月満ちて叢雲の間より零れし明(ひ)に
起月 5
「白哉・・・?」
見上げた表情は、感情を読み取れない。
いつもの白哉ではない事を察知したは、本能的に後退る。
訪ねた白哉はいつも以上に無口だった。
気が進まぬ訪問だったが、顔を見るとやはり嬉しくて、感情が乱れるのが解かる。
埒もない事を言葉にしてしまいそうで。
どんな言葉にするのか、自身も解からない。
解かっているのは、その時の白哉の憂い顔だ。
――― もう少しだけ
もう少しだけ、時間を過ごせば、きっとこの大丈夫。
そう思っていると、腕の中に抱きすくめられた。
「 ・・・・・・」
耳元で甘く名を呼ばれ、胸の鼓動は速まるのに奥をぎゅっと掴まれたようにしくしくと痛む。
優しい抱擁でさえも素直に受け取れない自分がいる。
それを隠すかのように、抱きしめ返す。
自分を求めてくれるのはとても嬉しい。
いつもは疑うなど思いもしないのに、今夜だけは素直になれなくて。
たとえ躯が繋がらなくともと、験する言葉が口を吐く。
決して子を産む人形ではないと
「白哉 ・・・・ 今夜は、遅いから ・・・・・」
の言葉にも、力を緩める気配はない。
うなじへと滑る唇から逃れるように身をよじり、腕を無理やり解くと、感情を隠した瞳が見下ろしていた。
掛ける言葉が見つからなくて。
いや、言葉ならちゃんと持っている。決して問うてはならない言葉を。
疑いを微笑みに代えると、どんな表情をしているのだろう。
そんな思いをめぐらした笑顔で、もう寝るねと、媚びた。
きっとあさましい顔をしているのだろう。
隣の寝所へと逃げるように襖を閉めながら、涙が零れない悲しみをひとつ吐いた。
を呼んで何を問うというのだろう。
考えても打ち消す思考ばかりが浮かぶ時を過ごした。
夜も更けて夜回りも交代の時間を過ぎているであろう時刻にやってきた。
昼間見た涙も、間近でみるの笑顔に薄れていく。
何も問わずともは此処に居て、それは確かな真実で。
今は、その確かな事実()に、触れて、感じて、ひとつになりたいと恋焦がれる。
伝わらぬ想いが欲望と形を代えて、白哉を突き動かす。
嫉妬とは、これほど人を変えてしまうものなのだろうか?
今夜だけは受け入れて欲しいと、子が愛情を貪るように、を求める己が居る。
まるで昼間の光景を験するかの様に。
逃げようと視線を離した瞬間、力任せに引っぱられ布団へと押し倒された。
「何を・・・・・」
怯える瞳で見上げるに、ほんの少しだけ上気した頬が映る。
「夫が妻を抱くのは、当たり前であろう?」
こんなにもを求めていた。
これからの事を思うだけで、躯が熱を帯びはじめる。
強引に裾を割り体を入れる。
広げられた両足が恥ずかしいのか、薄い布一枚で晒した秘所を見られて恥ずかしいのか。
頬を真っ赤に染め涙を零しながら、腰紐へ掛けられた白哉の腕を掴んで、だめと懇願する。
構う事無く抜き取られた腰紐は傍らで丸まり、白く綺麗な胸が灯りの下に晒される。
寝着を剥ぎ取ろうとした時、体を転がしてやっと白哉の下から逃れた。
しかし、それもほんの一瞬で。
うつ伏せた耳に、シュルリと腰紐を解く音。
硬くした肩に冷たい手が置かれ、髪をかき分舌がけうなじを這い上がる。
耳をねっとりと舐め上げながら、囁く低い声。
「すぐによくなる。私なしではいられぬ程にな・・・・・・」
言葉と同時に、後ろから抱きすくめられるように掴んだ胸の先端と、秘所に這わせた指が蠢く。
