けれどどうして弁慶はここにいないのだろう?
更に弁慶がこっそりと歩いていると、景時が立ち止まって誰かと話し始めたのが見えた。弁慶はとっさに木に身を隠す。
話している相手は伝令だろう。
幸いなことに彼はこちらには気付かない。
「どうだった?」
「敵の軍は動いていない模様です」
「そうか、まだ動かないんだね。このこと九郎は?」
「九郎殿はなにやら考え事をなさっているとのことで、まだ」
「ありがとう。九郎には俺から伝えておくよ」
「はっ」
見送って、景時は呟いた。
「持久戦に持ちこんで困るのは向こうなのにな〜、どうやら弁慶の策が生きているみたいだね」
そして、嬉しそうに九郎がいると言っていた方へ歩いて行った。
自分がここにいないのは、ただ単に別隊を率いていたからだったのか。
足止めしているということは、ろくでもない情報でも流しているのだろう。
だったら……ああ、ここはきっと過去だ。覚えがある。
そう思えば全てが簡単なものにみえた。からくりは仕組みが分かってしまえば簡単だ。
……景時の陰陽術のからくりは、さっぱり分からないけれど、とにかく、
A 彼ら二人がいて自分がいないのもなんだか不思議だったから、少しほっとした
B ああ、でも九郎と景時が二人きりになったら何の話をするのかは少し見てみたい気はしたかな