「いえ、実は極秘裏に動いているんですよ」
と、にっこり笑ってごまかすと、男は
「そうでしたか。これは失礼しました」
と頭を下げて、慌てて去っていってしまった。
どうやら難は逃れたらしい。胸をなでおろした。
その間にも、少しずつ日が傾きはじめて、肌寒くなってきた。
平泉の冬よりは随分あたたかだけれど、寒いものは寒い。
弁慶はあまり寒さは好きではなかった。寒いと指先が上手く動かないからだ。
その点、平泉でも九郎は寒さをも気にせず金と雪まみれになっては泰衡に呆れられていたものだ。
思い出したら、ついくすりと笑ってしまう。
A 九郎はいつからああだったのだろう? 少し垣間見てみたい気がした
B それより今、この寒さが辛くなってきたから風の当たらない場所を探そうと思った