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[友鷹]痴情

貴方に逢えない。
今はそれが苦しくて苦しくてたまらない。

政で忙しいだけだろうか。
貴方を懐刀として慈しんでいる天上人を浮かべて、あろうことか妬み嫉みを感じている自分は、恋の熱に気が触れた罪人なのだろうか。
あの方に抱かれているのか。それとも貴方が‥‥。
内裏の中で華やかに咲き誇る花々は、貴方を飾る装飾品でしかない。
だからその衣に移る残り香も、堪えることはできる。

しかし貴方の心は何処にあるのか。

貴方が私を求めたのは、一時の気紛れか酔狂か。
興味が失せれば、ただの花となることすら叶わぬこの身を、何故ああまでも執拗に欲したのか。
もう‥‥私は、貴方無しではいられない程というのに。

この身に宿る熱を解放する術が欲しい。
貴方に手間を取らせずに、一人で完結して静かに待つことさえ叶うのなら、憐れみなどなくとも暮らしてゆける。‥‥そこまで考えて、今 の 私 は 貴 方 の 憐 れ み な し で は 生 き ら れ ぬ の だ と悟る。

待ち続けることが苦痛なわけではないのです。
そんな私を知った貴方が、私を持て余すのではないかと‥‥ただそれだけが苦しくて、切なくて‥‥悲しい。
「あ‥‥友雅殿‥‥友雅殿‥っ」
苦しく滾る熱に手を置いて一人で煽るも、思い浮かぶのは貴方の影ばかり。
罪悪感に苛まれて、気をやることすらできずに。

貴方に逢いたい。
呆れられても蔑まれても構わない。貴方に逢いたい。

そしてどうか、このはしたない身体を‥‥罰してください。