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[友鷹]束縛

「んうっ…………友雅、殿っ」
 さしてキツク括られたわけではないが、手首を拘束する布地に動きを封じられ、全てを晒している。隠すことも抗うことも叶わぬ状況に…どこかで悦を感じている己が羞恥心を煽る。
「抵抗することを諦めたのかい?…そんな投げやりな瞳をしても、私を煽るだけと知っているくせに」
 そんなつもりはないけれど…こんな風に動きを奪われ好きに嬲られれば、退廃的な気分になるのは確かだ。
「友雅殿……楽しそうに仰いますが、こうされることが、どれほど恥ずかしいものか…ご存じないから笑えるのですよ」
 いつも好きなように動くのは貴方で。…私はただ後手に回り、はしたなく鳴くばかり。そんな状況に不満も出ないほど溺れているのだから、手に負えない。
「ふふ。そうかもしれないね。しかし鷹通、経験する機会の無かった者を責めるのは、酷と思わないかい?……そうだね。鷹通が教えてくれるというのならば、甘んじて受けるつもりだが」
「……本気で仰っているのですか」
 立場を逆に。身動きの取れない友雅殿を、この手の中に…?
「ああ、もちろん。……縛ってみたいのだろう?」
 欲を煽るように掠れた声が、心の臓を鷲掴みにする。
 ただ狼狽えるばかりの自分が腹立たしい。
「友雅殿っ。からかうと痛い目をみますよ」
「………みせてごらん」

 布地を裂く音が、この関係をも切り裂いていく。
 暴走する己を止めることは、もうしない。

 友雅殿。貴方は私の欲望を甘く見ていらっしゃいます。
 本当は……本当は貴方を柱にでも括り付けて、この私以外のどんなものをも瞳に入れぬよう、閉じこめてしまいたい程なのに。
 貴方の時間を、貴方の人生そのものを、独占して…支配して、二人で朽ちてしまいたいと思うほどに、ただ貴方に狂っていく私を貴方は知らないから、そんな風に笑っていられるのです。
「少し……キツイのではないかな」
「いいえ、これでも緩いくらいです。跡を残してでも……貴方がここから逃げ出せぬように。…これが私の本心なのですよ、友雅殿」
 可愛げのないワガママで貴方を縛ったら、愛想を尽かしてしまうだろうか。扱いづらい情人などいらぬと、捨てられてしまうのだろうか。
 不安で髪の先まで震えた私に届いたのは、楽しげな笑い声だった。
「ふふ。なかなか情熱的なことを云うね。…ならばいいだろう。好きにしてくれて構わないよ。さて。縛り上げたはいいけれど、ここからどうしようというのかな?」
「………っっ」
「これでは私から手出しはできないのでね。…当然、君が悦くしてくれるのだろう、鷹通」
 堪えていないどころではない。
 友雅殿は、こんな状況を…こんな私を、楽しんですらいらっしゃる。
「どうしたんだい。拘束したらそれで満足だなんて、そんな可愛らしいことを言うと………お仕置きしてしまいそうだよ」
 顔だけでない。全身が。視界に入る指の先まで、全て赤く染まっていくのが判る。
 貴方には勝てないと、知っていたはずなのに。
 決して勝ちたいと願っていたわけではないというのに。
「泣かなくともいいのにね…。ほらおいで。自分で沈んで腰を振ればいい……何度かしただろう?」
 妖艶な笑みに誘われるように、その膝を跨ぐ。
 肌をすり合わせると、それまでの不安が掻き消えてしまう。
 ただ、貴方が欲しくて。
「私は文字通り手も足も出ないが…。ふふ。お任せするよ、私の可愛い人」
 そう言って床に肢体を投げた友雅殿は、気持ち良さそうに背を伸ばして、うっとりと笑ったまま瞳を閉じた。
 
 
 
 
 
 
 
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絵茶で譲葉が、友雅を縛ったりするもんだから・・・つい(笑)で、出来心ですよっ。鷹通だって暴走するでしょ、あれじゃあ!!といいつつ、友雅に誘導されないと固まっちゃう鷹通が、やっぱり可愛くて大好きだっ。アハハッ。

続きを書けと言われそうだけど。これはここで終わるのが、私の趣味です。クックック
妄想で悶えてください(鬼)