3 醜い形
今夜も、真夜中の見舞いを終えて、そろそろ帰ろうとした時、耳が探し続ける低音が闇に響いた。
「・・・・行くのか?」
「?! 白哉・・・・」
月明りを背にしたの表情は判らない。
不自然な間が、互いの胸を締め付ける。
「あっ・・・と、ごめん、起こしちゃったね」
「いや、お前の所為ではない」
相変わらずの答えに、安心する。
「だめよ起きちゃ!」
「大丈夫だ。明日には、隊へ戻る」
上半身を起こした白哉を慌てて制する。しかし、本人は全く気にしない。
起き上がり、その白く綺麗な指での頬を優しく撫でた。
「少し、痩せたな・・・・」
「そんな事ないわよ。体力だけが取柄だもの、大丈夫」
瞳を閉じて手の動きを優しく微笑みながら感じている。
「もう、二度と泣かせはせぬ」
「?! 」
急に温もりを失った指先に、を見つめるがやはりその表情は見えない。
「ごめんね、余計な気遣わせちゃって」
「何を言う・・・お前が、謝る事などなにもない。
全ては、私が」
白哉の言葉を遮る。
「もしも・・・・・・ 奥方様が生きてたら、一人で悩むこともなかったのにね」
私じゃだめだねと、窓の月を見ながら呟く。
「それは、関係ない。言ったであろう、全ては、私の不徳だ」
「そうね・・・・・関係ないね。私には・・・・」
「 ・・・・・ もし、私が、妻の事を隠していた所為ならば」
伸ばされた温かいその手に、気付く余裕すらなくしたは、白哉の言葉を素直に受け止める事が出来ない。
月明りに浮かぶ横顔は、きっと醜く歪んでいるのだろう。
そんな事を思いながら、は、その醜さを言葉に変えた。
「ねえ・・・・・・・私と、奥方様、どちらを沢山アイシテル?」
白哉の傍にいる意味を、全て捨てたかった。
2005/9/18
副題提供 「モモジルシ」様