二つ紅 〜参






 せっかくの花火も最初のうちだけで。
待ちきれないイタチに求められ、望むままに夜空に咲く花火のごとく、その華を咲かせた。

 優しい指先と激しい抱擁。
なのに、ひとつになった時は切ないほどにを求め続けた。






「大丈夫か? 無理をさせてしまった。すまない 」

 昨夜の余韻を気だるそうに身に纏うに、心配そうに言葉をかける。

「ううん、平気。 少しぼーっとしちゃっただけ」
「そうか。 なら良いんだが ・・・・・」
「だって ・・・・・・ 幸せなんだもん」

 真っ直ぐな言葉に柔らかな笑みを浮かべるイタチ。
その言葉の奥に気づかぬ訳はないのに、いつもと変らない笑顔に、も同じように微笑み返した。







 もしかしたら全て夢なのかもしれない。
気がつくと目覚ましが鳴り響いていて、見慣れたカーテンと枕元に積まれた『NARUTO』のコミック。
 天井に貼ったイタチのポスターに、おはようと挨拶して始まるいつもに一日。

 それが当たり前だったのに、もう、今となっては戻る事は出来なくて。
たとえ全ての記憶が消えていたとしても、決して愛し合った記憶は消えない。
 他の誰かを愛して、普通の結婚生活をしても、心のどこかでイタチを追っているのだろう。







「?! ・・・・・ どうした? なぜ泣く?」

 そっと涙を指で拭いながら、顔をのぞくイタチ。
憂いを含んだ表情は、本当に艶っぽくて、泣き笑い顔で頬を染める。

「ごめんね。 本当に幸せで、気がついたら涙が ・・・・・」

 えへっと甘えるを抱きしめると、ゆくりと印を結んだ。










「ここは ・・・・ 『終末の谷』? ・・・・」
「やはり、知っていたか ・・・・」
「・・・・・・・・ うん .....」


 冷静な自分に驚きながら、飛沫を上げる滝を見上げた。
 サスケが木の葉と決別したこの地に、自分が立っているのも何かの因縁かもしれない。


 元の世界に返されるのか、それとも生を終えるのか。


 暁から戻って、なんとなく思っていた。
何かの確証があるわけでもないし、もちろんイタチはそんな素振りは欠片も見せない。
 でも、このまま今まで通りの生活は続かない。
それだけは、解かっていたから。

「・・・・・ イタチの傍を離れたくない。
 イタチの居るこの世界を ・・・・・・・」

「・・・・・・ ・・・」

 柔らかな表情は変る事無くを包む。
その優しさがとても残酷に感じるのは、自分にとって最良の道が、最悪の道でもあるからだと解かっているから。

「どんな結果が出ようとも、私はこの世界で ・・・・・・ イタチが居るこの世界に居たい。
 命を落とすことになっても ・・・・・・」

「当たり前だ。 何も俺たちを別つことなどできはしない」


 力いっぱい抱きしめると、愛しそうにその髪に頬を寄せて言葉を放つ。
決して偽りのない言葉だと誓いながら。

「・・・・・・・ 少しだけ、待っていてくれ ・・・・ すぐに ・・・・・・」

 離された体の距離に、視界がひらける。
切ない表情の中にしっかりとした視線が浮かんでいた。
小さく微笑んでゆっくりと閉じかけた瞳に、白銀が映る。

「あっ ・・・・・・・・・ ?!」

  と同時にの意識は途切れた。


2007/8/16 
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執筆者 風見屋那智那