すると、転がされる柔らかい先端は硬く主張し始め、挿し込まれた指が動くたび潤が増していく。
合わさった素肌から伝わる温もりは、とても温かいのに。
感情とは別に高ぶる体に、敷布を握り締めてやり過ごそうとする。
しかし、経験の少ないを溺れさせる事など白哉には容易いこと。
「いゃ・・・・・ゃっ・・・・・ぁぁ・・・・やめ・・・・て・・・・・」
「まだ、言うか? 指では、役不足のようだな・・・・」
「?!!」
既に体を隠すものなど何もなくて。
熱くて硬いモノが熱を押し付けていた腰から、両足の付け根へと降りてくる。
「いっ・・・いや・・・・お願い・・・・」
「力を抜け。このままでは、辛いぞ」
広げられた足に硬いそれがあてがわれ、蜜壷を弄っていた手が、腰を軽く支える。
は、硬く目を閉じて更に敷布を握り締めた。
「?!はっうぅぅ・・・・ぁっぁぁ・・・」
嗚咽とも喘ぎ声ともつかない啼き声が広い寝所に響いた。
ぐいぐいと押し広げられるソコは、熱く火照っている。
それなのに、己の体に異物が挿入され蹂躙される感覚が、体中を這い回る。
「熱いな・・・・・ それほどに、待ち焦がれていたか?」
閉じた目から零れる涙を舐めながら、囁かれた言葉に更に涙が溢れてくる。
全てを納めて満足そうな響き。嫌悪ではない何かが込み上げる。
「こんなに・・・・ 締付けて・・・・ 」
ゆっくりと腰を回しながら、その感触を確かめているようだ。
「・・・あぁ・・・ ふっん・・・」
乱れ始めた吐息に、腰にまわした手で茂みの中の芽を探し、くりっと転がした。
「?!ひゃっ・・・・ぁぁ・・・・はっ・・・はぁ・・・」
啼き声とともに、肉壁が雄を締付けた。
「いい声だ・・・・もっと聞かせてもらおう・・・」
囁きながらゆっくりと入り口まで抜いた楔を、最奥部まで突き上げた。
「あぁ・・・びゃく・・・・や・・・」
そのままに覆い被さると激しく突き上げた。
すぐに、潤んだソコは卑猥な水音をさせ始める。
そして、汗を流すいとまを与えず、を頂上へと昇らせた。
の息が少し収まるのを待って、抱きしめていた体を離すと、両足を高く持上げ繋がったまま転がし上向ける。
白く混沌とした意識が戻り始めた頃。
嫌が上でも、現状を認識してしまう。
再び涙が滲んできた。
「いや・・・・見ない・・・で・・・」
「こんな乱れた姿でも、美しさは変わらぬな」
すっと白く長い指が、形を変えない片丘を揉みはじめる。
「あぁ・・・いや・・・・やめ・・・・」
「どちらの口が、正直なのだ?」
蜜が途絶える事のないソコに腰をまわし始める。
「・・・ぁぁ・・・・ だめ ・・・・あふっ ・・・・」
再び乱れ始めた新妻に、口の端を歪めて端整な顔が揺れた。
切なげな縋るような瞳が、憎らしいほど可愛くて。
そんな表情(かお)をさせているのが自分だと思うと、どうしようもなく感情は乱れていく。
薄っすらと開いた唇に、貪るように吸い付いた。
すると、細い腕が温もりを求めて大きな背へ。
「・・・ 」
息を乱し頬を染める夫の姿は、のみが知ることの出来る、白哉の姿。
今はただ、己の感情に溺れよう。
感じあう温もりが全てだと、信じて。
重なりあった瞳に、優しく語りかけた。
無理やりにでも手に入れたいと望むほど求めていた。
「手加減は出来ぬようだ ・・・・・ 今夜は寝かせぬからな ・・・」
言の葉通りその夜は、白い躯に、月明りに、いくつもの紅が散った。
DVちっくな兄様
2007/5/11