6 悲しい想い







 薄明かりの中、白い肌にいくつもの紅が散らされる。
己の物だと主張するように、舌が指が、余すとこなく這わされた。

 官能に流されぬようにと、唇を噛み締めたのも最初だけ。



 何度昇りつめたのか解からない。
甘い低音で名を呼ばれ、飛びそうになる意識を引き戻される。

 受け止めきれない想いは、腿を伝い零れ落ちシーツにいくつもの跡を残す。


「・・  ・・・・」

 無理をさせてはと、いつもは押し留める劣情の全てを解き放つ。
その肌に、あの時の答えを告げるように。








 熱る体が、情事の余韻を克明に告げる頃。

「なぜ、泣く?・・・」

 浮かんだ涙を拭いながら、抱きしめる。
は、ただ黙って首を横に振るだけで。


「愛している・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「愛している・・・・・・・」
「・・・・・・・」

「愛している・・・・・ ・・・・・」

 何度も、何度も、答えの返らぬ静寂に囁いた。





















 

 翌朝、通されたのは何もない無機質な部屋。
まるで、時間の流れを止めたようなその部屋で、それは優しく微笑む。






 綺麗な人だと思った。





 その写真に向かって言葉は告げられた。

「新しく、妻に迎える『』だ」と。


 まるで映画の回想シーンのように、遠くで声がした。




2005/12/7

副題提供 「モモジルシ」様