弁慶は西へ向けてしばらく歩くことにした。
選んだ道は、嵐山へ続く街道。
ほんの三日前、望美たちと紅葉狩りへ赴いたときにも辿ったばかりの道だ。
紅葉の下の彼女や朔は、それに負けないくらい華やかに笑っていて、弁慶は終始それを見守って微笑んでばかりだった。
そこに絡むヒノエは少し煙たかったけれど、九郎や敦盛もゆったりと羽根を伸ばして気持ち良さそうにしていて、本当に有意義な時間だった。
中でも景時が見せてくれた陰陽術が見事だった。
夏には光の花を空に咲かせた景時は、今度は地面に散った色とりどりの葉をふわりと空へ舞いあげて、雨か雪のように降らせて見せた。
炎のようだった。
けれど、人を街を焼き尽くす汚れた火ではなく、冬の寒さを超える為に皆で体を寄せ合い手をかざすための、そんな暖かな火のようだった。


あの赤は、きっとだれもが忘れ得ぬものになるだろう。

A 景時には本当に平穏が似合うと思った
B 僕が同じ事をやってもヒノエに皮肉でも言われて終わりだろうな