天気がいい日は気分がいい。
汚れた洗濯物をキレイにすると、薄汚れた自分までキレイになるような気がして、本当に気分がいい。
なんか最近、煩悩まみれって感じだしな〜。
溜息を噛み殺すように鼻歌なんか歌って、パンッと着物の皺を伸ばした時、歩み寄る気配に気付いた。
・・・譲、くん?
布越しに物言いたげな視線を受けて、態度を決めかねる。
正直いうと今は君に逢いたくない。
まあ黙っていても殺されるわけではないし、そのまま様子を見ていようと思いながら洗濯を続ける。
好きか嫌いかと問われれば、好きだと言うしかない。
好き。
うん・・・俺は、君のことが好きだよ。
背中を預けられる大切な人。信頼している、大切だと思っている。君が俺の対で良かったと、本気で思う。
そこで終われば良かったんだ。
朔が望美ちゃんを慕うように一途に仲間として大切だと、そこで完結できれば、こんなに苦しい心を押し隠す必要もなかったのにね。
今はもう傍に在ることすら辛い。その姿を見ることも、声を聞くことも、君の存在の全てが辛い。
お願い譲くん、早く立ち去って。
じゃないと俺は、君に酷いことをしてしまいそうだ。
手遅れになる前に。
仲間で在り続けるために。この想いが暴走を始める前に。
気配が動いた。
急激に近づく殺気のようなものに、身構える間もなく捉えられる。
「え、譲くん・・・」
噛みつくように唇を奪われた。
重なり合った場所から君の想いが流れ込んできて、混乱する。
強い欲求。
強い感情。
一途に、ひたすらに向かってくる・・・これは、恋情?
不器用に絡みついた腕に頭を抱えられて、柄にもなく胸が高鳴る。愛しいなどと言ったら、子供扱いをするなと怒るんだろうか。
君が掴めない。だけど愛しい。
腰を抱き寄せて胸を合わせると、君の鼓動がこの胸にまで響いてくる。
不器用でまっすぐで強い。
若さなどではないんだろう。きっと君は生まれた時からそんな風で、幾つになってもそのままで。
あまりの眩しさに目を細める俺を知らず、執拗に求めて続ける口づけに、理性を壊されそうになる。
「ね、譲くん・・・待って」
切れ切れに声を上げて白旗を振ると、君は仁王立ちのまま肩で息を付いた。
熱烈な口づけも楽しいけど、ね、せっかくだから甘く寄り添いたいな〜なんて思わない?
込み上げる笑いを噛み殺して肩に寄りかかる俺を、佇まいと寸分変わらぬまっすぐな声が斬りつける。
「すみません、景時さん」
ん〜、どうしてそうなるのかな。
口づけには応えたよね。それとも「俺も君を愛しているよ」なんて、言葉で伝えなければ信じられないのかな。
よかった。
やっばり君は、俺より子供みたいだよ。
込み上げる笑いを隠すこともせず、緊張する君の瞳をそっと見つめる。
「謝られちゃうと、どうしていいのか悩むよ。・・・嬉しかったって言ってもいいかな」
片恋を信じていた君の心が、色づくように幸せに変わる。
「景時、さん・・・?」
回された腕に寄り添って、君の匂いに包まれる。
暖かな、俺の太陽。
ね、譲くん・・・ずっと俺の傍にいてくれないかな。