二つ紅 〜七
地下特有のひんやりとした気温。
それでも滲む汗は、対峙する『事』の大きさを物語る。
懐中電灯を頼りに暗い階段を降りて行くと、少し開けた場所に出た。
ここが、秘密の集会所なのだろう。
だとするとの目指すモノは、もうすこし奥だろう。
南賀ノ神社の地下の集会所。
写輪眼の秘密が書かれている場所。
イタチに黙って此処に来た事を後ろめたく思う。
でも、今の自分に出来る事は、少しでも真実に近づく事だと思っている。
たとえ、何も出来なくて苦しむだけの結果でも。
さらに奥へと進み、サスケが立っていた衝立障子のような物の前へ。
ゆっくりと懐中電灯で追いながら、書かれている文字を追う。
小さなため息と共にへたへたと座り込んだ時、ぽうっと壁にあつらえられた松明に火が灯った。
「?! ・・・・・・・・・ 」
「なぜ、此処を知っている? ・・・・・・・」
急に明るくなった室内に、視界は一瞬遮られたが、少しずつなれた先に浮かぶその姿は見紛う事はなくて。
「・・・・・・ どうして ・・・・ ? ・・・・・・」
「アイツに聞いたのか?」
冷酷に見下ろす瞳は、最後に見たソレとはまったく違って。
答えないの傍らに片膝を付いてしゃがむと、顎を取り強引に上を向かせて視線を合わせる。
「知ってどうするつもりだ? 一族でないお前には関係のない事だろう ・・・・・・・
! 」
「?! ・・・・・・」
強くなった語尾に冷酷な視線は怒りを纏う事を悟った。
まるで、一族の呪縛に自分から係わろうとしたを責めているようで。
――― どうしてこんなにも似ているのかな・・・・・
自分に向けられる不器用な優しさに、気がつけば涙が零れていた。
「ごめんなさい ・・・・・・。 でも ・・・・・ 」
顔を背け指から逃れると、悔しさにぎゅっと目を閉じて、拳を握り締めた。
「・・・・・ 読めなかったの ・・・・・・ 何が書いてあるのか、ぜんぜん解かんない ・・・・・
私じゃだめなの ・・・・・・
私じゃ、何も出来ないのよ!!!!! .....」
の叫び声は湿った地下室の空気を振るわせる。
伝わるソレにも、表情を代えない瞳。
しかし、深く握り締めた拳が思いを受け止めていた。
「イタチにだって、サスケ君にだって、迷惑かけてばかりで ・・・・・。
大切な家族なのに、私、何にもしてあげられない ・・・・・・・・。
私、なんで此処にいるんだろう ・・・・・・」
――― 家族 ・・・・・・ ?! ・・・・・・・
言葉に出来ない思いはその指先を震える肩へと導く。
しかし、小さい音を響かせて思いは拒絶された。
「私を、殺しに来たんでしょう? ・・・・・
いいよ ・・・・・・ サスケ君 ・・・・」
涙で濡れる瞳は、悲しみと共にサスケを映した。
「君になら、いいよ ・・・・・ 。
だから ・・・・・・ だから、少しでも、イタチを許してあげて ・・・・・・。
私、何にもしてあげられなかったから ・・・・・
その上こんな事になっちゃって ・・・・・
私なんて、居なくなればいいのよ!
私さえこの世界に来なければ、二人とも余計な思いしなくて済んだのに!
だから、はやっ ・・・ ?! ・・・・ ん ・・・・・」
冷たい唇に言葉を遮られた。
最初は、何が起こっているのか解からなかった。
見開いた瞳は、じょじょに力を失いそのまま、サスケへと倒れこんだ。
「 ・・・・・・ 少し寝てろ ・・・・・」
言葉にそぐわない優しい囁きを零すと、を肩に担ぎ上げて、印を結んだ。
2007/12/8
執筆者 天川 ちひろ