弁慶は裏路地までやってきた。
丁度日が沈む時間で、街は燃えるように赤く染まっている。
冬の澄んだ空気でそれはますます綺麗に見えて、なんだか不吉な気さえした。

本当は弁慶は、鎌倉の街はあまり好きではなかった。
この街はなんだか息が詰まる。
九郎に怒られそうだから口にしたことはないけれど、妙な力が働いているような、そんな感覚がずっとあった。
夕日は御所の向こうへおちてゆく。
京の六波羅が燃え朽ちたように、いつかこの街も灰になってしまう日が来るのだろうか?
そんな光景を見ないために今、弁慶は戦っている筈なのに、時々、こんな風に不安に思うときだってある。


赤の向こうに、ふと思った。

A こんな気持ちを、たまには誰かに打ち明けてみたくなってしまう……でも、残念ながら相手がいないんですよね
B いや……僕はこんなところで立ち止まるわけにはいかない