端に倒して追いかけられてみろ、もっと酷い目に遭うのはわかるだろ? ――

 ほんと! その通りだわ、パパ 


ミルルは父親が正しかった事を実感する。 
そして父の教え通り、足のつかない金目の物を奪い、素早くその場を逃走した。 体育祭も近い高一の秋であった。


そして色々あった。 色々と遣ったがミルルは、自分は運が良い方だと思う。 

最初に潜り込んだデートクラブでスカウトされて、ミルルはAVに出る事になった。 一本目は温い処女喪失ものだったが、二本目ミルルは自ら電卓片手に交渉し、かなりハードな陵辱モノに挑戦。 それが当たった。 たちまち続、続々が出来、すっかり社長自らマンションで囲うドル箱女優となったミルルだが、会社は4本目を待たず別件で警察の手が入り、芋ヅル式にミルルが年を誤魔化していた事もバレた。 ならば父の教えを守り、金目の物を忘れずに懐に、逃走してソープへ。 



 「・・・輝いてたわよね、あたし・・・」

土埃を上げ犬どもが空き地を走る。 

腰を降ろしたすぐ横、クゥンと鼻を鳴らさん風情で、犬男が自分の横顔に見蕩れているのに腹が立つ。



正直なところ、ソープは天職だった。 あそこは生甲斐と遣り甲斐に満ち、裸一貫腕が売り物なわかりやすさも、実にミルル向きだった。 そして挑戦者ミルルは、その美貌と恵まれた肢体にも助けられ程なくその界隈でナンバーワンを張る事になる。 とりわけ大台、日給七万円からのダッシュは目を見張るものがあった。 雑誌のフードル発見のコーナーにも何度か載った。 ミルルの切抜きを持って、指名来店する客も後を立たなかった。 しかし、事件は起きた。 店の女の子達が、次々と悪質なストーカー被害に遭うようになった。

といっても付回されるとかではなく、あくまで姿は見えない。 しかし見張られているのだ。 行動を詳細に記したレポートが、自宅に投函される。 消印は無い。 つまり犯人自ら出向き投げ込んだという事。 密かに家宅侵入され、微妙に部屋の中を弄られた子も居た。 家に帰ったら、浴槽に適温の湯が張られていたという。 そしてついにミルルもその被害に遭う。 自宅マンションのドアに赤いペンキでメス豚と書かれた。 廃棄した筈の生ゴミを漁られた。 ゴミの中から取り出した化粧品の壜をわざわざドア前に並べられた。

     やる気ねッ?! 

ミルルの闘志がムクムクと湧く。 


だが大事な商品に手を出されたとあらば店側も黙っちゃおらず、稼ぎ頭のミルルは送迎付で出勤し、諸々の調査の為雇われたのが 【なんでも屋】 のホクジョウだった。


 「あたしの周りにはあんな奴、居なかったし・・・・」

油の抜けた男だと思った。 商売柄男は嫌になるほど見ているが、ホクジョウはその誰とも似ていなかった。 軽薄なようで不思議と人好きがして、だけど立ち入らせなくて、力が抜けた変な男。 気になるからミルルは機を見てホクジョウに近付き、歯ぶり良く飯を奢り、警戒心の無さに甘えてボチボチ身の上話をした。 ホクジョウはそれらを面白そうに聞いたが、非難も同情もしなかった。 つまりナシのつぶてだった。 そうなるとミルルはついつい美貌と肉体を武器に、相手をひれ伏したくなってしまう。 

が、それもホクジョウには通じなかった。 際どい誘惑にもホクジョウはエッチな本で大喜びする小学生程度の面白がりかたしかせず、で・・そう言えばね・・・と、すぐに鳩が電線にとまってるといった日常をスルリと紛れさす男だった。 だから、ミルルは惚れた。 男に惚れるのも初めてだったし、惚れた男に守られているというのもミルルにとって初めてのシチュだった。 当のホクジョウはと言えば、ミルルの積極的なアプローチをのらりくらり交わし、飄々と情報収集に回る。 

そんなある日のイキナリ、見えない犯人との対決の時が来る。 


その日、朝から頭痛が酷いミルルは中途で店をはね、タクシーで自宅マンションへと戻った。 そこで、今まさにドアをペインティングしようとしている男に遭遇する。 

 アンタねッ!! 怒鳴りつけるミルルに逆上した男がスプレー缶を投げつけ飛び掛る。 と、滑り込むように間に入ったのはホクジョウだった。 「逃げろッ!」 自らを盾に叫ぶホクジョウに あぁん素敵・・・とトキメイてしまうミルル。 しかし発狂する小学生(メガネ)のような男のヘナチョコパンチに呆気なくホクジョウは倒れ、打ち付けた背中を海老のように丸め 「け、警察・・・」 と言った。 全然駄目じゃん・・。 ならば ウヲォ〜! と飛びかかる男を迎え撃つのはミルルの背負い投げ、後頸部への手刀、念の為に施したトドメの右上腕間接外しだった。 

流れる技は僅か十数秒で完結。 屍と化したストーカーメガネ。
息も切らさぬミルルに、尻餅のまま拍手を贈るホクジョウが言う。

 ―― 御見事ッ! なァ、ミルルちゃん、俺と組まない? 俺の相方にナンナイ? 
     儲けは期待出来ないけど、でも、俺ら抜群に上手く遣れる気がするんだけど・・・・  −−



