転校初日は慌しく過ぎていった。
気がつくとお昼を知らせるチャイム。
「ねぇさん、お昼はどうするの?」
「途中のコンビニで適当に買ってきたの」
「そっか、じゃぁ一緒に食べようか?」
うんとにっこり微笑んだ時、がらりと教室の扉が開いて目つきの悪い男子生徒が睨んできた。
「なに? あの人 ・・・・・」
「A組の獄寺君よ ・・・・」
小声で側にいる女の子たちにこっそり聞く。
着くずした制服は、それはそれで似合っていて、女の子達の反応も頷ける。
しかし、こう言う輩は係わり合いにならないに限る。
朝もヘンなのに合ったばかりだしと、ふと何か忘れているような気が。
あっと、朝のあの風紀委員の言葉を思い出した時、懐かしい声が聞こえた。
「ちょっと、獄寺君 ・・・・・・ そんなに睨んじゃダメだって」
「すみません、十代目」
(十代目? えっ? ツナ?)
「あっ、ちゃん!」
「ツナ君、久しぶり!」
手を振るツナに小さく手を振り返すと、ひょっこりと長身の男の子の顔が覗く。
「あれが、ツナん家に下宿するって子か? 可愛いじゃないか」
一言ツナに声を掛けると、同じように人懐っこい笑顔で手を振る。
山本君だ!と、先程の女の子が、ドキッとした表情で名を呼んだ。
少しびっくりしている女の子達に、照れ笑いしながらツナ達が待つ扉へと急いだ。
「へぇ〜そりゃ災難だったな」
愉快そうな山本に、場の雰囲気はさらに和む。
教室を出て、お昼をかねて屋上で事の経緯を話した。
自宅に来なかったをツナはかなり心配していたらしい。
「だいたい、あのエロ医者に迎えに行かせる方が間違ってんすよ!」
言葉の通り、朝便で着くを迎えに行ったシャマルは、バスの乗り場と行き先を告げて、同じ飛行機で到着したらしい金髪美女のナンパへと行ってしまった。
しかし、シャマルの教えた行き先はこの高校で、ツナの家に行けると思っていたは当然のごとく迷ってしまい、風紀委員のお目に止ってしまう事となった。
「本当に、ごめんね。ちゃん」
「いいよ。別にツナ君が悪い訳じゃないし、無事に授業にも間に合ったから。
でも、同じクラスになれなくて残念だったな」
にっこりと微笑み、違うクラスをすこし拗ねた表情で悔しがる。
その仕草に引かれるように、どきりと頬を染め視線をそらす三人だった。
(さすがに、『リングの花嫁』ってだけあるよなぁ。
本当に、ちゃん、綺麗になった ・・・・・・)
自分の事の様ににししと笑みを浮かべるツナに、そうそうと危ない香り。
「この高校、規則厳しいんだね。
今朝も、風紀委員って人たちが立っててびっくりしちゃった。
どう見ても、風紀委員って感じじゃないよね」
あの人たちとコロコロ笑う。
幸か不幸か、並盛中学時代と同じ形で、獄寺や山本を初めとしたファミリー(リボーン
談)が、そのまま高校へと進級した。
そう、あの雲雀や風紀委員の面々も同じ様に。
背格好は大人びたが、中身は余り変化がない。
そんな『並』を地でいくツナ達の中身はともかく見て呉れの成長ぶりだ。
呪いだかなんだか知らないが、リボーンが全く成長していないのだから、その仕業とも考えられるのだが。
「でも、あんまり当てにならないかもね ・・・・・」
「なんで?」
の言葉に、不吉な予感が過ぎる。
不安そうにツナが問うと。
「だって、職員室聞いたのに、全然違うとこ教えるんだもん。
三階指して待ってろなんて」
「「「?!」」」
「さっ、三階って、応接室だよ!!!」
二つ目のおにぎりのラップの紐を摘まむの両肩を、引きつり顔のツナが掴んだ。
「ちゃん、それって、もしかして、雲雀さん?」
「ヒバリ? う〜ん、名前は聞かなかったけど、学ラン羽織った人」
綺麗な人だったよと言うより早く、頭を抱えて騒ぎ出す。
「ちょっと、ツナ君? どうしたの?」
が、雲雀と呼ばれた人物を知るのは、その少し後だった。
2007/3/14
執筆者 天川 ちひろ