そのまましばらく歩いたけれど、結局めぼしいことは何もなかった。
さすがに歩き疲れたので、弁慶は丁度いいと、仁和寺で一息いれることにした。

休みながら、弁慶は懐から白い鱗を取り出す。
こんな風に旅に出ることが望美の言う『えいぷりるふーる』なのだろうか?
よく分からないけれど、彼女の世界には随分と不思議な習慣があるようだ。
旅に出たいなど思うより先に、日頃から好きにあちこちに出向いている弁慶には、そのありがたみがよくわからなかった。
けれど、今の八葉や神子たちとあちこちへ行くのは確かに楽しい。
もしも全てが終わっても、時間の猶予が許されるならば彼らと出かけてみたいと思ったけれど……、
きっとそれも叶わないのだろう。



A 自分がそんな平穏を許されるとも思えない
B それより皆が集まることが難しいように思える