 「・・・そう言われたら普通、そう思うじゃない・・・・」

ポメラニアンにブラシを掛け、雑種の柴にトッテコ〜イと黄色いテニスボールを投げた。 
何故か犬男もボールに向かって走る。


 「ミルルさぁん! 投げますかァ〜?!」

 「アンタが取ってどうすんのよッ!!」



何しろミルルは行動力の塊だから、素早く金目のものを換金し、処分し、翌日には店をさっさと辞めるとナンデモ屋のあるくたびれた雑ビルへと向かった。 ソリャそうだろう 漸くプロポーズされちゃった! と思ったのだ。 文字通り力技で落としちゃったわよッ! と思ったのだ。 そしてウレシハズカシ同棲の始まりをプロフェッショナルな寝技でスタートさせる心積もりだったのだが、イキオイよく迫ったホクジョウのうろたえ方は半端じゃなかった。 

      何で? 違う! どうして? イヤその・・・ 

埒のあかない遣り取りに焦れ、この際レイプだって辞さないミルルに、怯えた表情のホクジョウはポロリと告白する。

 ―― ・・・だって、俺ゲイだもの・・・―― 


      嘘ォッ!?

嘘じゃ無い証拠に、どうしたってホクジョウは勃たなかった。 

そして押しかけ同居に踏み切った数日後、身の丈2メーター近い凄いオカマに 「可愛ィ〜ン!!」 と出会い頭抱き締められ、 「馬鹿馬鹿、ダメヨ、ホクジョウちゃんは生粋のゲイだからッ!」 と力強い駄目押しをされる。 エキセントリックなオカマ・ザボンは、三度のメシより女の子が大好きな筋金入りのビアンだった。 ザボンお姉さまはキュートな仔猫=ミルルを一目で気に入る。 そして 諦めてアタシと愛の巣を作りましょう! と誘い、かわし、すっかり女友達として交友を深める事早二年。 

そんな頼りになるマブダチ・ザボンからの定例メールで、押しかけ男がホクジョウの客だった事はバレバレだった。 ザボンのいかがわしい商売も、そこをホクジョウがちょくちょく利用してるのもミルルはとっくに知っていたが、ああ云うのは別に恋愛とかじゃないし・・・と元フードルの端くれとしてタカを括っていたのだ。 

が、 

   ―― ついにホクジョウちゃんてば、お持ち帰りの水揚げまでしちゃったしぃ! ―― 

メールを見た瞬間怒りで目の前が真っ赤。 

ミルルだってホクジョウに誘われたのだ。 相方になってくれと口説かれたのだ。 
だけどソコに恋愛感情はさっぱりなく、なのにこの男にはオオアリと来ている。 



 「い、一遍くらい寝たからってイイ気になんじゃないわよッ! 一緒にやろうって口説かれたのはアンタだけじゃないんだからねッ!」

怒鳴られ後退りする男の足元、急に下がンなよとポメラニアンが泡吹きそうに怒る。


 「や、お、俺? ち、違いますッ!」

 「ナニがよッ! ナニがどう違うのよッ! あんたそんなに凄い技持ってる訳? あたしと違って ボク、弁当も作れるしぃ〜 とか鼻高々なんでしょッ?!」

リールを引く手にリキが入り、ナニすんだようとダルメシアンが首を曲げる。 
キョトキョト視線を泳がせた犬男は、斜め下を見ながらモソッと言った。


 「・・・・俺、ホクジョウさんとはその・・・・してませんから・・・」

 「へぇ〜〜          ・・・・・ホントッ?!」

微かな追い風がミルルに向かって吹いた。


 「え・・と、間違いだってわかって・・その・・俺行くとこ無いしって言ったら、したら、俺んちなら従業員募集中だぜ? って・・・」

 「誘われたのね?」

 「ハイ・・・」

でホイホイ付いてきた訳だ。

そんなイカガワシイ出逢いをした男によくもまァ、普通売られたり殺されたりしても不思議のないシチュだというのに滅茶苦茶運がイイじゃない畜生ッ! ――と云うのはまんまミルルにも当て嵌まるのだが、取り敢えず僅かの勝利に賭けるミルルは、不屈のチャレンジャーだった。


 「・・・じゃ、手加減しないわよ・・・・」

 「・・・ミルルさん?・・・」


寝たか寝ないかソレが微妙な勝敗を決めるなんて事、男も女も大差ないとミルルはその戦歴で良く知っている。
 敵が未遂なら、コッチの出方も違うのだ。 

イケる、イケるかも、まだまだ負けではない。



 「ラッキー、ダッシュッ!!」

イカせろよ、走らせろよと鼻息荒いレトリバーにミルルは叫ぶ。
ラジャ! と走り出すレトリバー、ドデンとひっくり返るタクヤ。


 「だから急に走らせないでくださいようッ!」


    諦めないんだから! あたしはコレキシで諦めないんだから! 
    ナニさッ、ホモの一人や二人、あたしが身体張って転がしてやるわよッ!!


ミルルの闘争心は逆境に立つことで、更に紅蓮の炎を燃やす。 

尻を擦るタクヤはゾゾゾと背中が冷えるのを感じた。 
依頼人宅で草むしり中のホクジョウは、ただ事でない悪寒に 風邪かな? と額を押さえた。 


ミルルの指がゴキリと不吉に鳴った。 









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