晴れた気持ちのいい朝。
しかし、それを楽しむ余裕は欠片もない。
「もう ・・・・・ 転校初日に遅刻なんて ・・・・・」
チラリと愚痴が零れる中、一生懸命走りぬき、なんとかチャイムがなる前に、校門までたどり着いた。
(なっ?! 何、この人たち ・・・・・・・)
今時流行らないリーゼントのいかにも目つきの悪そうな学ラン姿が校門に立っている。
よく見ると腕章には、風紀の文字。
中学じゃあるまいし、珍しく校則の厳しい学校なんだなぁと思って通り過ぎようとすると。
「ねぇ、君。 他校生は立ち入り禁止だよ」
「?!」
気配もなく左斜め前に立って急に話しかけれる。
「あっ、いえ。私は、今日からこの学校に通うんです。
急だったので制服間に合わなくて ・・・・・・」
「ふ〜ん。君がそうか ・・・・・・。
今時、セーラー服着る高校なんてあるんだ」
小ばかにした笑みを浮かべるその男子生徒に嫌悪を感じながらも、少しだけその端整な顔立ちに見惚れた。
「あ ・・ でも、貴方も学ラン ・・・・」
言葉の途中で、チャイムが響く。
「すっ、すみません、職員室はどっちでしょうか?」
問いに無表情で、あそこと三階を顎で指す。
三階なんて変だなぁと思って視線を再び戻すと、
「あそこで待ってて」
「へ?」
「解かったね。 ちゃんと待ってないと 『咬み殺す』よ」
「えっ? ・・・・・・・」
抑揚のない言葉なのに、なぜか『咬み殺す』だけが鮮明に鼓膜に響いた。
ぼんやりと後ろ姿を見送っていたが、はっと今の状況を確認してその男子生徒とは別の校舎へと走り出す。
「?! ・・・・」
(また ・・・・・)
迷っている途中、何度も感じた視線を学校の中でも感じた。
振り返ると先ほどと同じで、何も視界には映らない。
「なんなんだろう ・・・・・・」
かなり気になるが、今はそれ所ではない。
少しだけ後ろ髪を引かれる思いで、校舎へと急いだ。
これが、の雲雀恭弥との初めての出会いだった。
2007/3/14
執筆者 天川 ちひろ