二つ紅 〜弐






 いつもは煩さを真っ先に感じる町の喧騒も、祭りのせいか和んで感じる。

 宵闇も迫り、山車に灯りが灯り始めたが、は少々沈んでいた。
まあ、予想はしていたことだが、目の当たりに見るとやはり凹む。

 ほんの少し品定めをしようとイタチの側を離れると、すぐに女の子が声を掛けてくる。

 道を尋ねたり、時間を尋ねたり、中にはあからさまなナンパもいて。
もちろん、そつのないイタチなので、あたりさわりなく対応、というよりあしらっているのだが、小さな溜息が幾度となく漏れた。

「人がまた増えたな ・・・」

 繋いでいた手を離して、かばうように肩を抱きしめると、大丈夫かと顔をのぞき込む。

「どうした?」
「?! ・・・・・ えっ ・・・ べ ・つに」

 どうかしたのと微笑み返すもイタチに通用するはずもなく、あのねとおずおず話してみると呆れ顔で息をつく綺麗な横顔。

「まったく ・・・・ そんな事か。俺がいつもどれだけ ・・・」
「そんな事って! ・・・・・ やっぱ落ち込むよ ・・・・・」

 少しすねたの横顔に、あっさり負けを認めた己にすこし意地悪く口の端を歪めると。

「心配するな。 今夜、ちゃんと教えてやる。  俺が、お前以外必要ないと言うことを」
「?!!!!!」

 まずいと思っても後の祭りで。
焦るに楽しそうな微笑みを浮かべるイタチ。
その笑顔に、どんな言葉も消え去ってしまった。黙って肩にまわされた手に自分の手をそっと重ねた。

「今夜は花火が上がるそうだ。さっき宿を手配しておいた。
 温泉という訳にはいかないが、ゆっくりしていこう」

「えぇ?! 泊まるの? 少し遅くなるけど、帰れない距離じゃないよ?」

「花火をゆっくり見るのも、久しぶりだ。
 お前がいなければ、一生見ることもなかったかもしれない」

「そんな大袈裟な ・・・・・。これからは、毎年見れるよ ・・・・・ 一緒に ・・・・ ね ・・・・・・」

「ああ、そうだな。
 お前の手料理が食べれないのは、少し残念だがゆっくりしていこう」


 『一緒に・・』の言葉に、一瞬浮かんだ翳りに気づかぬは、イタチの言葉に頬を染め微笑む。

 この幸せを欠片も疑わずに。


2007/8/6 
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執筆者 風見屋那智那