欠け満つ巡れし夜半の月
添月 3
護廷に戻るルキアを恋次と浮竹に託し、京楽と白哉達はそれぞれ家路に就いた。
夜風を気遣ったのだろうか?
ふわりと羽織の裾が舞い上がり、すっぽりと中へ。
「これじゃ歩きにくいわよ」
一応、物言いはしてみたが。
聞き入れるはずもなく、腰にまわされた手に、ドキドキ鼓動が速まりだした。
まわった酔いで足元が危ないなど、思いもしない。
そんなに歩調を合わせゆっくりと歩いてくれた。
邸に戻ると、出迎えた家老が白哉に何やら耳打ちした。
無言で頷くと、そのままを抱きかかえるように自室へと。
布団に座らせて、再び立ち上がろうとした時、袖を掴んで切なげに見上げる。
驚いて見つめると、はっとしたように手を離し、頬を染めて俯いた。
「・・・・・ 」
顎をとり視線をあわせると、泣き出しそうな瞳が見つめ返す。
触れるだけのくちづけと、すぐ戻るの言葉にやっと笑顔が浮かんだ。
その笑顔に後ろ髪を引かれながら、部屋を後にした。
家老との話は、思っていた以上に時間が掛かったようだ。
部屋に戻ると、は既に夢の中。
あのまま、眠ってしまったようだ。
あまりに幸せそうな顔なので、こちらも自然と笑みが零れた。
掛布団を掛けてやり、その頬にキスを一つ。
そして、おやすみと囁き、その寝顔を暫し見つめた後、白哉も眠りについた。
翌朝、起き抜けに謝られた。
別に怒っているわけではないのに、はしょげて元気がない。
こんな事なら無理にでも起した方が良かったのかと、悔やまれる。
どうしたものかと思案に暮れ、会話もないまま出掛けの時間。
いつもなら、玄関で見送るだが、今日は門まで送りに来た。
離れがたい気持ちは同じなのだと、愛しくなる。
―――― このまま邸に留まるか?
しかし、それではが余計気に病む。
ならば少々荒療治だが、言葉にするのも悪くなかろう。
「今日は、邸から出るな」
「えっ?」
背中越しの言葉に、不思議がる。
「よく休んでおけ」
「大丈夫よ。 二日酔いとかしてないし・・・・・・?!」
戸惑うに、振り向きざまにそっと耳元で囁いた。
『 今夜は、寝かさぬからな 』
真っ赤になり固まるに、笑みが零れてしまった。
そして、門を出る時に、可愛い返事が返ってきた。
とても、小さな声だが、今の自分には十分過ぎる愛しい響き。
「・・・・・ 待ってるから ・・・」
荒療治は己も同じ。
入隊して以来はじめてという位、仕事が手につかなかったのは言うまでもない。
2006/10/28